第27話「悪には悪の矜持があるっ!」


 ◇ ◇ ◇


「で、どうするの?」

「……どうすっかなぁ」

「クココァァ」

「ノ、ノープランなの!?」

 マリィちゃんから逃げ出した俺達は、曙が昇る砂漠を東進中である。

 国境までは遠く、一面砂と岩盤だけ……二時間はかかるだろう。

 背後からは追手。肩には謎の人型怪獣。中々愉快な状況だった。

 そんな人型怪獣は今、鬼気迫る表情のマリィちゃんを見て戦々恐々している。

「いやどうしろってんだよ?」

「ぅ、うーん」

 俺達を追うマリィちゃんのグリフォンは、地上二十メートル程を飛んでいる。

 頑張れば攻撃だって、届かない事は無い。

 だが機動力に差がある以上、当たるとは思えなかった。

 それどころか無理に攻撃すれば、隙を見せる事になるだろう。

「じゃぁ、このまま逃げ続ける?」

「そうしたいがぁ……あの様子じゃ国境越えても来そうだなぁ」

「じゃぁどっかで隠れるとか……」

「そういう訳にも行かねぇだろ」

 このまま走り続ける事は出来る。

 スタミナ勝負なら、ナナマキさんの圧勝だろう。

 だがその前に、ガキの体力が保つか分からん。

 それなら余裕のある内に、マリィちゃんの対処に専念した方が良い。

「……」

「ギュキキ……」

「大丈夫?」

「大丈夫に決まってんだろ。クソッ」

 二人が俺の様子に、不安そうに問いかける。

 どうしたものか。いやどうしたも、こうしたも無い。

 俺はこの一党の指針を示す男だ。ドカっと構えろ……。

 心の中に燻る未練を振り切る様に、俺は首を振って呟く。

「マリィを潰す。態と隙を誘って殺すぞ」

「えっ」

「……クココ」

「あん? ナナマキさん。どうしたのさ」

「シュギャ、カカカァ」

「いや、そりゃぁそうだけど」

「えっと……何て?」

「ナナマキさんは、生かすべきだって……でもよぉ」

 俺は殺しに来た相手を、基本的に殺す事にしている。

 勿論友達や気に入った奴は例外だが、手に負えない時は殺す。

 理由は簡単で、人の人生を踏み躙ってきた俺には敵が多いからだ。

 弱みを見せるのは良い。だが甘さを見せる訳には行かない。

 その所為で何度も何度も何度も何度も、人間共に辛辣を嘗めさせられて来た。

 実際に今でも情報不足な奴らは、俺がライダーには甘い筈だと送り込んでくるからその判断は間違っていない。

「良いじゃん。人を殺さない方が恨まれないよ」

「うっせぇ。そう簡単な話じゃねぇんだよ」

 襲撃者を見逃す度に、苦言を呈したのはナナマキさんである。

 その彼女がなんで……って言う訳にも行かねぇよな。

 俺の為だ。マリィちゃんを殺したく無い、俺の為に言っているんだ。

 俺はナナマキさんの嫌がる事をしない為に、殺すって言ったのに……ったく。

「良いのか?」

「カカカカッ」

「そうか……ありがとう」

「ちなみに女だから、殺したくないの?」

「まぁその認識で、間違っちゃいねぇ」

「……サイッテェェ」

 一党の多数決の結果、生かす事に決定!

 そうと決まれば、後は殺さない程度にぶちのめすだけだ。

 まぁ攻撃方法が無いんだが……。

「ギチチチチッ!」

「あいよぉっ!」

「え……うわっ!?」

 ナナマキさんのが飛び跳ねる様にして、半円を描く様に進路を変える。

 直後、マントと肌を撫でる突風が吹き込む。

 視界の片隅には、突風に負けない速度で巨体が突出し砂を抉った。

 犯人は減速する事も無く、曲線を描いて眼前から上空へ消える。

 俺は遠ざかる巨体を見上げて、喝采の声をあげた。

「あんにゃろうっ! 良い腕してやがるぜっ」

 背後から迷いの無いダイブ。しかもグリフォンの前脚で、砂を掴んでいた。

 高度を後、半歩分も下降していたら自爆していただろう。 

 それを……涼しい顔でっ!

