第42話 サマータイム

 ぎんぎらりんの夏模様だ。


「あー、早く千冬のドスケベ水着みてえええええええぇ!」


「うるさいわよ!」


 今日も俺たちカップルは熱々です♪


 駅前で人がたくさんいるけど、気にしません。


「よー、バカップル。元気かよ?」


「おっ、明彦あきひこぉ~」


 いつもの3バカがやって来た。


「あれ? お前らしばらく見ない内に何か……」


「やべ、もしかして、やつれてる?」


「いや、むしろ……若くなった?」


「えっ?」


「特に隆志たかしとか10倍くらい若返った?」


「ふっ、それほどでもないさ」


 奴はキメ顔で言う。


「ファッキュキュキュキュキュッ♪」


「三郎も何かご機嫌だし」


「まあ、ちょっと色々な」


「何だよ~、お前らもちゃんと夏休みを満喫してるなぁ~」


 とか笑っていると、


「みんな、おまた~♪」


 明るい笑顔の天使さまがやって来た。


 いや、あかりなんだけど。


 白いワンピースをふわふわとなびかせて、ニコッと笑う。


「お前、相変わらずあざといな~」


 俺は笑いながら言う。


「だって、こうでもしないと、おたくのドスケベ彼女さんに負けちゃうんだもん」


「だ、誰がドスケベよ!」


「あ、ごめん、ごめん。ドスケベなのは体の方だったね☆」


「あかり、ビンタするわよ」


「まあまあ、落ち着けって」


 キャットファイトを始めそうな女子2人をたしなめる。


「あ、あかりちゃん、おはよう」


 明彦が少し照れたように言う。


「おはようにゃん♪」


「グハッ……可愛すぎる」


「てか、アニオタの明彦にとって、あかりってたまらない存在だろ?」


「ま、まあ……」


 明彦はどこか歯切れの悪い返事をする。


勇太ゆうた、そろそろ電車の時間よ」


「あ、いっけね。野郎ども、行こうぜ」


「あいよ、サイコパスリーダー」


「その通りだけど、仮にも私の彼氏だから、その呼び方は……」


「ああ、良いの、良いの。気に入ってるし」


「はぁ~、まともな感性を養って欲しいわ」


「でも千冬、エッチの時にちょっと特殊なことすると、喜ぶじゃん」


「えっ、その話もっとkwsk!」


「バカ勇太! あと何であかりが前のめりなのよ!」


「だって、色々と参考にしたいじゃ~ん?」


「べ、別に、他の人の参考になるほど、経験している訳じゃないし……」


「ちーちゃん……ゆうたんにしっかりとメスにされちゃったんだね」


「まあな☆」


「2人ともぶち殺すわよ」




      ◇




 潮の香りと共に、太陽の日差しもグッと増すようだ。


「やっぱり、海は良いな~」


「若返る」


「イエエエエェイ!」


 3バカはご満悦の様子で言う。


「しかし、水着の女ってのは、どうしてこうも魅力がマシマシなんだろうな?」


「おい、勇太。お前もしかして、ナンパするつもりか?」


「いやいや、しないって。つーか、する必要もないだろ」


 その時、背後でザッと砂をかく音が聞こえた。


「ヘイ、そこのチェリーボーイズ♪」


 明るい呼び声に振り向くと、飛び切りの水着美女が2人いた。


 あかりは先ほどの白いワンピースから一転、攻撃的なピンク色の水着だ。


 ただし、ビキニタイプではなく、胸のあたりがフワフワというか、ヒラヒラしているタイプ。


 とりあえず、全国のロリコンは一撃だろう。


「はうッ!?」


 俺の親友のアニオタロリコンくんこと、明彦も撃ち抜かれた。


「おー、あかり、やっぱあざといな~」


「もう~、ゆうたん。そこは素直に可愛いって言えないの~?」


「あはは、可愛い、可愛い。なっ、明彦?」


「えっ? あ、ああ……」


「ありがとう♪」


 あかりが笑顔で言うと、明彦は完全にハートブレイクした。


「おっ」


 ふととなりに目を向けると、


「これは想像以上に……ドスケベだ」


「ぶち殺すわよ」


 キッ、と睨み付ける我が彼女さまは、期待を裏切らない……いや、それ以上の極上ボディを披露してくれる。


 黒いビキニの破壊力がすごい。


 案の定、周りの男どもがチラ見し、ザワつきまくっている。


「ねえねえ、ちーちゃってば、すごいんだよ~。着替えの時、他の女子たちからも注目されまくって。あたしがおふざけでおっぱいご利益欲しくて揉み始めたら、他のみんなも揉み始めちゃって」


「な、何だと……」


「も、もう、恥ずかしいから言わないで!」


「おい、あかり。撮影してたか?」


「へへ、実はこっそりと」


「何ですって!?」


「ハウマッチ?」


「ちょっと」


「うーん、本当なら100万円くらいもらいたいけど……特別価格で1000円♡」


「はい、買った、買った~!」


「ふざけないでちょうだい!」


「てか冗談だから、撮影とかしてないし~」


「あかり、いい加減ひっぱたくわよ?」


「ひっぱたきたいのはこっちの方だよ。その主張が激し過ぎるデカ乳をさ~!」


「もうやだ、帰る」


 千冬は両腕で胸を隠して泣きごとを言う。


「そんなこと言うなよ」


 俺は彼女に手を差し伸べる。


「せっかく海に来たんだから。楽しい思い出、作ろうぜ?」


「勇太……」


「このままだと、夏の思い出はベッドの上だけだぞ?」


「ひとこと余計なのよ……」


 文句を垂れつつ、千冬は俺の手を握った。


「じゃあ、レッツ、サマータイム、だね♪」


「「「おおおおおおぉ!」」」


 あざとい天使さまと3バカは盛り上がり、ビーチへと駆け出す。


「じゃあ、俺たちはゆっくり行こうか」


「ええ」


「あまり走ると、千冬の乳揺れが心配だし」


「本当にひとこと余計なのよ!」




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