第14話 高校生になった

 真新しい制服に身を包み俺は1人桜が舞う高校の前の道を歩いていた。きれいな青空に白い桜の花びらがよく映える。ふと辺りを見渡すと、自分と同じ新入生だろうか少し緊張した様子で歩いている。


 今日、俺はこの白雪高等学校に入学した。

 校門の前に来たそのとき、急に肩を叩かれた。前にもこんなことあったな。仕方なく、後ろを振り向く。


 「おはよう、真一。」


 そこには、予想通り優希がいた。


 「おはよう、優希。」


 「今日から高校生だね。」


 「そうだな。同じクラスだしよろしくな。そう言えば優希、親はどうした?」


 「あぁ。両親ならこの間のあれのせいで予定が入って来られないそうだよ。かなり残念がってた。」


 彼の両親は、優秀な研究者である。そのため、この間の管理者の件以来、何かと忙しくしているのだそうだ。

 そんなことを話しながら2人は仲良く校門をくぐり、校舎に入る。


 新入生はここで親とは一旦別れ、それぞれ自分の教室へと向かう。親はこのまま体育館に行き待機する。

 教室に入るとすでに多くのクラスメイトが待機しており、これから始まる高校生活に希望と不安を抱きながら座っていた。


 俺と優希も席に着く。上杉と直江であいうえお順だとかなり距離がある。

 早速、優希は前後の子に話しかけていたりしている。あいつのコミュ力が羨ましい。


 俺も勇気を出して話しかけようとしたが、時間になりできなかった。まぁ、別に良いだろう。後で時間はあるだろうし、仕方ない。そう思うことにした。


 時間になり、教師が入ってきた。

 真一たちの担任は、サングラスが似合いそうな鋭い眼光のごついおじさんだった。なんだか、強そうな人だな。プロレスにいそうな感じだ。担当教科はおそらく体育だな。


 その教師がごく簡単な自己紹介をしてから、入学式の段取りを説明し始める。どうやら、藤堂先生と呼んだら良いらしい。名前まで厳つい。


 そうして、場所は体育館に移り、保護者の見守る中、入学式が始まった。入学式の校長の挨拶には、ダンジョンのことが含まれていた。


 特に、ダンジョンには近づかないように十分に気をつけることと注意された。日常生活でそうそうダンジョンと関わることはないとは思うが、念のために話しているのだろう。俺のような例外がいないとは限らないし。

 その話しの最中、一部の男子生徒はダンジョンに興味があるのかソワソワしているようだった。



 入学式が終わると、また教室に移動した。

 入学式当日ということもあり、みんなまだ仲良くないためか少しぎこちなく静かに教室へ向かった。


 保護者も教室内に入るため、先程より教室がかなり狭いように感じた。

 まずは再度、藤堂先生が祝辞と激励の言葉を述べ、自身の自己紹介を改めてした。注目の担当教科は国語だそうだ。意外である。残念ながら体育ではなかった。


 そうして、今度は新入生の自己紹介が始まった。

 出席番号1番から順番に、席を立って自己紹介する。

 俺はそれに耳を傾け、何を話すか決めてないことに気がついた。まぁ、適当で良いか。そんなことを考えているとすぐに俺の番が来た。


 「上杉真一です。現在は自分を鍛えることに嵌はまっています。よろしくお願いします。」


 そういうと少し空気が固まったような気がしたが、すぐに惜しみない拍手が送られた。別に嘘は言っていない。ダンジョンで自分を鍛えることに、嵌っているわけだし。


 こうして、自己紹介は進んで行き優希の番になった。


 「直江優希です。最近、本を読むことに嵌っています。みなさん、よろしくお願いします。」


 拍手をする俺を見て、優希はさっきの自己紹介は何だと言わんばかりの呆れた顔をした。あいつ、どうせお前だって読んでる本は魔導書なんだろ。そんなことを考えていたが、どんどん自己紹介は続いていく。


 順番に自己紹介がされていくとある男の番になった。その男は、とても存在感がある少し怖い顔をしており、体格はガッチリとした人だった。教師の藤堂がプロレスなら、この男は軍所属の軍人のような人だった。威圧感があるため、目を合わせたら思わず固まってしまいそうだ。


 「源田克人です。この学園の生活でたくさん思い出を作りたいと考えています。よろしくお願いします。」


 彼の纏う雰囲気に一瞬呑まれかけたが、俺はすぐさま復帰して拍手を送った。他の人も俺の拍手の音で正気に戻り、拍手をしたことで無反応という悲しい事故を引き起こさなく自己紹介は続いた。


 そんなハプニングもあったがその後はつつがなく自己紹介が終わり、最後にプリントを配られてその日は終わった。


 ホームルームが終わり、自由になるとクラスメイトは一斉にグループを作り始めた。陽キャと隠キャにきれいに分かれているようだった。

 俺と優希は、少し離れてそれを見ていた。


 「やっぱり、こういうの俺は苦手だな。」


 「そんなんだから僕意外にまともな友達がいないんだよ。」


 優希が呆れたように言ってくるが、苦手なものは仕方がない。それに俺にはダンジョンがあるから別に良いんだと強がってみる。なんだか虚しくなってきた。


 すると1人の男が俺たちに話しかけてきた。


 「やぁ!少し時間もらえるか?」


 どうやらその男は、先程自己紹介をしていた源田克人のようだった。近くで話すと分かるが、威圧感をすごく感じる。俺が173、優希が169、に対して彼は182はある。彼はすごく身長が高い。

 しかし、不思議と彼に対して危ないという印象を抱かなかった。


 「あぁ、大丈夫だよ。なぁ、優希。」


 「うん。問題ないよ。それでどうしたのかな。」


 「念のためもう一度、自己紹介するな。俺の名前は源田克人だ。ところで、さっきはありがとうな。」


 「俺は上杉真一だ。ところでさっきの?」


 「いやな。私が自己紹介したときにみんなが固まってしまっただろう。そのときに、上杉が真っ先に拍手をしてくれたからな事故らなくて済んだと思ってお礼を言いに来たんだよ。」


 「いいのにそんなこと、気にしなくて。それに俺のことは真一で良いよ。こいつも優希って呼んでくれ。」


 「別に良いけど、勝手に決めないでくれるかな?僕の名前は直江優希だ。よろしくね。源田さん。」


 「俺の方こそ、よろしくな。それと俺のことは克人で構わん。」


 こうして俺たちは、高校で初めての友達となる克人と会った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る