「さぁって、どう攻略してやろうかね…・・」

「ねぇ、リージアは飛び道具とか無いの?」

「飛び道具ぅ~?」

「銃とか……マリーさんみたいな槍は?」

 手綱を左手で握りながら、右手で耳の穴をかっぽじる。

 ふっと垢を吐息で飛ばすと、白眼をむいて言った。

「ライダーが武器持って、どうすんだよ」

「え……いや、持ってないのっ!?」

「大型怪獣乗りのライダーが武器持つなんて、ダセェだろ」

 鉈位は便利だから、腰に吊ってる時もあるけどな。

 だが大抵の武器は嫌いだし意味が無く、素直に殴った方が強い。

 むしろワンアクション遅れる分、武器はハンデにしかならなかった。

「えぇ~……じゃぁ何か考えは」

「無ぇよ~~。つーか俺に難しい事を考えさせんな。馬鹿なんだぞ」

 どうすっかなぁ……ぶっ殺すだけなら、難しくは無いんだが。

 なるべく傷つけないと決めた以上、そうも行かない。

 俺は今までの戦闘経験を思い返して、首を捻って考える。

 終いにはヒントになるモノは無いかと、周囲の砂漠を見渡した。

 地表に顔を出している岩石が多いとはいえ、まだまだ砂地の方が多い。

 遠くに岩山も見えるが、飛行の出来る怪獣の弱みにはならないだろう。

「うぅ~む」

「ねぇ……」

 俺が悩んでいると、肩に担いでいたガキが耳元で呟く。

 後ろを眺めているガキの顔は見えないが、どうした?

