第15話 全ては私利私欲から始まるのだ
一般教養の授業は色々な分野ごとに分かれていて、地理だったり、歴史だったり、書物の読解、魔道具の作り方、選択分野には聞いていたマナーのクラスもあった。
張り出された選択授業の中から、受けたいものを五個程度選んで先生に報告。
希望者が多い場合は抽選で、最低でも三つの授業は受けられるように割り振られるらしい。
俺とシュルツはマナーの授業も選ぶことにした。
自由時間も結構多くて、熱心な生徒は訓練場で魔法の練習をしたり、図書館や自習室で勉強したりしている。
昼ご飯は食堂があり、開いている時間はいつでも利用出来るようになっていた。
いつでも熱々に保っておける魔道具がたくさん置かれ、何種類ものおかずがズラリと並ぶ。
何でも、すごく食いしん坊な卒業生が魔道具を作りまくって寄付したんたとか。
熱意がすごい。
シュルツのご飯も美味しいけど、食堂のご飯もすごく美味しかった。
たくさん食べることも魔素を無駄なく溜めておける身体作りには重要だということで、もりもり食べている生徒が多い。
俺も、トレイに載せた皿にどんどこ食べたい物を乗せていく。
横からシュルツが茹で野菜やら蒸し豆やらをヒョイヒョイ追加してくるのをジト目で見れば、「栄養も考えろ」とのお返事。
肉だけ食べてればいいじゃん!って思うけど、ここでシュルツに逆らっても俺の夕ご飯が悲惨なことになる未来しか見えないので大人しく食べた。
夕方頃には全ての授業が終わり、自由参加の授業外活動が始まった。
授業外活動は生徒がやりたいことをやる、みたいな集まりで、スポーツをやってる人たちもいれば、化学実験?みたいなことをやってる人たちもいるし、様々だった。
入りたい集まりがあれば入ってもいいし、興味がある集まりがなければ自分で作ってもいい。
もちろん参加せずに家や寮に帰るのも自由だ。
俺はマホレンジャー活動をする集まりを作ることに決めた。
何故かというと、この集まりを作れば学院の講堂を借りることができるのだ。
学院の講堂には、撮映写機用の映写幕があるというのはコーエリン情報。
撮影しても上映する場所が……と悩む俺たちに、アドバイスしてくれたのだった。
五人入ればすぐに集まりを認定してもらえると聞いて、さっそく申請に行く。
コーエリンも参加してくれるとのことで、途中で合流して事務室へと向かった。
新しく集まりを作りたい人はそれなりにいて、順番が来るまで少し待つことに。
新入生だけで集まりを作るには、先生からの信用を勝ち取るのにやや難儀するようだが、俺たちにはコーエリンがいる。
俺が先生に活動内容をぶわーっと喋ったあと、コーエリンとシュルツが細かなところを補足してくれて、問題なく許可されたのだった。
「よーし! これで上映会も目処が立ったな!」
「衣裳で待たせちゃってごめんなさいね」
「色々考えなきゃいけないこととか、練習しなきゃいけないことたくさんあるから大丈夫だよ! むしろ五人分も本当にありがとう」
「ウフ。アタシの服をあなたたちが着てくれるなんて夢みたいだわ!」
「上映会はいいんだけどさ、撮映写機で誰が撮るの? ボクたちが交代交代で撮る?」
「うーん、確かに。だれか“カメラマン“がいるといいんだけど……」
そんな話をしていると、一人の男子生徒が俺たちの方に駆け寄ってきた。
ところどころ煤や油にまみれた作業服みたいなのを着た男の子。
長い前髪を左右に分け、これまた長い髪と一緒に後ろで一つに結いている。
暗い紫色をした髪の毛の下で、明るくて真ん丸な紫の瞳がミュリエラを見ていた。
「キミ! 今、撮映写機って言いましたか?」
「へっ? 言ったけど……それが何?」
「も、もしかして、撮映写機、持ってるんですか?」
「今は持ってないよ? 家にあるけど」
「神よ、感謝します! 私はリューシード、その、その撮映写機、見せてはくれないでしょうか! あわよくば、弄らせてはくれないでしょうか!」
「あっ、なんかこの感じリンちゃんの時を思い出す……!」
ミュリエラの言葉に、俺も頷く。
この流れは知ってるぞ、カメラマンゲットの気配!
「なぁ、リューシード、もし撮映写機使ってもいいって言ったら、どうする?」
「ほはぁっ!? つつつ、使ってもいい!? ぜ、ぜぜぜ、是非ともお願いしたいです! 何でもします!」
「よし、契約書交わそうぜ! 言質取るだけじゃ足りないからな! 役所だ役所!」
エヴァンスはリューシードの腕を引っ掴み、ズルズルと引き摺って学院を後にした。
ミュリエラが慌ててその後を追い掛ける。
「ちょっと! ボクと魔道具も必要でしょ!」
コーエリンが説明してくれたところによると、正式な書面と魔法を使用しての契約書は資格を持った人間を介さないと意味をなさないらしく、仲介人を求めて役所に行ったんだそうだ。
撮映写機はめちゃくちゃ貴重で高額だから、持ち逃げされたり、壊されたりしないように魔法を絡めた契約書で縛らないと危ないらしい。
そういう貴重だったり高級だけど、日常的に使わないといけないような魔道具には、たいてい持ち主以外が触ると何かが起こるような契約が結ばれているんだそうだ。
あの家の魔道具に勝手に触らないように言っていたのは、そういうことだったのだと納得する。
契約者が口頭で許可するだけで使えるようになる物もあれば、別の契約書で上書きしないと触ることすらできない物など様々らしい。
撮映写機は、契約書を上書きしないといけないタイプなのだろう。
俺たちはコーエリンと別れ、(オリバーを背負って)先に家に帰った。
俺が名乗りポーズを考えている間にシュルツは夕ご飯の支度をしていて、何だか日曜日の夕方みたいだった。
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