5話・グナトゥス対シヴァ 1
ブリムンド王国第一王子ルキウスの結婚式に参加するために招待されていた周辺諸国の王族や貴族たち。アイデルベルド王国王太子ローガンとブリムンド王国第二王子ラシオスの決闘をきっかけに、各国の思惑が絡んだ対戦カードが次々と組まれていった。
公平を期すため、決闘に参加しない国から審判役が選出された。モント公国大公妃メラリアの護衛部隊がその役を担う。
《第一試合》
サウロ王国代表
クワドラッド辺境伯グナトゥス
対
ユスタフ帝国代表
帝国軍第一皇子直属部隊隊長シヴァ
闘技場の中央で距離を置いて向かい合う二人。腰には木剣、手には金属製のガントレット、脚に脛当て程度の軽装備である。盾はない。
「こんな細い木切れ、当たっても大したことはないのぉ。せいぜい打ち身程度じゃ」
「……」
グナトゥスの軽口にシヴァは応えなかった。
身分が違うからと遠慮しているわけではない。対戦が決まった瞬間から相手を観察し、力量を測っているのだ。背は僅かに負けるが、若さと体格の良さはシヴァが勝っている。グナトゥスはサウロ王国軍の前軍務長官。軍隊運用で右に出る者はいない。だが、単独で戦うとなれば別だ。
「第一試合、始めッ!」
審判役の合図で二人は同時に後ろへと飛んだ。間合いを取り、相手の隙を窺って仕掛けるつもりなのだろう。一定の距離を保ったまま足を横に滑らせ、ぐるりと円を描くように移動していく。
今日の主役であるラシオスとローガンはそれぞれ別の貴賓席に陣取り、闘技場の二人を見下ろしている。グナトゥスは大陸でも名の知れた猛将。彼の戦い方を学び、自分の決闘に少しでも活かせたらと考えているのだ。
しかし、次の瞬間に『そんなことは不可能だ』と思い知らされることになる。
「相手の出方を見るなど時間の無駄じゃ!力で押し切ったほうが勝ァつ!」
痺れを切らしたグナトゥスが跳躍して間合いを詰め、シヴァ目掛けて木剣を振り下ろした。
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