「なんで怪獣って飛んでるの?」

「あん? そりゃぁ翼で風を受けて滑空したり、上昇気流に乗って……」

「魔法とかじゃ、無いんだ?」

「魔法ぉ~? んなの無ぇよ。大型怪獣が飛べる理由は分かってねぇけどな」

「……じゃぁなんで、グリフォンは飛んでるのっ!?」

「あん?」

 ガキが声を荒立てる意図が分からず、困惑しながら答えた。

 そんなの動物と、大して変わらねぇからだと。

「体が軽い体だろ? あの大きさに比べて体重は相当に軽い筈だぜ」

「ライダーを載せててもっ!?」

「いやライダーは、契約の影響で体が軽く……」

 そこまで話して俺は、はっとした。

 怪獣やライダーの体内からのみ、見つかる元素があるという。

 それが怪獣やライダーを、あらゆる生物から超越させる。

 グリフォン等の飛行する怪獣ならば、軽くて丈夫な元素で肉体を構成している訳だ。 つまり……。

「おい、ガキッ」

「なにっ!」

「俺に命を預けられるか?」

「え? 急にどうしたの……?」

「お前を女扱いしねぇで、今からお前の命を預かって良いかって言ってるんだよ」

「……何するの?」

「俺がナナマキさんにカッ飛ばされて、人間砲弾になる」

 俺がグリフォンに近づければ、一気に話は簡単になる。

 普通の人間よりも体重が軽い、中型怪獣乗りなんて俺の敵では無い。

 問題はソレに失敗した時だった。

 ナナマキさん一人では、ガキを守る事は難しいだろう。

「やだ……っ」

「ぁ、止めろ! 暴れんなッ!」

 だがガキは俺の提案を聞くと、バタバタと暴れて肩から脱出する。

 そのままガキは俺に抱きつく様に一人で立つと、俺を見上げてきた。

 ガキの前髪が風に揺れて、その瞳を露わになる。

 くりくりしたつぶらな瞳は……成程、覚悟のある目だった。

「ソレ、リージアが危ないんでしょ? ナナマキさん」

「ギャカカカッ」

「ちょ、ナナマキさんまで……しょうがないだろ。それっきゃ無ぇ」

「いいや、もう一個あるよ」

 ガキがニッと笑って、その薄い胸に手をあてて頷く。

 続く言葉に、俺は嫌な予感がした。

「ボクが飛ぶよ。こう見えて、リージアよりも力も強いんだから」

「……あのなぁ」

「一緒に行くんでしょ? なら手伝わせてよ……ボクだって役に立ちたいんだ」

 確かにそっちの方が断然楽だ。

 グリフォンへの人間大砲がしくじっても、俺がナナマキさんに騎乗していれば空中でガキを拾える。

「……」

 俺とガキの視線が交わり、絡まり合うと互いの心情を悟り合った。

 ガキの瞳は揺れていない。

 コイツが考えているのは自身の保身ではなく、俺とナナマキさんの事だけだ。

 お前……仲間になりたいのか?

 お客様じゃなくて俺達の役に立つ事で……認めて欲しいんだな?








 ふぅん。

「良いじゃねぇか。そういうの好きだぜ?」

「……うんっ!」

「だがお前だけに負担はかけさせねぇ……やるなら三人でだ」

 俺はガキの頭をくしゃくしゃと撫で回すと、最も勝率の高い策を提案する。

 その策を聞いたガキは、目をぎょっと見開いて冷や汗を流した。


 ◇ ◇ ◇


「良いか、ガキッ。何も考えなくて良いっ!! 奴らを掴む事だけ考えろ!!」

「わ、分かったっ!」

「失敗したら、舌を噛まねぇ事だけ気を付けろよ」

 俺達は逃げるのを止め、迫る来るマリィちゃんと相対した。

 華奢な怪獣ベニカはと言うと……ナナマキさんの剣尾上にへばり付き、顔を強ばらせて指示を待っている。

 すぐに人間大砲を放たないのには、理由があった。

 俺とガキが離れた事に警戒したマリィちゃんが、近づいて来ないのだ。

「……まだだ。グリフォンもずっとは飛べない」

 遠くに着陸しようとするなら、また追いかけっこを続ける。

 ガキもあの体勢のままなら、気力体力も回復するから逃げ切れるだろう。

 つまりマリィちゃんも、いつかは勝負を仕掛けなければ行けない。

 俺達は間合いを計りながら、互いの集中力を削り始めた。

 怪獣同士ではなく、ライダー同士の威嚇合戦である。

「良い加減、諦めてE2連合に来なさいっ! 寛大な皇帝陛下に頭を垂れて、許しを請いなさいよっ」

「うっせぇっ。俺は役人がでぇっ嫌いなんだっ!! ぶっちゃけ、法律とか秩序なんてどうでも良いっ!!」

「あ”ぁ”っ!?」

 昔はゆるふわ系だったマリィちゃんが、上空からスラムばりの民度で怒鳴ってくる。

 俺も負けじと、本場スラムの住民として中指を立てて返した。

 天を指刺す中指をクイクイと曲げて、盛大な挑発を決める。

「俺は俺の矜持の為に生きる悪党だっ。俺が守りたいと決めたルールを守る為に、誰だって踏み潰すっ……どんな弱者だろうが、聖者だろうがなっ!」

「外道が偉そうに、大声で言うなっ」

「いいかっ!! 自分が決めた道を裏切る奴を、外道って言うんだっ!」

 俺は悪党だ。善人なんかじゃないし、正義なんてどうでも良い。

 この身を縛るルールは、俺が愛した矜持と美学だけだからだっ。

 だからこそ俺は、自分で定めたルールだけは破らない様に努力するっ!

「悪には悪の矜持があるっ!」

「それがその元男を連れて、駆け落ちする事?」

「いいや違うね。男が仲間の信頼に、応える事さ」

 その言葉と同時に、俺とマリィの手綱が弾ける。

 グリフォンが矢の如く疾走し、ガキを捕まえんと動く。

 ナナマキさんの尻尾が周囲の砂と風を巻き込んで、ガキを跳ね上げたっ!

