第19話 悪魔が群がる国境

 健人は翌日から山中の船に乗ることとなった。


 山中の船は表向きは福江港から男女群島の磯釣り客のため、餌や食料を運搬することを業としていた。


 男女群島の磯釣りは、客によっては2、3日泊まりがけで釣りを行うため、餌や食料の補充が必要となる場合がある。


 山中の船は、特に人気があった。

 なぜならば、どんなシケの日でも注文に応じるからだ。


 山中五郎、年齢72歳、若い時は佐世保の暴力団事務所に所属していたが、北九州の有働会の勢力が佐世保にも及び、山中の所属する暴力団は解散してしまった。


 それからの山中は、佐世保の造船所で定年まで勤め、定年後は退職金で船を購入し、渡し船を行っていた。


 しかし、やはり三つ子の魂は百までと言うとおり、直ぐに悪い蟲が付き、中国組織と闇取引をし稼いでいたのである。


 その取引とは、「金」の密輸であった。


 主に中国・上海の組織と取引を行っており、国境海域辺りで、木箱に入れられた金塊が、ブイ(浮標)に括り付けられ中国側から流されて来る。

 それを受け取り、佐世保に在住する中国組織の仲間に渡し、破格のマージンを得ていた。


 この密輸により、中国組織の利益としては、税金を支払わずに日本国内に金塊を持ち込み、販売時に消費税分を上乗せして売る「利ざや」を稼ぐことが狙いであった。


 また、空輸による密輸は、昨今、税関の捜査が厳しいことから、海輸に切り替えた際、山中が昔のツテを通し、中国組織に持ち掛け、このブイによる受け渡しを行うようになったのだ。


 山中が引き上げる金塊は、時には100kgを超える時があり、海上保安庁の捜査を潜り抜けるため、闇夜にそれもシケ時にウインチも使わず、釣鍵一本で金塊を引き上げるには、山中は歳を取りすぎてしまっていた。


 そこで、山中は、ここ2、3年、相棒を探していたのだ。


 山中にはある意味、人を見る目があった。


 その男の心が強いか、弱いかを


 そして、山中の目に叶ったのが健人であった。


 今日は表向きの仕事として、男女群島の磯釣り客に餌を補充しに向かってた。


 福江港を午前2時に出港し、3時間かけて男女群島に向かう、健人の仕事は磯辺から客に餌を手渡す役目であった。


 山中の船は予定通り、午前5時には男女群島に到着し、山中は注文客と携帯でやり取りしていた。


 山中は、ある離小島に船を寄せ、健人に言った。


 「ボイル二箱、渡してくれ。」と


 健人は生簀から解凍したボイルの塊の入った網を引き上げ、2塊、別の網に入れ、船首からそれをタモに入れ、客にタモ竿を伸ばし、餌を渡した。


 そんなやり取り、この日は5箇所行った。


 時刻は既に午前7時を回り、海面の彼方向こうから、太陽が産まれてきた。


 朝まずめであった。


 山中の船は役目を終え、福江港に帰港し出した。


 健人は操舵室に入り、舵を握る山中に話しかけた。


 「金塊の仕事はいつ、やるんですか?」と


 山中は煙草を蒸しながら答えた。


 「まだやれん。海がシケたら、向こうさんから、連絡が来るけんね。」と


 健人は合点が入ったよう頷いた。


 そして山中にこう聞いた。


 「俺達と同じことしてる奴はいるんですか?」と


 山中は笑いながら答えた。


 「いーっぱい、おるがな!今度、行ったら分かるさ。国境辺りが、海蛍如く、輝いとんけん!」と


 健人が山中に素朴な質問を投げかけた。


 「でも、そんなに目立ったら海上保安庁に見つかるんじゃないんですか?」と


 山中はにやりと笑い、こう答えた。


 「ちゃんと、中国さんが、お偉い政治家先生の袖の下、銭、入れとるんよ。

 保安庁の中にもそのお裾分け、貰うとん奴がおってね、やばい時には教えてくれる仕組みになっとるんよ!」と


 そして、山中はこう付け加えた。


 「ワシらがやりよんことは、そんなに悪かことや無いんよ。

 金を運ぶだけや。

 アヘンとかヘ○インとか、人を廃人にするこったぁ、なかけんね!」と


 健人は山中に聞いた。


 「麻薬を密輸してる人も、まだ、居るんですか?」と


 山中は言った。


 「今のヤクザも馬鹿じゃなかとよ。中国がこげん、マークされとるけん、海輸入ではしておらん。

 昔はしよったがな。

 ワシもな!」と高らかに笑った。


 健人も山中の笑いにつられて、にこにこ笑った。


 山中はその微笑む健人の顔見てこう言った。


 「お前、笑うとるな!怒りだけの眼をしとったけん、哀れな奴と思っとったが、それはよかよか!」と


 山中と健人の船は福江港に着いた。

 時刻は午前10頃だった。


 山中は船から降りて、ある一艘の船を見ていた。


 その船は一艘だけ、敢えて離れて岸辺に繋がれていた。


 健人は船から飛び降り、山中が見てる船を見た。


 山中が首を傾げて呟いた。


 「あの船、本当、怪しぃ~ちょねぇ~、全く動かんもんねぇ~」と


 健人は山中に聞いた。


 「あの大きさからしたら、渡し船ですか?」と


 山中の眼は、竿やタモが突き入れられている筒を見ていた。


 「いやぁ~、多分、違う、あの縦浮、あんなもん、福江じゃ使わん。」と


 健人もその筒を見て言った。


 「僕の地元は真鯛釣りで、あんな縦浮で浮き流し釣りをしますよ。」と


 山中は呟いた。


 「なるほど、もしかすると、ワシらより、悪いことしよん、輩が居るかもしれんな。」と


 健人はその船名を脳裏に焼きつけた。

  

