第12話 2人のステータス

 こうして、俺と優希はお互いにステータスを見せ合った。



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個体名  上杉 真一

種族   人

年齢   15歳

性別   男

職業   学生

レベル  2

状態   正常

HP   110/110  10up

MP    45/45    5up


スキル  適応 Lv1  1 up

     槍術 Lv1  1 up

     体術

     馬術


称号   先駆者


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 何か変わってる⁉︎そうか、レベルが上がってるんだ。

 それに前に見たときは、スキルの横にレベルなんかなかったはずだ。何で?




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個体名  直江 優希

種族   人

年齢   15歳

性別   男

職業   学生

レベル  1

状態   正常

HP   80/80

MP   60/60


スキル  思考加速

     賢者の素質


称号   原初の魔法使い


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 何だこれ?俺より凄そうなスキル持ってるんだけど⁉︎

 物語の主人公みたいなスキルだな。

 それにHPが低いかわりにMPが高いな。

 俺の眠気はすっかり飛んでいた。


 「へぇ。お互い職業は学生なんだね。」


 「そんなことより気になることがあるだろ!」


 「真一、夜遅いんだから静かにして!」


 「わるい。でも、何だよ。その称号?」


 「どうやら回復魔法を使用したことで手に入れたみたいだね。」


 「称号に集中して内容を知ろうとしてみて。」


 俺の指示に従い優希が内容を確認する。


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称号

【原初の魔法使い】


 ダンジョンで初めて魔法を使用した者に与えられる


 効果として称号所有者にスキル「賢者の素質」が与えられる


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 この内容に優希は首を傾げた。


 「僕より先に山田さんの方が先に魔法使ってるよね?何で僕にこの称号が。」


 確かにそうだ。ダンジョンで初めて魔法を使用した者なら俺の治療をした山田さんの方が先だ。それでも、優希がこの称号を手に入れたと言うことは?


