第44話 エロい女たち

 予約していたホテルに到着すると、


「「「ぐへ~……」」」


 3バカはすぐベッドに倒れ込んだ。


「お前ら、海でハシャぎ過ぎたか~?」


 俺がからかうように言うと、


「まあ、ハシャぎ過ぎたと言うか……ハハハ」


 明彦が乾いた笑い声を漏らす。


 よく意味が分からないけど……


「うぃーっす、チェリーボーイズ!」


 部屋のドアが勢い良く開いて、あかりの声が響く。


「あかりは元気いっぱいだな~、声デカいし」


「背とおっぱいは小さいのにね……って、誰がやねん!」


「1人ノリツッコミか」


 俺は笑って言う。


「お腹空いたし、ごはん行こうよ~。ホテルの中に、レストランあるみたいだし」


「ああ、でもこいつら、バタンキューしてるから」


「んっ? ああ……いっぱい、楽しんだもんね」


 ふと、あかりが一瞬だけ、何かエロい顔したような気が……


「あれ、千冬は?」


「ちーちゃんは、シャワー。ちなみに、あたしはもう終わったよ」


「早いな」


「うん、あまり洗うところないし……って、誰が平坦ボディだよ!」


「だから、1人ノリツッコミとか(笑)」


「てかさー、レストラン混むと嫌だから、先に行って場所取りしていない?」


「ああ、そうだな」


「ちーちゃんには、あたしから声かけておくし」


「頼むわ」




      ◇




 そのレストランは、かなり良い雰囲気だ。


 美しいオーシャンビュー。


「でも、こんな良いホテルに泊まれるなんて、本当にラッキーだよな」


「うん、ちーちゃんのおかげだね。お金持ちのお嬢さんだし。そのコネだよね?」


「ああ。普通、高校生のお泊りって言ったら、親は微妙な感じだろうけど……由里子さん……千冬の母さんが、俺のことを気に入ってくれているから」


「ゆうたん、まさか……母娘丼おやこどんしちゃったの?」


「いや、まだしてねーよ」


「何だ……って、まだとか、後々する予定はあるんかーい」


「ハハハ、あかりはツッコミが上手いな~。俺もどんどんボケたくなるよ」


「そしたら、介護してあげるね」


「いや、そこまでボケねーし」


「イエイ、ツッコミチェンジ♪」


「でも、あかりとの会話は楽しいな~。漫才とかやりたいわ~」


「ああ、やっちゃう? 夫婦漫才」


「夫婦かぁ~……でも、俺の嫁は千冬だけだし」


 俺が言うと、あかりは口をつぐむ。


「どした?」


「……今日、別行動の時、ちーちゃんとエッチなことしていた?」


「えっ?」


 いつもなら、ケロッと答えるかもしれないけど。


 何だかあかりの声のトーンがいつもよりふと下がって。


 俺は珍しく、答えに困ってしまう。


「……ちなみに、あたしはシたよ」


「へっ?」


「チェリーボーイズたちと」


「それって……あの3バカと?」


「うん。ちなみに、今回が初めてじゃないよ」


「じゃあ、いつから?」


「夏休みのちょっと前から」


「へぇ~」


「あれ? 思ったほど、驚かないね」


「まあ、あかりだし」


「ちょっと、何それ」


「でも、これで分かったわ。あかりがちょっと、エロく見えた理由」


「えっ、本当に? じゃあ、ちーちゃんから乗り換えちゃう?」


「いや、それはないけど」


「ちっ」


 あかりは舌を打つ。


「どうせ、ゆうたんは性欲魔人だから、ちーちゃんみたいなドスケベボディじゃないと、満足できないんでしょ?」


「まあ、否定はしないけど」


「うぅ、ぼんきゅぼんに生まれたかった……」


「でも、体だけじゃなくて、あいつの心に惚れているから」


「あっ……」


「んっ?」


 振り向くと、背後に千冬がいた。


「おう、千冬。何か濡れた髪がエロいな」


 と、いつもみたいに軽口を叩く。


 怒られるかと思ったけど……


「……あっそ」


 ふい、と視線を逸らすだけで、それ以上は何も言わない。


「どうした?」


「別に何でもないわよ」


 千冬は俺のとなりに座った。


「うわ~、変態カップルが揃っちゃった」


「ちょっと、あかりやめてちょうだい。変態は勇太だけよ」


「でも、ちーちゃんもゆうたんと、お外で楽しんだでしょ?」


「ぶふっ……」


 千冬は水を飲んで噴き出す。


「ゲホッ、ゴホッ……」


「ふっ、ざまぁ」


「な、何を言って……」


「千冬、大丈夫か?」


 俺は背中をさすってやる。


「あ、ありがとう……」


 千冬は照れたように顔をうつむける。


「……あーあ、何かムカつく」


「あかり?」


「ううん、何でもないよ。いっぱい運動したから、いっぱい食べよ?」


「何だかいちいち、含みのある言い方ね」


「別に~?」


 あかりはひゅーひゅーと口笛を吹く。


 千冬は少し苛立った様子。


 俺はそんな2人を微笑ましく見守る。




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