  「光進丸か!」と


 その頃、詩織のマンションに1人の女性が訪れていた。


 あの英一の罠にまんまと嵌り、性欲の怪物と化し、廃人同様の生活を送っていた「中谷恭子」であった。


 恭子は詩織に言った。


 「詩織さん、私、貴女と味わった快感がどうしても忘れられないの。

 もう一度だけ、貴女にあの快感を貰いたいの。」と


 詩織は恭子に言った。


 「私の身体は、ヘ○インがないと、あの時みたいに、貴女を感じさせることはできないわ。」と


 恭子はそれを聞くと、慌てて、ハンドバックから小瓶を取り出し、詩織に懇願した。


 「竿師から聞いたわ!ちゃんと持ってきたから、お願い、してぇ~!」と


 詩織は驚いた。そして、恭子にこう問うた。


 「どうして、ヘ○インが手に入ったの?英一さんから貰ったの?」と


 恭子は詩織の目を真剣な眼差しで見つめ、こう言った。


 「私は弁護士なのよ!犯罪者の弁護もするのよ!信じて!これは本物だから!」と


 詩織は恭子を憐れに思うと同時に、残り少ない余生の中で数多く健人の幻覚に接したいと思った。


 詩織は服を脱ぎながら恭子に言った。


 「いいわ!してあげるわ!あそこの注射器でヘ○インを吸い取って。」と


 恭子は嬉しそうに頷き、急いで、ヘ○インの入った小瓶にベットテーブルに置かれた注射器を入れ、その液体を吸い取った。


 そして、恭子は服を脱ぎ、詩織のいるベットに上がった。


 詩織は恭子に指示した。


 「仰向けに寝てちょうだい!まず、貴女のを大きくするから」と言い、


 恭子から注射器を奪い取り、恭子の股を開き、既にヒクヒクと勃起し始めた、巨大ク○ト○スに注射針を突き刺した。


 「あぅ~」と恭子が喘いだ。


 すると、恭子の巨大ク○ト○スはむくむくといきり立ち、ビクビクと痙攣し始めた。


 「凄い~、もうイキそぅ~、なんにもしてないのに!イク、イク、イク~~!」と、あっという間に逝き果ててしまった。


 それを見遣りながら、詩織は自分のサクランボのようなク○ト○スに注射針を突き刺した。


 詩織も「あぅ~」と喘ぎ仰け反った。


 詩織は懸命に、恭子のビクビクと痙攣してる身体に覆い被さり、恭子の左脚を抱え込み、恭子の巨大ク○ト○スに自分のク○ト○スを密着させるよう潜り込ませた。


 それを今か今かと待ち侘びていた恭子は、その結合部分を上体を起こしながら見つめ、


 「もう直ぐ、始まる。あっ、あっ、くるぅ~」と開始の合図を喘いで教えた。


 詩織のク○ト○スが蜜蜂の尻のようにブンブンと小刻みな痙攣を始めたのだ。


 恭子は、「あぅ、あぅ、凄い~、やっぱり、凄い~、あぁ~~」と喘ぎ、のたうち回った。


 詩織も「きくぅ~、気持ちいいわぁ~、私、私、もう、イキそぅ~、イク、イク、イックン~」と絶頂を迎えた。


 恭子は快感に酔いしれながら、自分のク○ト○スを右手で掴むと、その亀頭部分を詩織の蜜蜂の尻に引っ付けた。


 詩織はその瞬間、悶絶絶叫した。


 「また、イクゥ~、それ、それ、凄い~、変になっちゃう~」と


 恭子は「あぁ~、あぁ~、死んじゃう~、死んじゃう~」と叫びながら、その2つの振動により白濁汁が飛び散る結合部分を必死に見つめ、「もうダメぇ~~!」と叫ぶと失神し、海老反りに仰け反り、ピクピクと小刻みに身体全体で痙攣し始めた。


 詩織も最後の瞬間まで、あの幻覚を見るまで、強烈な快感に耐えるよう唇を噛みしめていたが、朧げにあの健人の姿が見え始めると、

 「あぁ~、あぁ~、イクゥ~……」と息を引き取るように叫び、どっと、恭子の身体にうつ伏せに倒れ込んだ。


 詩織は朦朧とした意識の中で健人に愛されていた。


 こんな2人の堕天使の哀れな行いを嘲笑うかのように、サタン、魔王、城下英一は東京のマンションで新たな獲物をいとも簡単に捉えていた。


 「先生!凄い~、こ、こ、こんなの初めてぇ~、凄い~、先生~、また、また、私、私、イキそぅ~、私だけ~、また、イクゥ~」と

 綾子は英一の胸に倒れ込み、口から涎を流し、下の口は英一の陰茎を咥えたまま、白濁色の涎を垂らしながら、ヒクヒクと痙攣を繰り返していた。


 英一は、明日の国会の資料の確認をすると公設秘書の「杉本綾子」をマンションに呼んだのだ。


 綾子も英一には、熊本でも有名な美人妻がいることから、私なんかに手を出すことはないと思い、無防備にもその罠に嵌ってしまった。


 英一は、ヘ○インセックスをいきなり綾子に味合わさせたのだ!


 英一は痙攣しながら逝き果てている綾子を見ながらこう思った。


 「この快感、なかなか忘れることはできないよ。」と


 変質者は満足気に新たな犠牲者を生み出した。


 悪魔、魔王だけが、思う通り事を進めていたのだ…


 

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