オマケ~2月14日の拷問

 アタシ、鵜沼仁美うぬまひとみ、人狼族だ。

 姿形は人間にもなれるし、完全な狼にもなれる。

 どっちが本当の姿かと言われるとちょっと困る。油断していると一部分だけ人間であったり、狼であったり――ともかく、アタシには難しい。


 難しい話は、他にもあって今日、2月14日もそうだ。


 バレンタインデイ。

 お菓子会社の陰謀で、人間同士でチョコレイトなんてものを交換しあうとか……

 あんな毒物、よく食べられるものだ。


 テオブロマ・カカオ神様のたべもの


 というそうだが、アタシら人狼族。その他、動物系の人種にとっては毒でしかない。そんなものを、甘いお菓子として食べている人間を、アタシは羨ましいともなんとも思わない。


 動物系の人種の間で、真似事だけはしよう!


 と、いつの間にか異種族共学化1期生中で話がついていた。だからといって、うちらの間で、人間と同じ事をするのはどうなんだろう。いちいち人間と同じ事をしなくてもいいんじゃないか? しかも毒のチョコレイトを交換しあうなんて――


 そんな時、隣のクラスの猫耳族が、


「煮干しで、よろしいいんじゃないでしょうか?」


 いつもムカつく女子だが、たまにはいいことも言う。

 2月14日は、煮干しの日だ。

 里でも、チョコレイトが毒だと知らない時、親にせがんだことがあった。が、『煮干しの日』だと、煮干しの袋詰めを渡された。

 いいことを考えついたので、頭を撫でてやることにした。

 まあ、逃げるので、ヘッドロックして、いつも気にしているあいつの髪の毛をグチャグチャにしてやった。

 でだ。動物系の種族で、煮干しを渡すことになったのだ。

 しかし、袋のまま渡すのはさすがにどうか? と言い出したのがいた――耳長族だったか。


 それで、デコレーションだの飾り立てすることになった……はずだ!


 それが当日、通学途中になって、


「これはアナタにですのよ!」


 と、猫耳族が渡してきた紙袋。箱にラッピングしてある。リボンも巻いて……って、この臭い! チョコレイトではないか!?


「おいッ!」


 気が付いた時には、あいつの姿はなかった。

 あの猫やろう。逃げ足だけは早いし、壁の上を走って逃げるな!


 ――なんでこんなもの渡すんだよ。


 チョコレイトなんて食べられるわけないだろ!

 でも、食べ物は大事にしろと、お婆ちゃんにいわれているし……そうか、人間に喰わせればいいか!

 でも、待てよ。誰にやるっていうのが、問題にならないか?

 バレンタインデイなんて、こっちが渡すと、色々と問題になるだろ?


 適任者は……あいつしかいないか――


 イマス・アサヒ。


 でも、あいつ……絶対、バカだから、変な気おこさないか?

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沈黙に積雪~ハッピーバレインタイン? 大月クマ @smurakam1978

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