第20話 漁火を狙え!

 健人は山中と酒を飲んでいた。

 健人は福江に来てから1週間、旅館暮らしをしていたが、山中の船に乗るようになってからは、山中の家に寝泊まりするようになっていた。


 山中は生涯孤独の身で妻子は居なかった。

 山中曰く、ヤクザもんに妾は居ても女房は持たないと


 山中も健人と一緒に暮らし始めて嬉しかった。

 初めて、家族を持ったような気分になっていた。

 健人も何故か、山中と亡くなった祖父が重ねて見えていた。決して、居心地は悪くはなかった。


 山中が仕切りに考え込んでいた。


 健人は山中に聞いてみた。


 「光進丸のことですか?」と


 山中はうーんと唸り、こう言った。


 「あの縦浮、あれがやはり気になっとうとよ。あれは、今時、やらんっちゃね。」と


 健人は聞いた。


 「昔は福江でも浮流、やっていたんですか?」と


 山中は首を振りこう言った。


 「釣りやなかとよ。ヤクを仕入れるのに、やっとったんよ。あん頃はアヘン、ヒロポンが、ほれ、ベトナム戦争の時たい!よう流れて来てな、末端価格も安う~かったけん、ワシら佐世保のヤクザ者が五島の漁師使ってのぉ~、魚の腹にアヘンと現金入れて、ベトナムの組織と交換で取引しよったんよ。

 今はアヘンもヘ○インも末端価格が高くなったけん、中国もベトナムも此方の足下見出して、少量じゃ取引せんようになったんよ。」


 健人は山中に問うた。


 「末端価格が高ければ少量でも取引するんじゃないですか?」と


 山中は言った。


 「安ければ、ワシらみたいな田舎のヤクザも買えるけんど、高くなると買い手が限られてくるんじゃわ。

 それこそ、今、違法ドラックの方が出回りよんけん、あまり、日本じゃ、ヘ○インは高すぎてヤクザも欲しがらん。

 アメリカやロシアのマフィアが大手の買手になっちょるんよ。」と


 健人は言った。


 「少量でも高値で買う客が居ると言うことですか?」と


 山中は笑いながら言った。


 「本当!あんた、頭えぇのぉ~、そんとおりたい!そうやないと、中国の方も危ない橋は渡らんよ。」と


 そして、山中は健人にこう聞いた。


 「ワシもヤクザ者やったけん、人の過去は聞かんようにしとった。

 じゃけんど、聞いてよかかい?

 あんた、何しに五島に来たん?」


 健人は山中にこう言った。


 「城下と言う国会議員を殺すために来ました。」と


 山中は健人にこう言った。


 「城下太郎か!あれは危ないわ。有働会がバックに付いとる。

アンタ、殺されるたい。」と


 健人は言った。


 「いえ、城下太郎ではなく、息子の英一の方です」と


 山中は言った。


 「あの熊本市長から当選した息子の方かい!綺麗な嫁さん貰って、ようテレビに出よったボンボンやないか。」と


 健人は言った。


 「その妻は僕の恋人でした。」と


 山中は一瞬黙り、健人にこう言った。


 「あんたさえ良ければ、詳しく聞かせてくれんか。」と

 

 健人は詩織のことを一部始終、山中に説明した。


 山中はコップ酒を飲みながら、何も言わずに聞いていた。


 健人の説明が終わるとこう問うた。


 「そん、詩織さん、永くはなかとね?」と


 健人は答えた。


 「余命1年持てば…、いや、今ならもう1か月かと…」と


 山中は言った。


 「うんじゃ、急がなならんたい!」と


 そして、山中は健人にこう問うた。


 「あんた、人を殺す覚悟、あるかね?」と


 健人は徐に立ち上がり、自分の竿ケースを持ち出し、ジッパーを下ろし、中に入った散弾銃を取り出した。


 山中は大きく頷き、こう言った。


 「あんたの覚悟、よぉ~分かったさ。

 ワシが今から言うことをよぉ~聞きなよ。

 縦浮きの麻薬取引の仕方、教えちゃるけん!」と


 健人は散弾銃をケースに戻し、煙草に火を付け、一息付き、山中にこう聞いた。


 「どうして、僕を手伝ってくれるんですか?まだ、1週間しか一緒に居ないのに?」と


 山中は健人に言った。


 「あんたな、ワシの昔の相棒によく似とるんや。そいつもな女のために死んでしもうてな。あんたを死なせたくないんや。あんた、死にたいかい?」と


 健人は山中に言った。


 「死ぬわけにはいきません。愛媛の相棒に必ず戻ると約束してますから」と


 山中は健人の肩を両手で叩きながら言った。


 「そやろ!あんた、まだ若いんや!ワシの相棒もあんた位の年で死んでもうた。

 この山はなぁ、ヘマしたら相手が城下や有働会どころか、中国マフィアとやらんといけんごとになる。

 そしたら、命がなんぼあっても足らん。

 ワシが策を立てるけん、よう聞くんやぞ。」と

 

