春子の日々

番外編 春子さんワンショット １

　春子の飼いうさぎの「メネス」。

　とある国の言葉で「月」を意味する名前の彼は、その名の通り戸籍上は月の住人である。

　住所は春子宅ではあるが、本籍の地名は月面の「雨の海縁（ふち）アペニン山脈北部ハドリー山ハドリー谷３丁目11248792番地」で、実家はハドリー谷自治組合３班の副書記を代々務めているちょっとした名家、らしい。

　歴史ある旧家の一員らしく、中秋の名月（９月の祭り）の時期になると、メネスは務めのために実家に帰っている。

　これがなかなかにハードらしく、ひたすら息を止めた状態でやり続けなければならないため、ローテーションを組み交代交代（こうたいごうたい）で番に当たるそうだ。

　まあ、雨の海の中で餅つきを続けるのであれば、そうせざるを得まい。

　蛇足ではあるが、月桂ノ重陽祭（もちつき）大運営本部CEOは帝釈天さまで、昔はモールス信号（トンツー）で指示出しだったのがオンライン会議の普及でずいぶん楽になったと聞く。

　もっとも、だからといって須弥山で溜めに溜めた各種ゲームを踏破しまくる大会に興じるのはどうかと思う。

　それはさておき、海の中でも呼吸が出来るように、カルマニ（昔のＳＦで）ョール製（出てくる）大気圧潜水服（かっこいいヤツ）（オリジナル1882年・レプリカ2020年製造）を今度プレゼントしようと春子は思っている。