母との（緩慢な）さよなら

　亡くなったはずの母がゾンビとして蘇った人のお話。

　泣きました。
　こんなのずるい……平静でいられるはずもない……。

　親とのお別れ。いつか必ず来るとわかっていても、しかしなかなか想像できないというか、いざ体験してみるとどうしようもなく突然だったりするもの。
　その葬儀の最中に、事実上のゾンビとなって蘇生した母。
　やり残した親孝行の代わりにと、その世話を焼く主人公の姿に、ただただ胸が押し潰されそうになります。

　なにしろ本当に蘇生したわけではなく、あくまでウイルスの作用によるもの。
　つまりすでに生前の意識や知能はすでにない状態で、こうなるとかえってつらいというか、だってアクティブ…続きを読む

この作者さんのシリアスなのにコミカルを混ぜる、
配合の妙味が実によく出ている。
終わったはずの事件。
驚きととんでもに、
振り回されそうな中で、
主人公が己の中のものに気付き、
ほっとするような何かを得て、
そして気付いてから失った、
本当の失いを自覚するまでの物語。

穏やかなしんみり。
柔らかく味わい深いものが好きな方は、
是非味わってみてください。
もにゅもにゅとね！☆（？

「親孝行、したいときに親はなし」
　この言葉を噛みしめる暇もなく、主人公を怪奇が襲う。一見ホラー、だがどこか心温まる「親子」の交流。死は絶対で、冷たくて、終わりでもある……そんな常識を覆す、愛の奇跡の物語です。