37話・ラシオス対ローガン 5
アイデルベルド王国から隣のブリムンド王国の貴族学院に短期留学したローガンは、そこで侯爵令嬢フィーリアと出会った。
同年代の他の令嬢たちとは明らかに違う凛とした立ち居振る舞い。普段はツンと澄ましているが、たまに笑うと花が綻ぶように可憐で愛らしい。すぐ好きになったが、彼女には婚約者がいた。ブリムンド王国第二王子ラシオスである。
婚約者がいるのならばと諦め掛けたが、学院で過ごすうちにあることに気付いた。ラシオスとフィーリアは互いに笑顔を見せないのだ。行動を共にする機会は多いが会話は必要最低限しかなく、傍から見ていても仲睦まじいようには見えなかった。
だからこそ、ローガンは決闘を申し込んだ。
元々モント公国の大公妃メラリアの悪事を暴くため、周辺諸国の猛者を闘技場で戦わせる計画があったのだが、そこに自身をねじ込んだのだ。腕には自信がある。彼は本気でラシオスを打ち負かし、フィーリアを奪うつもりだった。
ラシオスは見た目通り線が細くて体力もなく、非常に冷静な男である。その彼がこんなに汗だくになってまで戦い続けるとは思ってもいなかった。
「婚約者の立場を守るためだけにしては、みっともなく足掻くではないか!」
「みっともなくて悪かったですね。フィーリアの隣に立つ権利をみすみす他の男にくれてやりたくないだけです!」
ラシオスは攻撃を受けずに躱し、そのまま流れるように身体を捻って木剣を振るう。剣先をガントレットで弾き、ローガンは数歩退がった。
戦いながら言葉を交わし、ラシオスは胸に秘めていた気持ちを吐露していった。これはフィーリアが決闘前に飲ませた酒のせいだが、二人は知らない。
「そこまで想っておきながら、何故普段から伝えんのだ!」
「僕は王族です。そんなこと出来るはずがありません」
「婚約者より王族の矜持が大事か!」
ローガンの木剣の切っ先がラシオスの首元に突き付けられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます