第19話 犯人発見!!



「と、言うわけなんだ。ギルドマスターの権限を使って、なんとか犯人を見つけ出してくれないだろうか?」


 1000万リースをなくした俺は、何度も宿屋の中をしらみ潰しに探したけど結局どこにもなかった。なので最終手段として、冒険者ギルドに訪れた。


 俺って結構、頭回るな。


「そ……」


「そ?」


「そんなことで俺の大事な時間を奪われてたまるかぁああああ!!」


 ギルドマスターは、急に椅子から立ち上がりながら声高らかにそう叫んできた。


 うわ。ビックした。

 いきなりどうしたんだよ。というか、なんか顔色悪い気がするんだけど俺の気の所為かな?


「ギルドマスター! 俺と君は一緒に迷宮管理委員会からの窮地を脱した仲じゃないか!! まさか、見捨てるなんかいわないよな?」


「いいや、見捨てる」


 ギルドマスターはストンと、何もなかったかのように椅子に座りながら言ってきた。


「な……」


 なんで? どうして? どうして、俺が1000万リースという大金ををなくしたというのに見捨てるのさ!! この人がこんなにも冷たい人だとは思ってなかったよ!!


「ていうか見捨てるか見捨てないか以前に、俺は今その迷宮管理委員会への対応で忙しいんだよ!」


 迷宮管理委員会への対応……?

 それってまさか、俺が勝手にランク特定不可能迷宮に行ったあげく崩壊までもさせちゃったからなのか?


 はっ! だからどこか顔色が悪くなってるのか。それは悪いことをしちゃったな。


「……すまない」 


「そうだな。だから邪魔だし、わかったら早く出ていってくれ」


 俺はその言葉を聞いて外で待っているキャシーとミラのもとに戻っていった。



  *



「ロンベルト様! どうでした?」


 ミラは確実にギルドマスターの助けがあるんだろうと、目をキラキラさせながら聞いてきた。


 うぅ〜ん。どう言えばいいんだろう。もし、正直に言ったら俺の悪行がバレてしまう……。


「なんか忙しいらしくて、手が届かないらしい」


「な!? ロンベルトさんの頼みを忙しいというだけで断るなんて。こうなったら私が一発、力を入れないと……」


 キャシーはそう言って、腕を回しながら冒険者ギルドの中に入ろうとした。


「いや、大丈夫大丈夫。ギルドマスターくんは力になろうとしてたから」


 うんうん。力ずくで説得するのはやめようね。

 俺の冒険者としての品が損なわれちゃうから。


「ロンベルトさんが大丈夫というなら……」


 キャシーはそう言って肩から力がぬけ、しょんぼりしてしまった。


 まぁ、気にかけていても仕方ないよな。

 冒険者ギルドは手伝ってくれなさそうだしどうやって、俺の1000万リースを探すかだが……。


「そうだ!」


 俺は名案を思いついた。

 それも、すぐ見つかりそうな名案を。


「ミラ。このバックと同じ臭いのものがあるのか探してくれないか?」


 もともと、1000万リースはバックの中にあった。

 であるならば、俺の体を嗅いだだけで女性の匂いを嗅ぎ取ったミラならなんとか見つけることができるだろう。という安直な考え。


「わかったのです! クンクンクン……」


 ミラはあんまり理解できていないのか、首を傾げたけど喜んでバックの中に顔を突っ込んで鼻を鳴らした。


 うん。こんな姿見ると、犬か何かと勘違いしそうだ。良くない良くない。獣人は犬と間違われると、ものすごく怒るらしいからな。何があっても口には出さないぞ。


「ありました!」


 ミラはバックの中から顔を出した瞬間そういった。

 さすが、獣人。

 人間の1000倍、嗅覚が鋭いというだけある。


「じゃあ案内してもらえるか?」


「はいっ! われはギルドマスターさんと違って、ロンベルト様の頼みをなんでも引き受けるのです!」


「私もロンベルトさんの頼みならなんでもききますよ?」


 ミラとキャシーは「ぺっ」と、冒険者ギルドにつばを吐きながら走っていった。


 うん。別にギルドマスターくんは悪くないんだよ?

 悪いのは勝手に迷宮の中に入った俺たちだよ?



  *



 路地を曲がったり、曲がったりして移動した結果、ミラはあるものの前で足を止めた。

 それは青く、人が一人入れるぐらいの大きさの物。


「このバケツの中なのか?」


「はい。そうなんですが……」

 

 ミラは何か分が悪そうに、言いよどんだ。


「ん? どうかしたか?」


 せっかく、この中に俺の1000万リースを盗んだ犯人がいるというのに。


「いえ……多分、何かの間違いだと思うので……」


 ミラはどこか悲しそうな顔をしている。

 どうしたというのだろうか? 

 まぁいいや。考えているだけ、時間の無駄だ。


「俺の1000万リース返してもらおうか?」


 そう言って、バケツをどかした。

 するとそこには……。


「ミラ……」


 ミラと呟いた、白いケモミミが頭についている獣人がいた。


「お姉様……」


 ミラはその獣人を見て反応するのように呟いた。


「……え? 二人って知り合いなの?」


 完全に俺とキャシーはこの状況に置いてけぼりになっている。



 

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