15話・アリストス対ジェラルド 1

 審判役はまたも頭を悩ませた。

 通常の武器を用いた決闘ならともかく、今度は魔法や魔術で戦うのだという。第一試合は体術、第二試合は勝負そっちのけの演武。そして次も判定のしづらい戦いになる。本気でやり合えば同じ闘技場内にいる主審、副審にも危険が及ぶ。


 そんな彼らの不安を察し、ジェラルド卿は豪快に笑いながらある提案をした。



 《第三試合》


 サウロ王国代表

 ファレナン侯アリストス


 対


 アステラ王国代表

 王宮筆頭魔術師ジェラルド卿



「この前会ったばかりだというのにまた機会がくるとはなァ。よほど縁があるのやもしれん」

「偶々ですよ叔父上」


 感慨深げに語るジェラルド卿に対し、アリストスは呆れたように溜め息をついた。

 アリストスが正式に爵位を継いだ際、ジェラルド卿は遠縁の親族として宴に招待されている。それからまだ半年も経っていない。


 彼らの繋がりは数代前に遡る。

 魔法使いの家系であるアールカイト家の娘がアステラ王国のジェラルド家に嫁ぎ、魔力持ちの血を受け継ぐ子が生まれた。周りに魔法使いがおらず、魔力も弱かったことから素質を活かすには至らなかった。だが、研究を重ねるうちに少ない魔力を補う使い方を修得した。そして、ついに先々代の頃に王宮お抱えの魔術師として取り立てられるようになったのである。


 遠縁過ぎる親戚ではあるが身に宿る魔力の根源ルーツは同じ。故に、今でも国を跨いで親交がある。


「俺もおまえも同じ炎使い。まともにやり合っては埒があかん。だから、で勝敗を決めるとしよう」

「良いでしょう。受けて立ちます」

「うむ、決まりだな」


 アリストスはジェラルド卿の案にすぐさま賛同した。

 試合形式で行う以上、勝敗の基準は明確でなければならない。攻撃魔法はまともに当たれば命に関わる。大勢の観客が見守る中で対戦相手を黒焦げにするわけにはいかない。


 この時、彼は完全に自分が勝つ気でいた。

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