第15話 遠足の準備?
◇◇◇次の日◇◇◇
入学式の次の日から普通に学校がある。
優希は、クラスですごい人気だった。
かっこいい上に人付き合いもいいのだから、当然である。
俺?俺は1人寂しく教室の隅でこっそり持ってきた魔導書を使って魔力操作の練習をしていた。良いんだ。俺にはダンジョンが…。
それはさておいて優希は、部活の勧誘も凄かった。見た目が良い彼は、部活の顔になれる存在だ。これを勧誘しない手はない。それはもう凄かった。わざわざいらない俺を勧誘して優希を一緒に部活に入れようとするくらいには。
そんなこんなあったが帰りのホームルームの時間になった。藤堂先生が教壇に立つ。
「さて、クラスメイトと仲良くなれたか。今日は今度ある遠足の班を決めてもらう。自由に3〜4人で班を作ってくれ。班で公園内を回ってもらったり、昼食をつくったりしてもらうから料理できる奴がいた方が良いぞ。」
よし、俺は優希と組んで後のことはあいつに任せよう。
「優希、一緒に組もうぜ。」
「良いよ。真一は他の人に当てはあるかい?」
「いや、優希にはいないの?」
「俺の友達はすでに班組んでたよ。」
「そうか…。」
さて、どうしたものか?
悩んでいる俺らに声をかける者がいた。
「俺も組んでいいか?」
それは、克人だった。
「問題ないよ。なっ、優希。」
「よろしくね。克人。」
「よろしく。」
「よろしくな!」
これで今度の遠足の班が決まった。次は、昼食に何を作るかだ。
「さて、後は昼食に何をつくるかだね。ちなみに僕と真一は普通に料理ができるから心配しなくて良いよ。」
「おう、任せとけ。」
「俺も料理できるから問題ないぞ!」
「へぇ。克人、料理できるんだ。」
「何だ?問題あるか?」
「いや、ないよ。ただ少し意外だっただけで。人は見た目で判断できないね。ごめんね。それじゃあ、当日は2人で協力して料理しようか。」
「おう!それで良いぜ。俺の料理の腕を見せてやる!」
どうやら喧嘩にならずに済んだようだ。
お互いに助け合って料理するようだ。
となると俺はかまどの火の番かな?
「話しを戻すぞ。今度の遠足で昼食は何を作る?俺はなんでも良いよ。」
「まぁ、キャンプ場の調理場だからそこまで凝った料理はできないと思うけどね。」
「それなら、カレーが良いんじゃないか。事前に入れる野菜も切って持っていけるし、後は煮るだけにすれば簡単だからな。」
「それは良いな。じゃあカレーで決定な!」
「「問題ない(よ)。」」
こうして遠足で作る料理は、カレーに決まった。
外で作る料理の定番である。
ミスをおきにくく味が安定しやすい良い選択だ。
「よし、なら仲を深める目的もかねて一緒に買い出し行こうぜ。」
「買い出しついでに遊ぶんだろう?」
「俺はそれでいいぜ!」
「今週の土曜日、駅前集合な。」
「「OK!」」
◇◇◇今週の土曜日◇◇◇
俺は、人が行き交う駅前で一人ボツンとみんなが来るのを待っていた。しばらく待っていると、2人からRINEが届いた。どうやら次に駅に到着する電車に乗っているようだ。
「次の電車に乗ってるんだな。」
別に2人が遅刻したわけではない。ただ真一の行動が早過ぎるだけだ。田舎あるあるだが、バスと電車の兼ね合いで2人より早く駅に着いてしまうのだ。
2人の乗る電車が駅に入ってきた。定刻通りの到着である。駅の中からワラワラと人が出てくる。しかし、その中に優希と克人の2人の姿を見つけることができなかった。
「あれ?待ち合わせ場所、間違えたかな?」
携帯を確認しようとすると、背後から声をかけられた。
「いや、あってるよ。」
後ろを振り向くとそこには、優希がいた。後ろには、苦笑いする克人が申し訳なさそうにしている。
「いるなら、すぐに声をかけてくれよ。」
「いやいや、どうせなら遊びたいと思ってね。」
「一応、俺は止めたからな。文句は優希に頼むぜ、真一。」
優希が俺を驚かそうと静かに背後に回り込んだようだ。それを止めようとした克人は、優希に言いくるめられたようだ。
だが、俺たち3人は無事に合流することができた。
「さて、これからどうするの?真一には何か考えがあるのかい?」
「まずはゲーセンでも行って遊ぼうか。」
「俺はそれでいいぜ。買い出しは帰る直前の方がいいだろうしな。」
