第4話 前世との違い、それは趣味


 俺の名前は古城凛。

 俺は二月ほど前に餅を喉に詰まらせて死に、小学校四年生の時の三月にタイムリープもとい逆行転生してきた。

 おまけに転生特典のようなものももらっての転生だった為、俺はこの世界では前世では出来なかった生き方をするため毎日を精一杯生きている。

 そんな俺が前世とどれくらい変わったのか、改めて振り返ってみようと思う。


 まず、朝起きる時間。

 小学生の頃は、顔も洗わず歯磨きも三十秒くらいで終わらせ髪型に至っては寝癖のまま、おまけに朝食なんて取ることもなく、学校に遅れないギリギリまで二度寝三度寝を繰り返して親に車で送ってもらうというクソガキであった。


 しかし、今世ではそんな生き方を改めた。

 まずは朝六時に起床。当然ニ度寝とかはせずに、睡眠時間は八時間きっちりととっている。朝起きてすぐの起き抜けに一発シコって射精強化にあやかり、顔洗いと歯磨きを十分な時間をとって行い、寝癖を軽く直して三十分のランニングを行う。その後ストレッチと柔軟をして体のケアをきっちりした後、シャワーに入って汗を流して朝食を済ませ、朝に三十分だけ勉強をして歩いて学校に向かう。

 これだけでも俺の変わりようが伺えるだろうが、まだまだ俺の日常は変化している。


 前世では登校後に即授業が始まったのだが、今世ではついてもそれなりに授業までに時間柄残っているので、クラスメイトとの交流に時間を割く。最近の話し相手は一番タイプの女子である黒髪ロング美少女の水川優菜ちゃん。将来はスタイルが良い美女に成長する逸材である。今ばまだちんちくりんだけど、中学生になればその片鱗はすぐに表れてくるほどの逸材である。

 前世では挨拶程度の会話しかしなかったが、今世では積極的にコミュニケーションを取り、この一月でクラスの中でもかなり仲の良い友人関係にまで関係を深めた。

 流石に小学生なので恋愛にはまだまだ発展しないだろうが、いつか落としてみせる。前世で培った恋愛シミュレーションゲームの腕の見せ所ってやつだ。

 目指せハーレムの第一歩として必ず彼女を攻略する。これが今の恋愛面での俺目標だ。


 恋愛面というか、人間関係の変わり様はこのくらい。


 お次は授業態度や普段の行動だな。



 前世の小学生の頃は、授業中は喧しく、内容も大して聞かず、当てられてもたまに正確な答えを言えるくらいでよく走り回って先生に注意されている子供っぽい子どもだった。


 しかし今世では小学生女子というのは同年代よりも大人に魅力を感じやすいという俺調べの情報の元行動を一新。普段の授業態度は至って真面目で大人しく、だが時たま先生に当てられた時には正確な答えを出せる様なクール系優等生を演じている。

 五年生に進級してからは教室内や廊下を走り回ったりもせず、読書を嗜む大人っぽさを徹底して演出中だ。


 そのおかげで水川優菜ちゃんからは、『凛君って大人っぽくていい感じだよね』と言われているとか言われていないとか…‥そんな噂は聞いたことはないが、言われていたら良いなと思っている。



 次は放課後。


 放課後は前世ならば仲の良かった男友達と遊びまくって夕方になったら家に帰るというのが毎日だった。当然習い事であるバスケットボールの練習がない時だけだったが、それでも今の俺からすれば遊びすぎだと思う。


 そんな前世とは打って変わって今世では放課後になるとほとんどすぐに家に帰ることにしている。何故なら俺は忙しいからだ。

 帰って早々に宿題を片付けると、予習と復習に一時間ほどかける。小学生の内容とはいえ、十年以上前に習ったことなので完璧に覚えているとはいえない。だからこそ、一から基礎を学び直したり、先んじて授業内容を学習しておくのだ。頭のいいやつは中学の終盤から高校にかけてはモテまくるからな。

 幸いにも俺は大人になった経験があるため、今のところ自己学習時にわからなくて困るなどの事態には陥っていないので順調に学力を強化できている。


 家での勉強が終わると、トレーニングの時間だ。

 腕立て十回を五セット。腹筋、背筋、スクワット二十回を五セット。ランニング2キロを十分程度で走るのを三セット。百メートル全力ダッシュを十セット

 これらのメニューをバスケットボールの練習が休みの日が週四日ある中で、二日間行なっている。

 残りの休みの日は学校が休みの日を完全な定休日として、学校がある日の方を市民プールでの水泳に当てている。といっても習い出したわけではなく、個人的に泳いでいるだけだ。

 放課後の個人的なトレーニングはこんなところだな。

 これだけ忙しい日々を送っていると前世のように友達と遊ぶ時間なんてほとんどないが、それでも充実した毎日を送っていると自分では感じている。

 友達との交流なんて学校中に補って仕舞えば事足りるし、まだお付き合いしてデートなんてする年齢でもないので、学校で会話するだけでも女の子と仲良くなれるのだけで十分満足できる。



 チート特典があろうと、モテるためにはある程度の努力は必須。

 だからこそ俺は早いうちから自分を鍛えて、将来モテ街道を歩むための準備をしているのだ。



 ああ、後一つ大事なことを忘れていた。


 俺が今世でもっとも精を出していること。



 それは自慰行為。前世で初めてそれを覚えたのは中一の半ばごろだったと記憶している。しかし今世では小四の終わりから。

 そして回数なんて一度やれば満足していた。

 しかし今世では義務的に毎日三回。そして食生活や普段の生活リズムを一変させて二月が経った今では、脅威の毎日五回。シコシコしている。

 毎日それだけシコシコしているためか、俺の右手は今では左よりも筋力がついてしまった。そのため左手だけ余分にダンベルトレーニングをして均等に筋肉がつくように無駄な努力をするはめになっていたりする。


 それでも俺はシコるのをやめない。


 何故ならようやく射精強化の効果を実感してきたところだからだ。


 というのも、身体能力や学力こそ普段から努力しているためそれがどの程度強化されているのかはわからないのだが、容姿が以前とはなんだか違う。

 具体的にはちょっと前より自分がカッコよくなっているのだ。いや、ナルシストに目覚めたというわけではなく、割とガチで顔つきが変わっている。

 顎がシュッとして顔自体がちょっと小さくなっている。とにかく自分でもわかるくらい容姿が徐々に整ってきているというわけだ。


 それを実感してからはますますシコるのをやめられなくなった。

 もはや依存しているといっても良い。シコシコ依存症にかかったのだ、俺は。


 俺は変わった。


 前世の今頃の趣味は、カードゲームやテレビゲームや漫画を読むことだった。



 でも今世の俺は、そんな児戯に熱中していない。


 俺が今趣味を聞かれれば、こう答えるだろう。



「俺の趣味は自慰行為さ」(キリッ)



 俺はキメ顔でそう言った。



 それから数秒して、家に誰もいなかったことを心から安心した。

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