 「この称号は、この世界の人だけが対象になっている可能性があるね。」


 「だから、山田さんではなく優希に称号が与えられたってこと?」


 「おそらくね。まぁ、詳しいことは明日相談してみよう。」


 「そうだな。」


 気になるが今日はもう遅い。すでにじいちゃんも寝て、この家で起きているのは俺たちだけであった。今日のところは寝て、明日の朝聞けば良いだろう。


 2人は話しをやめて、夢の世界へ旅立つのだった。




---次の日の朝-------


 真一は、いつもの時間に目が覚めた。隣の布団には優希が気持ち良さそうに寝ていた。俺は優希を起こさないように着替えをすませると玄関に向かう。


 「僕をおいてどこに行くんだい?」


 振り返るとそこには、着替えをすませて優希が立っていた。


 「いや、朝のランニングに行こうと。」


 「なら、僕も一緒に行くよ。問題ないだろう?」


 それを俺は了承し2人でランニングに出かけた。

 いつものコースを走る。


 「そういえば、優希って親に何て言ってうちに来たの?」


 「受験でなまった体を君のおじいさんに鍛えてもらうって言ってきたよ。母さんもすっかり信じ込んでる。」


 「そうか。」


 まぁ、いつか本当のことを話さないといけない日がくるんだろうな。でもそれは今じゃない。まだ、先のことだ。


 「ところで、優希は高校で何の部活に入るか決めた?」


 「いや、まだだよ。それよりも、君は部活よりダンジョンだろう?なら、僕もチームメイトとしてそれに付き合うよ。だから、部活には入らないんじゃないかな。」


 確かに俺は部活に所属するつもりはない。ダンジョンに行ける時間が減るからな。


 「それでいいのか?」


 「君が1人でダンジョンに入るのは不安だし、それに今は魔法に興味があるんだよね。だから気にしないで。」


 「そんなことより、高校生なったら時間がなくなるから、今のうちにダンジョンに入っておかないとね。」


 「そうだな。時間がある今のうちに強くならないと。」


 「でも家の近くにダンジョンがあるからって僕をおいて1人で入らないでよ。」


 「うっ、うん。」


 本当は、1人でダンジョンに入ろうと思っていたのに先手をうたれた。


 「高校に入学するまでは、僕も今日はすぐに帰るけど、明日から毎日ここに来てダンジョンに潜るからさ。」


 「分かったよ。」


 俺はしぶしぶだが了承した。


 その後、何事もなくランニングは終わった。

 家に着くとじいちゃんがすでに朝食を用意して俺たちを待っていた。


 「おはよう、2人ともランニングに行ってきたようじゃの。」


 「「おはよう(ございます)。」」


 そのまま、テーブルにつき3人で朝食を食べる。

 俺たちは昨日のステータスを見たときに感じた称号の謎について聞いた。


 「ふむ、おそらくはお主らの想像通りでこの世界の者で初めて魔法を使用した人ということじゃと思うておる。まぁ、何か不都合がある訳ではないし、喜んでおきなさい。」


 優希は少し納得していないようだが、じいちゃんの言う通り問題ないなら良いだろう。俺の適応のように悪い方に作用するわけではないのだから。


 「ところで優希くん。帰る支度はできたかいの?」


 「はい、昨日のうちにしておきました。」


 「そうかい。偉いのぉ。」


 「この後、山田さんのところに顔を出して帰る予定です。」


 「そうかい。気をつけて帰るんだよ。」


 「はい。ありがとうございました。」


 そして、俺と帰り支度をした優希は隣の山田さん宅を訪れた。玄関のチャイムを鳴らす。しばらくすると奥から山田さんがでてきた。


 「2人とも来たね。渡すものがあるんだ。優希君には、これを使って毎日魔力操作の練習をしてもらう。」


 優希の手には、魔法陣のようなものが描かれた本があった。


 「何ですかこれ?」


 「それはね。魔導書と言って魔法の発動を補助するものだよ。今、君が持っているのは練習用の魔導書でね。子どもに魔力操作を教えるときに使うものなんだ。」


 「覚えていると思うけど、人はダンジョンの外では魔力が回復しない。厳密にはダンジョンができたおかげで少しずつしているけど、MP10回復するのに何日もかかるからね。ほぼ、回復しないのは変わらないね。」


 「だから、この魔導書で体内で魔力を操作して練習してもらうよ。他の魔法と違って魔力操作なら、魔力をほとんど消費しないからね。地上でやっても問題ないだろう。」


 「他の属性魔法や回復魔法については後日、時間をかけてやっていこう。」


 「分かりました。でも。どうやって使うんですか?」


 「それは簡単だよ。手に持って魔力を流すだけだ。そうすると魔力が本に流れて、そのまま魔力が帰ってくるんだ。これを繰り返して体の中の魔力の通りを良くするんだ。」


 「毎日練習します。」


 いいなぁ。優希は魔法が使えて、俺にも使えたらなぁ。そんなことを考えていると山田さんが声をかけてきた。


 「真一君にも後でできたら渡すからね。」


 「俺ももらえるんですか?でも俺は魔法が使えるかわかんないですよ。」


 「大丈夫だよ。魔法は感情に作用されるものだと考えられているよ。感情に昨日の優希くんを思い出してもらうと分かると思うけど、信じることが大切なんだよ。」


 「確かに僕は回復魔法を使えると念じてやりましたけど、本当に出来るとは思ってもいませんでした。」


 「なら、俺にも魔法を使える可能性があるわけですね。」


 「発動するだけならね。戦闘に使えるとは限らないけど。」


 そんなことはどうでも良い。別に戦闘で使えなくても、魔法さえ使えるなら真一はそれで良かった。


 「よっしゃー!」


 「真一、おめでとう。」


 「おう、あ互いに頑張ろうな!」


 俺は優希に拳を突き出す。優希も俺に合わせて拳をつきだし、軽くぶつけた。


 「ところで優希君、帰りのバスの時間は大丈夫かい。」


 「あっ。それでは、バスの時間もあるしそろそろ失礼します。お世話になりました。」 


 外に出て優希をバス停まで送る。するとタイミングよくバスがやってきた。


 「それじゃ、また明日。真一、今回はいろいろありがとう。」


 「気にするなよ。明日もよろしくな!」


 優希を乗せたバスが走り出す。

 こうして、短いようで長く感じた俺たちの初ダンジョン探索は終わった。


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