第23話 緊急事態
ピロン!
おいおいおい!ここでメッセージかよ!
勝負の邪魔をしたことを怒っているわけではないが、このメッセージが出たとき良い情報だった試しがない。そこはかとない不安が俺達の間に漂う。勝負を止めたことへの気まずさもだ。
さて、メッセージにはなんて書いてあるかなっと。
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『寿高等学校』内にいル皆さんにオ知らせです。モンスターの繁殖が一定数に達したため、『エリアモンスター』が登場しまス。皆んなで力を合わセてエリアモンスターを討伐しましょウ。また、それに合わせてエリア範囲内にイるステータス所持者に武器ガチャチケット一枚を配布しましタ。
エリアモンスター登場まで残り
10.00.00
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「「「!?」」」
俺と伊織はバッと顔を見合わせる。それほどまでにふざけた内容だったからだ。あたりを見渡したところ、このメッセージは全ての人に表示されていた。
「蓮、これは......」
「ああ、いよいよ本格的に不味いぞ!」
エリアモンスターが現れるなんてことを信じたくはない。だが信じざるを得ない。今までこんな非現実的なことが何度も起こってきた。今、重要視されるのは判断の速さと状況に適応できるかどうかだ。
「まず、生徒を全員学校の外に出せ!避難の準備を始めろ!」
エリアモンスターと言うからにはその範囲から出ることはないと考えられる。ならば学校の外に出してしまえば被害は及ばない。まあこれも憶測に過ぎないが。外に出れば他のモンスターに襲われて死ぬかもしれないが、学校内に留まっていれば確実に死ぬ。この二択なら俺は断然前者を選ぶ。
「ど、どういうことだ!?」
天堂はまだ状況が理解できていないようだ。いつもの天才的頭脳はどこにいった!?後ろでギャアギャア言っているようだが理解するのを待っている時間はない。
「伊織、天堂達、それに凍堂と青海を連れて行ってくれ。避難にはもちろん、露払いにも役立つはずだ」
一般人よりも圧倒的にコイツらは強い。露払い程度なら命の危機もなく行えるはず。
「わかった。だが、お前はどうするつもりだ?今の内訳にお前の名前は入っていなかっただろう」
「そうですよ!先輩はどうするんですか?」
ああもう!そんなこと話してる場合じゃないだろ!って言ってもこの二人は納得しないんだろうな。たった十分しか俺達には時間が与えられていない。その短い時間で体育館内、ひいては生徒全員を逃がすには時間が足りないのだ。
「.......俺はエリアモンスターとやらのところに行く」
もとからそのつもりだった。自惚れじゃなければ今、この学校内においてエリアモンスターを相手どれるのは俺だけだ。少なくとも確実なのは俺のみ。ならばやるしかないだろう。
「な、なら私も行きます!先輩だけ残るなんてっ!」
凍堂が心配するのも最もだ。最初にゴブリンが現れてからモンスターの出現が予告されるなんてことは一度も無かった。つまりこれまでのモンスターの戦力基準で測ることができないということ。端的に考えるのなら予告されるってことは余程強いということだ。
「駄目だ。お前じゃ足手まといにしかならない。それに....誰も残るだなんて言ってないだろ。全員の避難が完了するまでの足止めだよ」
「そ、それでもっ......!」
「凍堂」
一言、たった一言だが、俺が放った言葉に凍堂は押し黙る。
足手まといだと言ったことに凍堂に申し訳なさを感じるが、俺の言ったことは事実だ。エリアモンスターがここになって現れるのなら、ゴブリンやホブゴブリンはその前座、次はそれよりももっと強いモンスターだと推測できる。身を守るだけだとしてもせめてホブゴブリンを一人で倒せるくらいの腕前は欲しい。惜しいが凍堂はこの基準を満たしていない。同様の理由で伊織も絶対については来させない。
己の実力をはっきりと理解しているからこそ伊織は俺に何も言わない。それが最善だとわかっているから。
「.........本気なんだな?」
伊織が俺の真意を問う。下手をすれば死ぬかもしれない。それでも俺は引く気はない。
「ああ。俺以外に誰がやるんだ?」
俺はニヤリと笑って伊織に応える。それを見て伊織もまた笑った。
「死ぬなよ。また会おう」
そう言うと伊織は体育館の壇上に向かい、避難を指揮し始める。再会したばかりでまた別れることになるとは。次にいつ会えるかはわからないが、それまでお互い生き残っていることを祈ろう。
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伊織が去り、この場にいるのは凍堂と俺、そして少ししてからやってきた青海のみだ。
「それで、戦場さんは戦いに行くの?」
ここに来てから早速、青海が俺に聞いてくる。
「まあ、そのつもりだが.......まだ言ってないよな?」
「ええ。聞いてないわよ。でもどうせ行くんだろうなと思って」
なんでわかったんだよ!?テレパシーか!?
「ちなみにテレパシーじゃないわよ。私は何をすれば?」
テレパシーじゃねえか!なんで今のもわかったんだ!じゃなくて何をすればいいのか、だったっけ?
「会長と一緒に生徒の避難を手伝ってくれ。学校を出るまでにモンスターを倒して露払いをしてくれ」
「嫌よ」
!?
「は?」
「冗談ですよ。喜んでやらせていただきます」
前と同じように蠱惑的に笑って青海はそれを了承した。マジでビビッたんだが.......。
「冗談かよ......本っ当に焦ったぞ」
でもまあ.....断られることを考えていなかった俺にも非があった。なぜ絶対に了承してもらえるなんて勘違いしていたんだ?まさか俺が上から目線で人にものを言っていたとは。なんて恥ずかしい勘違い野郎だ。
「言い方が悪かったな。頼む」
俺は頭を下げる。人にものを頼むときは頭を下げるのが道理だ。凍堂と違って青海は俺が完全に、手取り足取り物を教えたわけじゃない。言い方は悪いが完全に他人なんだ。
「はい。勿論です」
今度は本当だろう。今のやりとりでむしろ青海に対する信頼が増した。
「凍堂も、気をつけろよ。任せた」
「はい......!」
うん、ちゃんと納得してくれたみたいだ。これで俺は心置きなく戦える。
伊織の方に走っていく凍堂と青海を見届けると、俺は生徒の波と反対方向に歩き出した。
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天堂達との絡みが少ない.....と思ったそこのあなた!今度またありますのでご安心を!
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