「むきゅっ!?」

 余りの勢いに、ガキの喉から空気が漏れる音がした。

 まるで投石機から飛ばされた様に、ガキは放射線状に飛んでいく。

「ちょぉっ!?」

 マリィちゃんの驚きと悲鳴が入れ混じった、鋭い声。

 宙をカッ飛ぶガキはグリフォンへと飛び込み、両手を広げて首にしがみつくっ!

「舐められたものね!」

 ……なんて上手くは行かない。

 グリフォンは翼を大きく広げると、滑空姿勢から高度をあげた。

 浮かび上がったグリフォンの前脚は、そのままガキの両肩を掴んで保持する。

「悪いけど、こっちもマジなのよ。色々背負っちゃってるからさぁ」

「うぶぶ……」

「にしても無茶するわね。タダの鷹でも、羊位なら掴んだまま飛べるのよ?」

 猛禽類の怪獣と契約したライダーの反射神経は、俺とは比べものにならない。

 人間大砲も発射してから見切るのも、余裕だったのだろう。

 そんな訳で我らが鉄砲玉は捕獲され、じたばたもがいている。

 マリィちゃんはその様子に呆れていた。

「離せぇっ!」

「離して良いの? 多分死ぬわよ」

「リージアが……助けてくれるって、言ってたっ!」

「はぁ、アンタ。リージアを信頼してんのね」

「……?」

「アイツはアンタが思ってるより……ぇっ」

 その言葉は、最後まで言わせない。

 猛烈な突風が、グリフォンの前方で砂嵐を生み出した。

 グリフォンの翼で捕らえていた気流は乱れ、その巨体を砂と乱気流が飲みこむ。

 物理法則に縛られる飛行は、あっけなく落下へと変わった。

「魔石化の解除っ!?」

 魔石化し、即座に解除されたナナマキさんが、俺の指示通りに尻尾から顕現する。

 吹き荒ぶ風を空に届かせる為、一本の刃の如くグリフォンに向かってっ!

「リージアァァッ!」

「あぁもうっ、無茶するっ!」

 ガキがグリフォンの両足に捕まって叫ぶ。

 マリィは舌打ちを弾くと、右手の親指に填まった透輝石の指輪を掲げた。

 吹き荒ぶ旋風に、小さな突風がぶつかり合うっ!

「アタシだってねぇっコイツと、死線を潜り抜けて来たのよっ!」

「うぷっ」

 乱気流が捕らえていた、グリフォンの巨体がカっ消える。

 落下するマリィちゃんが、ガキを背中から抱き留めて確保するのが見えた。

 と同時に、ナナマキさんの巨体が具現化する。

 その巨体の落下進路上には二人がいた。このままなら押し潰すだろう。

「~~~ッ!」

 マリィちゃんの指輪が再度、緑黄色の輝きを放つ。

 その光は旋風へと代わり、瞬時にグリフォンを最具現化した。

 最具現化には強いイメージと、互いを求める絆がいる……あの歳で見事なもんだ。

 だが困った事に、俺達には悪いニュースである。

 マリィちゃんと捕まったガキは、具現化したグリフォンの背に乗った。

 そのままひしめき合う節足の間を、羽が人の手から零れる様にすり抜ける!

 シザーズ・マニューバ。

 飛行出来る怪獣の、空中戦用騎乗技術の一つだ。

「リージアッ、出て来い! この子は確保したっ。出て来て一発ぶん殴らせろっ!」

 騎上のマリィちゃんが叫びながら、空中で急旋回を繰り返し螺旋を描いて前へ進む。

 航空機動戦の為に、綺麗だった髪を短髪にしたのだろうか?

