第2話 現状把握

「奏さん、大丈夫ですか?!」


「優來ちゃん?大丈夫だよ~」


「いや、絶対に大丈夫じゃないだろ!!」


 会社の休憩室に向かうと今にも倒れそう....というか倒れている奏さんがいた。

 今の状況は『Rebellion』の社員全員が俺の炎上の件で対応に追われている。

 そして最後の頼みの綱である奏さんは休憩室でぶっ倒れているから、奏さんは頼りにはならない....

 あれ?これ普通にやばくない????


「姉貴、いるか?」


「モチノロン!!奏の開放は私に任せて頂戴、ゆーちゃんはボイチェン切っても切らなくてもいいから社員の指揮をお願いね」


「わかった」


 少し心配だが、奏さんの事を姉貴に任せて俺は奏さんの代わりにRebellionの社員の指揮を執りに行く事にする。


「皆さんいいですか!!!俺は神楽坂優來です奏さんと姉貴.....神楽坂優花にこの場の指揮を任されましたんでよろしくお願いします!!」


 俺が大声でそんなことを話すと大半の、俺とあったことのある社員は何が起こったのか理解できていたが、新人など一部は理解できていない様子だ。

 勿論そんな社員にかまっている暇などはないので俺はそれを無視する。

 指揮と言ってもRebellionの社員は基本優秀だから俺が奏さんの言葉を伝えるだけで、十分だ。


「指揮と言っても俺は得に何もできませんが、奏さんからの伝言です『体調を崩さない程度に、頑張りなさい!』とのことです」


 俺がその言葉を伝えると、社員は全員やる気に満ち溢れたように仕事を再開する。

 そして俺は、顔見知りの1人である、奏さんの妹に声をかける。


つむぐさん、大丈夫ですか?」


「優來?優來だよね?!手伝ってよ....」


「何で姉妹揃って同じことを言うんだよ....」


 奏さんの妹である紡さんは俺の大学の先輩でもある。

 サークルは違うが、奏さん通じで知り合う事ができ、何故か大学でも俺に突っかかってきていた。

 

「別にいいでしょ~、ってか全ての元凶は....」


「俺を男性ライバーにした姉貴がすべての原因、攻めるなら姉貴にしろ」


「ア、ハイ」


 俺のせいと言ってきそうだったので、食い気味に否定をして姉貴のせいにした。

 勿論原因の半分くらいは姉貴のせいなのだが、もう半分は面白そうと姉貴の話に乗って男性ライバーとしてデビューした俺にもあるが、姉貴にすべて擦り付ける。

 姉貴もスペックはかなり高い方だし、何とかしてくれるでしょ。


「それで?俺は何を手伝えばいいんだ?」


「声出しはまずアウトでしょ?そしたらネット掲示板への対応かな?」


「了解、パソコン一台借りる」


 その一言を紡さんに掛けるとワイヤレスイヤホンを取り出して適当なボカロ曲を流しながら作業に集中することにした。

 俺はボカロPとしても活動しているほどにはボカロ好きなので、ボカロを聞いているとなぜか超集中する事が出来る。

 

「優來は、やっぱりすごいね....」


 イヤホン越しに紡さんのそんな声が聞こえてくるがそれに反応する暇などないので、俺は無視して作業を進める。

 イイッターの確認に、匿名掲示板に建てられている俺、潺紫水に関するアンチスレを見つけ、そして削除するように管理人に求める。

 Rebellionの公式アカウントを今の俺は使えるので管理人たちも削除依頼にすぐさま対応をしてくれた。

 しかしイイッターはそう簡単にも行かなかった。


「やっぱ、こっちは少しむずいか.....」


 イイッターは匿名掲示板とは違い、数がかなり多いので全てに対応をすることは俺一人ではできない。

 勿論俺も普通の人よりかはコンピューターは使い慣れていると思うので対応できているが、それよりも早く俺に関する色々な事が増えていくので、対応が出来ていけていない。

 ほかの社員さんも俺と同様に頑張って対応しているみたいだが、イイッターまでには手が出せていないらしく、ほぼほぼ手を付けられていなかった。


「紡さん、少しこっち手伝ってください!」


「任せて、イイッターの対応すればいいんでしょ?」


「理解が早くて助かります、俺はネット掲示板のスレにちょっと殴り込み入れてくるんで」


「え?」


 紡さんを一度呼ぶためにイヤホンを外したが、用件だけを伝えると俺はッ再びイヤホンを付けて集中をする。

 そして適当に見つけた匿名掲示板に殴り込みに行く、何やかんやで俺もこの炎上を楽しんでしまっているのだろう.....






――――――――――――――――――――


【死ね】 潺紫水のアンチスレ 【VTuber】


789:名無しのRebellionファン

 お前らさ、紫水の事を死ね死ねとか言ってるけど他に言い方とかないのか?


790:名無しのRebellionファン

 >>789

 紫水の擁護とは珍しいな


791:名無しのRebellionファン

 >>789

 そうか、まずはお前が死ね、そしたら話を聞いてもやらんぞww


792:名無しのRebellionファン

 >>789

 紫水と思えが死ねば全て解決だぞ?


793:名無しのRebellionファン

 >>789

 紫水は擁護のしようがない、お前は精神科を受診することを進めるぞwww


794:名無しのRebellionファン

 紫水って何が悪いんだ?そもそもなんでRebellionが女性ライバーしか雇わないって勘違いしてるんだ?今までが偶然の重なりで女性ライバーしかいなかっただけって公式が言ってるよな?紫水だって実際に社長が直接スカウトしたんだろ?何故お前らはそれに異議を立てられるんだ?


795:名無しのRebellionファン

 >>794

 無意味な長文乙ww

 紫水と魂のやつは存在自体がダメなんだよwww


796:名無しのRebellionファン

 >>793

 知らねぇよww

 俺らが死んでと願ってるから紫水は死ぬんだよwww


――――――――――――――――――――






「まじで民度が低いな....」


 少し匿名掲示板を使ってみたが、むかつくほどにこいつらの民度は低かった。

 勿論、全部の匿名掲示板がこんな感じではないと理解できているけど、それでも匿名掲示板にはいい印象を持てない。


「とりま炎上鎮火に向けて頑張りますか....」


 一度腕を伸ばした俺は再びパソコンの画面に目を向けて、片っ端から紫水のアンチスレを見つけ出していく.....

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