第2話 自称雷帝の訪問2

 そして最近はずっと呼ばれていない。あいつは相変わらず父上の下を訪ねておるのに。そして今回もまた。


 そして前回の来訪の後、聞き捨てならぬ噂を耳にした。『国王と雷帝が恋人同士である』との。そんなことがあろうか、とは想う。


 確かにあいつはおのこを好むとの噂があったが。しかし、あくまで『人外の』との条件付きでなかったか。


 もしかして、父上は人外なのだろうか? などという、ありえぬことまで、一時は疑う始末であった。


 なら、私はどうなる?  魔道を使えるのは人のみで、人外は使えない。皆の知るところである。もし父上が人外なら、魔道が使える私は父上の子ではない、ということになる。


 さすがに、これは私の妄想であるとなった。

 


 それに、そもそも父上は女好きであった。かあ様以外にも何人も側室がおった。それゆえ他に娘もおる。


 本当の娘はお前一人だなどと言うが。それが、母様がおらぬ私に対する優しさと思いやりのゆえ、とはさすがに気付く。


 他国には、妃を持つものの、実は男好きという王もおるとは聞く。しかし、父上はそんな風には見えなかった。これだけ身近におれば、いくら何でも気付こう。


 あるいは、あいつは特別ということか。私には良く分からぬが、宮女たちによれば、あいつはすこぶるつきの美男ということである。


『ねえ。ねえ。人外好きとか男好きとか、言われているけど、

もし誘われたら、どうする? ねえ、どうする?』


 というのが、あいつが訪れた時の彼女たちのもっぱらの話題のようであった。父上もあいつの魅力にやられてしまったのか?


 もう一つある。父上とあいつのつながりといえば、母様である。もしかして母様との思い出をしのんで、なぐさめ合っておるうちに、そういう関係になってしまったのか? あんなことやこんなことをしておるのか? もしそうならば、母様への冒涜ぼうとくであろう。


 それに全てが私の勘違いとしても、父上とあいつは、そのなぐさめ合いに私を入れるべきではないか。無論父上とあいつと私で、あんなことやこんなことをしようなんてことではない。その思い出を私に語るべきではないか、と言いたいのである。


 といって、父上であれ、あいつであれ、直接問う訳には行かない。私の勘違いだったらどうなる。これほどの面目丸めんぼくまるつぶれはない。


 何と下品な妄想をする娘などと、父に想われたくないことは無論のこと。加えて、あいつが、たとえ笑い話としてでさえ、他の者に言いふらしでもしようものなら、私の評判は地に落ちよう。


 とにかく、まずは現場を押さえることである。

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