第19話 俺たちの戦いはこれからだ!

 みんなで家に戻り、撮った映像を確認した。

 想像していたよりもかなりいい出来で、めちゃくちゃテンションが上がる。

 これを大きな画面で見たら、もっと迫力があるってことだ。


 リューシードの撮影技術はすごく、ピントの合わせ方が絶妙だった。

 どうやら、撮影者の魔素の流し方によって、どこにピントを合わせるか選択できるらしい。

 説明を聞いてもちっともできる気がしなかったので、本当にいいカメラマンを仲間にすることができたなと思う。


 撮った映像を編集することはできないそうだ。

 そういう機能を追加する余地は残っているらしいのだが、それをする知識も技術も素材も、現存していない可能性があると言っていた。

 ミュリエラのおじさんからの連絡は未だになく、あまり期待はしないでおこうという話になった。


 その撮映写機を持って事務室に行き、講堂の使用許可を取った。

 初めは何を言っているんだという目で見てきた事務員さんだったが、撮映写機を見せると驚き、撮った映像を見せるとすぐにオッケーを出してくれた。


 借りるのは七日後の授業が終わった後。

 それまでは宣伝に費やすことにした。

 コーエリンが嬉々としてチラシを作ってくれたので、それを配り歩く。

 チラシにはしっかりと、衣裳:コーエリン・フォルシュリッツと明記されていた。



「キリナが戻ったぞー!」

「キリナだけか? シュルツとカイルはどうした」


 行きよりも数日多い日数をかけてゆっくり村に戻ったキリナは、村長に報告に行った。

 自分が土属性だったこと、カイルが炎、シュルツが氷だったこと。

 カイルとシュルツは魔法学院に入学するといってテストを受けに行ったこと。


 シュルツの両親はそうなるだろうと聞いていたらしく、落ち着いていた。

 カイルの両親はショックを受けたような表情ではあったものの、学院に入学したのならと一応は納得したようだった。


 その日の夜。

 村の上空に一つの影があった。

 その影はカイルの家の周囲を何度か旋回し、王都の方角へと飛び去っていく。


 月明かりに照らされたその影は、深い赤色をしていた。



 宣伝の効果があったのか、コーエリンのお願いの効果があったのか、イケメンを見たい女子が多いのか、とにかく上映日の講堂にはかなりの生徒が入っていた。

 数人しかいなかったらどうしようかと不安になっていた俺は胸を撫で下ろす。


 ざわざわとしている人たちの前に出ていき、ぺこりとお辞儀をした。


「本日は魔法戦隊マホレンジャー第一話の上映会にお越しいただきありがとうございます。もし、上映されたものを観て、応援したいなって思ってくれた人は、応援者登録用の魔法石を用意したので、そこに登録して行ってください。登録してくれた方には、今後の活動について進展があった時にその都度ご連絡させていただきます。このご案内はまた上映後にもさせていただきます。まもなく上映が始まります。今しばらくお待ちください」


 講堂の操作室に入って席に座ると、リューシードが手元のボタンを操作してベルを鳴らした。

 ベルが鳴り終わるタイミングに合わせて講堂内の電気が暗くなり、上映が始まる。


 撮映写機をはめ込んだ機械にみんなで少しずつ魔素を注いだ。

 リューシード一人でも出来ないことはないと言っていたが、みんなの魔素で動かした方が綺麗だし間違いがないそうだ。


 映像も音声も、問題なく流れている。

 確認していた時よりも、幕に大きく映し出された映像は迫力があった。

 ちょっと心配していた変身後の姿も、それほど抵抗なく観てもらえているようだった。


 上映が終わると、どこからともなく拍手が起こった。

 男女関係なく拍手してくれていて、どこかほっとする。

 リューシードが室内を明るくしてくれている間にまた前に出て、もう一度案内をした。

 シュルツたちが魔法石を持っていて、登録を呼び掛けている。


 また上映会はあるのかと聞いてくれる人や、映像を褒めてくれる人なんかもいて、嬉しくて仕方がなかった。


 結局、六十人ほどが応援者登録をしてくれた。

 想像以上の数にみんなで喜ぶ。


「何人か出資したいって人もいたな、こりゃ本格的に考えねーとな」

「あの衣裳、カッコイイって言ってる人結構いたね! 安心したー!」


 講堂の後片付けをして、みんなで今後についての話し合いをする。

 今は初回だったからネビットでも良かったけれど、これからはもっと見応えのある戦闘をするべきだろう。

 そのためには強くなること。

 装備も整える必要がある。


「杖とかのデザインは考え中! 授業でも作るらしいしね」


 それと今日上映会をしていて思ったのが、音楽もほしいなということだった。

 自分たちの声と周りの音だけではやっぱり物足りないのだ。

 そういうことが得意な人が仲間になってくれたらいいんだけど。


 ともあれ、魔法戦隊マホレンジャーは大きな一歩を踏み出した。

 一つの物語を作って、撮影して、上映して、応援してくれる人を見付けられた。


 もっともっとマホレンジャーを広めて、みんなが真似したくなるようなマホレッドを目指すんだ!


「これからも頑張るぞー!」

『おー!』


 マホレンジャー五人と、それを支えてくれる人。

 俺たちの活動は、これからも続いていく。

 ずっと、続いていく。



【了】

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異世界戦隊つくるんジャー! 南雲 皋 @nagumo-satsuki

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