第22話 もっと発展させよう

「い、いや、ガギル。それは…」

「実は私、数減らしで村から追い出されたんです」


 俺がその話を濁そうとすると、サーナが話し出す。


『此奴の系統は攻撃系だ。此奴の力で如何様にも狩りが出来ただろうに。馬鹿な奴らだ』


 ジャルデが呟いている。

 サーナの魔法の系統って事か? そんなのも分かるのか。


 あ、いや、今はそれよりもだ。


 俺はジャルデの呟きを頭の片隅に入れながら、サーナの話を聞く。


「私の村の領主が最近税金を上げ始めたのです。その所為で村での食糧がドンドン減って…」


 なるほど…金がなければ何も出来ない。生きる事も難しくなってくる。自分達が生きる為に家族を捨てるか…。


 人間の中ではよく聞く話だ…それと同時にやっぱり聞かなければよかった話でもある。


「俺なら森の中にでも入って狩りをする事で食べ物を、それ以外の時間を研究に当てて、特産品を作る」

「ガギル、皆んながそんな簡単に特産品を作る事なんて普通出来ないぞ」


 それはガギルだからこそ出来る芸当だろ。


「なら、どうするのかしら? サーナは此処に居るって事?」


 ルイエが話す。


「……私は死ぬつもりでした。だから生き物が存在しないと言われるアルベック山脈に来たんです。どうするって言われても…」


 サーナは肩を落とす。


 死ぬつもりだったのか。なら分からなくもないか…此処に来たのも。人里離れた此処で…誰にも気付かれない様に簡単に死を迎える事が出来る。


 俺達と理由は違いながらも、此処に来た目的は同じか。


「なら此処で過ごせば?」

「それ良いー!!」

「まぁ…俺は構わないが」


 そんな時ルイエが確然と言う。エンペルとガギルがそれに同意する。


「い、良いんですか?」


 サーナが俺の方を見て問う。


 ハッキリ言えば俺に聞かないで貰いたい。


 だが、サーナが居れば何が変わる?

 数減らしで村から追い出された少女、村に帰る事もない、俺達が居なければ此処から出る事もない…裏切りは…サーナのこの表情的にはない様にも見える。


 別に問題ない。それどころか…侵入者が増えるからDPの増加量も増える。良い事だな。


「あぁ、大歓迎だ」

「あ、ありがとうございます!」


 サーナが礼をしてる所、俺はなるべく優しく笑顔を浮かべて言った。




 翌日。


 ジャルデとサーナを迎え2日が経った。1日の増加量が31 Pから51 Pに上がり、食糧などの分を引いてDPは全部で92 Pになり、完全にサーナの体力は戻って来ている。


 そして、そんなサーナとエンペルは、共に洞窟外の結界内にて、地面を掘っていた。


「エンペル、サーナ、それ何してるんだ?」


 俺が聞くと、エンペルが振り返り元気に応える。


「種を植えてるのー!」


 そう言って見せてくれたのは、アレップルとバナナナの種だった。


 恐らく前食べた物の種だろうが、まだ持っていたのか。


「これでアノムさんに迷惑を掛けないで済みます!」


 サーナが嬉しそうに笑顔で両拳を胸の前で握りしめる。


「でもこんな吹雪じゃ育たなくないか?」


 結界内は天気の影響を受けない。温度は適温を保っている。


 しかし、この凄まじい吹雪はほぼ太陽の光を通さない。


 ずっととは言わないが、あまりにも太陽の光が少な過ぎる。


「えー? 何でー?」

「私毎日お水やります!」


 それ以外にもある。


「植物が育つ為には水、空気、そして日光が必要なんだ。こんな猛吹雪の日光が当たらない土地では育ちはしないし、水だけやっても難しいだろう。土は微生物なる小さな生物が居ないと植物が育たないとも言う」

「う〜ん?」

「えっと…どういう?」


 これ以上の説明は出来ないな…。


「まぁ、今では難しいって事だ。それよりも今から洞窟で快適に過ごせる様に暖房を作るつもりなんだが?」

「えー! 洞窟の中1人で居てもあたたかいー?」

「あぁ。これで十分になる筈だ」


 俺はボードを操作する。

 因みにサーナは「だ、暖房を作る? 快適に過ごせる?」っと疑問を持っている様だ。今まで食糧しか出してこなかったからな。しかもダンジョンの事についてもまだ話してないし。


 俺は暖房という項目に触れる。


【暖房(小)70 Pを設置しますか?】


「あぁ」


 ボンッという音が鳴り、洞窟内が暖かくなったのか、ルイエの眠っている表情が些か安らかになった様だった。


 それと同時にーー


【人が過ごせる環境が整いました。位階が上がります。報酬に1000 P付与、召喚陣を設置します】


「ほ?」

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