 随分サマになってるな……俺を探して、殺す気か? おっかねぇなぁっ。

「居ない?」

「上だぜ、チック」

「リィッ――」

 ナナマキさんの尻尾が顕現すると同時に、彼女の背中を全力疾走した俺が飛び移る。

 獅子の後半身を持つグリフォンの背中は、思ったより広かった。

 その上でマリィちゃんが、ガキを羽交い締めにしている。

 更に俺がマリィちゃんの胸下に腕を差し込むと、羽交い締めにした。

「リージアっ」

「アンタぁっ!」

 お前らが呼んだんだろ。ったくよぉ~~っ。

 だが感動の再会に喜ぶ状況でも無い。

「お前ら、舌を噛むなよ」

 俺はマリィちゃんの背中に体重をかけ、左手でケツを撫でる様にして右方へ体重を寄せる。

 グリフォンが体勢を崩し始めたっ!

 そりゃそうだ……三人載せてるのでさえ限界だったろう。

 その上。重心が右方に傾けられたら一発である。

「きゃぁああああっ!?」

「えぇェエエエッ!!」

「HUUYY、HAAAAAAAA!!!!」

 急降下。グリフォンという巨体が二十メートルから真っ直ぐに墜ちる。

 翼が風を切り、俺達の全身は猛烈な風圧に押された。

 マントが吹き荒ぶ風に後方へと追いやられ、ライダーゴーグルを着けて無いガキとマリィちゃんには辛い状況だろうが、俺だけは違う。

 マリィちゃんが手放した手綱を握る。

 俺の愛獣では無い上、敵の言う事なんて聞きたくは無いだろう。

 だが今は別だ。お前のライダーの命も乗ってる……なぁグリフォン。

「キュピィイッ」

「分かってるさ」

 一回だけ。数秒だけ、一緒に飛ぼう。

 あぁ、翼を広げるな。痛めちまうからな。

 体を地表に垂直にな。そうそう。脚を真っ直ぐ伸ばすなよ。折れちまうぞ。

 俺が手綱越しに、グリフォンと対話する。

 気高いグリフォンだな。だからこそ……行ける。

「まばたきしたら、死ぬぜぇえええっ!」

「キュゥゥウッ!」

 翼を折り畳ませ、弾丸の様に丸くなったグリフォンが後半身を下に真っ直ぐ降りる。

 重力に引っ張られる俺達三人が、徐々に背中から剥がされて行く。

「し、死ぬぅぅってぇぇっ!」

「馬鹿ぁぁあああっ!?」

「しがみつくなっ! バッキャロウッ!」

 俺はグリフォンにしがみつく二人を引き剥がして、グリフォンの背中を蹴る!

 地表までは八メートルって所か。

 グリフォンが視界の隅で翼を広げて、曲線を描く様に速度を落とすのが見えた。

 対して俺達は、真っ直ぐに落ちていく。

 両手に一人ずつ抱えた俺は、二人を抱き留めて丸くなった。

「歯を噛みしめておけよぉおおおおおおっ、HUUUUUUッ!」

 一瞬だった。地面まで二秒もかからなかったろう。

 真っ直ぐ降りたらダメだ。脚が潰れちまう。

 斜めに……斜め横に落ちるっ!

 地表へ脚を着く。車輪の様に斜めへ。

 地表へ膝が着く。側転の様に右前へ。

 胴体と腕が着く。車輪の様に真横へ。

 首だけは鬼門だ……めり込むだけで死ぬっ!

 俺は全身で勢いを殺しながら、三回転の末に回転を止める事が出来た。

 視界は舞い上がった砂塵で見えないが……俺の懐に居る二人は無事な様だ。

「生きてるかぁ? ガキィ、マリィちゃん」

「一応……」

「うぅ」

 マリィちゃんは生きてるな……衝撃で気絶してるか?

 グリフォンとの契約で人間よりも頑丈ではあるが、とにかく軽いからな。

 軽い衝撃でも内蔵は揺らされたのだろう。無事で何より。

 砂塵が落ち着くまで、待つと……ガキも俺も砂まみれになっていた。

 酷い顔だな、俺達。

「賭けに勝ったな」

「うん、おめでとう……リージア」

「ありがとう……ベニカ。お前のお陰だ」

 ウィ。俺はそう呟いて、握り拳をあげた

 ガキもそれに釣られて、右手をあげる。

 ハイタッチ。仲間への感謝の印を、ベニカと交わした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る