第10話:そして日が昇る
気が付いた。
もの凄く頭が痛い。
正直あの後何がったかなんて知りたくもないし、見たくもない。
しかしその惨状は私の目の前に広がっていた。
「結局あのまま寝ちまったか…… ううぅ、頭が痛い……」
ずきずきする頭を何とか押さえて毛布を押し退け起き上がり周りを見ると全員ほぼ裸の状態でタオルケットや毛布にくるまって寝ている。
見れば、 みさき は一升瓶を枕にして寝ている。
羽澄もその横ですやすやと寝息を立てている。
しかもこいつら下着姿のまま。
何とか痛む頭を振り立ち上がる。
他の連中も素っ裸のまま寝ている。
モザイク総動員だけど。
「くぅう~ん」
ゲージから飼い犬の情けない声がする。
そう言えば何だかんだ言って昨日は飯を食えなかったんだよな?
私は痛む頭を押さえながら飼い犬の餌を準備する。
もう酔いは抜けたのか飼い犬は元気にご飯を食べ始める。
「くぅ~、飲み過ぎた。いや飲まされた。しかし潰される事は無かったのが不幸中の幸いか?」
「おはようございます、先輩」
後輩君がまだ裸エプロンだ。
が、既にレイムの姿ではない。
「お早う……結局お前らに飲まされたよ……」
「まあ仕方ありませんよ。それより小腹がすきました」
朝から彼は食欲旺盛だ。
まあ、私も結局ほとんど何も食べないで飲まされたから酔いの周りも凄いし腹も減った。
「なんかあるかな?」
言いながら冷蔵庫を見るが流石に何も無い。
炊飯器の中にはご飯はある。
ご飯だけはある。
「塩むすびか? いやなんかしょっぱい汁もんが喰いたいな……」
戸棚を再チェックするとポテトチップがあった。
ちょっと考えてお湯を沸かす。
その間にご飯をざるによそって水洗いしてぬめりを取る。
沸いたお湯にコンソメ、白だし、ゴマと入れてだし汁を作る。
ポテトチップをビニール袋に入れて砕く。
ちなみにこれは海苔味の奴ね。
洗ったご飯にだし汁をかけて上からポテトチップの砕いたものをかけて残っている万能ねぎを振りかける。
「うーし、出来た『目覚めの茶漬け』だ!」
だし汁多めのそれをみんなの前に置きながら全員叩き起こす。
ああ、これにはわさびで無く一味を添えて。
「ほれ食え。朝飯だ」
「ほほうぅ、先輩にしては朝は軽めですね?」
「うっさい、しょっぱい汁もんが欲しかったんだ。おかわりは自分でやってくれ。しかし頭が痛いな……」
言いながら私はお茶漬けを食べる。
コンソメと白だしのしょっぱさに白米のさらさらがお腹に優しい。
ふやけたポテトも程よい食感。
万能ねぎを入れたのでアクセントも十分。
「う~ん、これだけぇ?」
「でも温かいものは助かる」
みさき も羽澄も起き上がりお茶漬けを食べる。
友広や忠司なんかは昨日の残りのローストビーフを茶漬けに入れながら食っている。
「ふむ、これはなかなか」
「ああ、温かい汁ものは確かに助かるな。しょっぱいのがとてもいい」
みねけんも誠もそう言いながら仁王立ちで茶漬けを食うのだが、しまってくれ其之モザイク!!
「ふう、しかしまだ頭が痛いな……」
「二日酔いですか先輩?」
こいつらと一緒に飲んでいればそうにもなる。
私は苦笑しながら首を縦に振る。
「ああ、早い所薬を飲んで何とかしたい。でないと貴重な休日がつぶれてしまうからな」
「だったらこれを一気に飲めば頭痛が無くなりますよ?」
そう言いながら後輩君はコップに入った水を渡してきた。
まあ、喉も乾いていたし飲んだ後の水分補給は重要だ。
私はそれを受け取り一気にあおる。
「ぶほぅ!?」
「二日酔いには迎え酒が一番いいんですよ。まだまだありますからね?」
「うむ、まだまだあるぞ!」
「さて、続きを始めようか?」
「さぁ飲むぞぉ~」
「つまみもまたお願いね?」
「さて次は何で飲もうか?」
「語呂合わせで勝負とかいいのでは?」
そう言いながらこいつらはまた飲み始める。
くそ、私の貴重な休日がぁ!!
「お前らグラスで無くジョッキ持ちやがれ! Her damit!(かかって来いヤァっ!)」
こうして「居酒屋みさき」の昼の部が始まるのだった。
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