 山中の策はこういうものであった。


 「中国マフィアと漁船との取引はシケの時、合図は海上保安庁のレーダーに探知されぬよう、最小限の合図、恐らく、漁火の点灯だろう。

 双方が取引に使う魚の内、中国マフィアに流す現金の入った魚は中国マフィアに流し与える。

 ヘ○インだけ確保する。

 英一は漁船には乗らないだろう。

 英一の依頼相手を抑え、英一の居場所を聞き出す。

 中国マフィアは、現金が入れば、深追いはしないだろう。

 しかし、合図がない以上、取引は失敗となる。

 必ず、日本在住の中国マフィアの者がヘ○インの所在を探りに来る。

 その前に英一を抑える。

 問題はどうやって、英一が依頼した船「光進丸」の漁火を消すかだ!

 シケの中、その散弾銃で漁火を狙い撃つしかない。」というものであった。


 山中は健人に聞いた。


 「あんたの銃の腕は確かか?」と

 健人は即答した。


 「自信はあります。」と


 健人は山中に問うた。


 「その依頼人はどうするんですか?」と


 山中は言った。


 「フカ(サメ)の餌にするばい。生かしておいたら、此方が中国マフィアから狙われるたい。」と


 そして、こう言った。


 「人殺しはヤクザに任せんしゃい!」と


 

 詩織は同級生の医者の病院に既に入院していた。

 肝臓癌の黄疸症状と背中の激痛から急遽、恭子に頼み、その病院に内々に連れて行ってもらっていた。


 医者は言った。


 「ご主人にはもう言った方が良いよ。胃まで転移してるわ。意識がある内に伝えた方が良いよ。」と


 詩織は医者に率直に聞いた。


 「今の抗がん剤治療で何日持つの?」と


 医者は渋い顔して言った。


 「持って1週間ね。」と


 詩織は英一に電話した。


 英一はその頃、秘書の杉本綾子とヘ○インセックスの最中であった。


 「先生、お願い~、お願い~、もう、我慢できなぃ~、逝ってもいぃ?、もう、逝ってもいぃ~、逝きそぅ~、イク、イク」と綾子が懇願すると、英一はスポンと陰茎を抜くのであった。


 綾子は四つん這いで尻をモジモジ振りながら、


 「やだぁ~、焦らさないでぇ~、お願い~、綾、逝きたいのぉ~、そう!そう!、いっぱい突いてぇ~、あっ、あぅ、イクぅ~~!」と絶頂の雄叫びを放ち、

 水泳のバタフライのようにベットに潰れて落ち、尻だけ高く掲げ、二つの穴を露にし、ヒクヒクと痙攣しながら失神してしまった。


 英一はその無様な淫売女と化した綾子をニタニタと見遣り、


 「詩織よりも感度は良いよ!」と呟くのであった。


 そして、失神痙攣している綾子の下の穴に再度、陰茎をブチ挿れようとした時、英一のスマホが動いた。


 英一は徐に陰茎を綾子の穴から抜き出し、電話に出た。

 詩織からであった。


 「英一さん、今、私、知人の病院に入院してます。今から医者と代わりますので…」と


 英一は何も言わず、痙攣を繰り返す、綾子の尻をニヤニヤしながら撫で回していた。


 「奥様の担当医の神崎と申します。

 お気を確かにお聞きください。

 奥様は、末期の肝臓癌です。胃への転移も見られます。

 現在、抗がん剤治療していますが延命措置に過ぎません。

 今週いっぱいが山場だと思います。」と


 英一は医者に礼を言い、詩織に代わり、この三日は研究会があるため、その後に病院に向かうと言い、電話を切った。


 英一は綾子とのヘ○インセックスを再開した。


 「あっ~、凄い~、先生~、凄い~、気持ちぃ~、変になっちゃう~」と

 失神していたはずの綾子がゾンビのように蘇り、また、激しく喘ぎ出した。


 英一は綾子の穴にピストンをしながらこう叫んだ。


 「詩織!お前の代わりはここにいるぜ!こいつのために、ヘ○インを持って来なくちゃならねぇ~んだよ!

 その後、拝みに行ってやるからな!」と


 英一は、魔王サタンのように、人の死はエネルギーになるかのように激しく腰を動かし続けた。

 

 

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