コンテスト

中三の時、私は一曲の短いオーケストラの曲を作って、学生対象の作曲コンテストに出した。結果は優秀賞だった。

中学生での受賞は珍しいとインタビューを受け、記事は、音楽雑誌に載った。

武君は、その記事を友達に見せてもらったらしい。


「全然わからなかった。記事でひろみちゃんの言ってることが」

「内容は専門的だった。私だってあの時、細かい所、直されたんだよ」

「うん。読んだ、それ。でも、それも、なんのことを言ってるんだか、さっぱり」


武君は、その記事がまったく理解できないことにショックを受けたらしいのだ。それで、お互い身を置く場所が違いすぎることに改めて思い至ったらしい。


でも。


そんなこと、私は初めから知ってたんだ。

それでも、私は武君が好きだからずっと一緒にいたいと思った。

それじゃだめなの?


「駄目だ。ひろみちゃんの為にならない」

「私達、ずっと仲良くしてたよね。大丈夫だったじゃない」

「これから絶対、俺はひろみちゃんの足を引っ張る。駄目だ」

「何言ってんの?好きだけじゃだめなの?」

「駄目だよ」

「納得いかない」

「それじゃ」

「待ってよ」


武君は待ってくれなかった。

スポーツ自転車に乗ると、彼はあっという間に小さくなって見えなくなった。

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