俺がゲーセンに行くことを提案すると、克人はそれで問題ないようだ。荷物が重くなるから、遠足の買い出しは彼の言うように最後の方がいいだろう。
こうして俺たちは駅からバスに乗って近くにあるゲーセンがある商業施設に向かった。スーパーもあるから帰りに買い出しもできて便利だろう。
「ここに来るのも久しぶりだな。」
「そうだね。僕も真一と最後に来たのは、去年の春以来かな。」
「俺はそもそもこのゲーセン初めてきたな。」
「マジで!?」
どうやら克人は、今までこのゲーセンに来たことがないらしい。
「じゃあ、僕たちがいろいろ案内するよ。」
「頼むぜ。」
「頼まれたぜ。」
こうして俺たちは、ゲームセンターでお昼過ぎまで遊んだ。優希はUFOキャッチャーが得意で、俺はメダルゲームが得意だ。そして意外なことに克人は音ゲーが得意なようだった。
「そろそろ腹も減ってきたし、フードコートで何か食べようか。」
「丁度良い時間だな。」
「腹も減ってるから早く行こうぜ。」
腹が減ってきたので、俺たちは昼食を食べることにした。克人はかなり腹が減っているのか、俺たちを急かしてきた。
「俺はラーメン食べよう。みんなは何食う?」
「僕はうどんを食べようかな。」
「俺は、いっぱい食べたいしハンバーガーにしようかな。」
そういうとそれぞれ昼食を買いに行った。俺は味噌ラーメンを買って戻ってきた。すると、2人も戻ってきていた。
「おっ!戻ってきたのか。真一は何頼んだんだ?」
「俺は味噌ラーメン。おまえは?」
「俺はハンバーガーを10個買ってきたぜ。」
流石に10個は多過ぎないか。でも何故だろう、克人が持つとハンバーガーが小さく感じられる。
「僕は、海老天うどんだね。」
「よし、冷めても悪い。早く食おうぜ!」
「「「いただきます。」」」
◇◇◇ ◇◇◇
「「「ごちそうさまでした。」」」
「ふう。美味しかった。」
「うん、そうだね。」
「俺はもう少し食べれたな。」
「マジかよ。」
あれだけ食べたのに克人はまだ食べ足りないようだ。どんだけ体に入るんだよ。
「さて、次は買い出しするかい?」
「いや、どうせなら映画観ないか?」
「いいぜ!映画館で映画観るなんて久しぶりだな。」
「じゃあ、行こうか。」
俺たちが映画館に向かうと休日のため、そこそこ人はいたが、想像していたほどではなかった。だからなのか、直前に席を買ったが割と良い席が空いていた。
「休日の割に人が少ないな。」
「たぶん。この間の管理者のせいだと思うよ。ダンジョンから魔物を出すって言っていたから、みんな警戒して出てこないんだ。」
「そうだな。ゲーセンのときも感じてたけど、映画館はもっと人が少ないな。」
「ところで、克人ってダンジョンのことどう思っているの?」
なんとなくだが、聞いてみたくなった。克人がダンジョンをどう思っているのか。今なら違和感なく聞くことができる。普段の会話だとなかなか聞けないため、この瞬間に尋ねてみた。
「ダンジョンか?俺はみんなを守れる人になりたいと思っている。もし、ダンジョンでその力が手に入るなら入りたいと考えているよ。」
「へぇー。」
克人は、見た目通りのいい奴なんだな。
「そういう、真一はどうなんだ?」
「俺?俺は、ダンジョンの謎を知りたい。自分の力でそれを成し遂げてみせる。」
「おっ、おう。そうか。ところで優希は?」
「僕はダンジョンから魔物が出てくるのが確定事項なら大切なものを守るために強くなりたいかな。克人と少し似ているかもね。」
「へぇー。そうなんだな。」
そこでダンジョンの話しを終えると俺たちは映画を見て、当初の目的であった買い出しを済ませて帰宅した。
帰りの電車でのこと、克人が家に近い駅で降りて俺と優希の2人だけの状況になった。
「どう思う?」
「どうってなんだい?」
「克人のことだよ。うちのダンジョンに誘うか?」
短い付き合いではあるが、俺は克人という人間を気に入っていた。
「メンバーにするのは良いと思うよ。でもそれは、ダンジョンが一般の人に解放されてからかな。あまり人に広める話でもないし。」
優希は、かなり慎重に考えているようだ。でも優希がそういうくらいだ。まだ、早いのだろう。でも、俺は彼が俺たちの仲間になる日がそう遠くないのではないかと感じていた。
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