第41話 汗だくトーク

 何事も動機が不純だと怒られてしまう。


 俺も結果さえ残せば良いじゃん、なんて暴論を吐くつもりはない。


 けど、この動機は不純かもしれないけど、そんな汚れていないと思う。


「はぁ、はぁ……」


 汗だくになった彼女が、俺のベッドの上で悶えている。


 もちろん、俺も良い汗をかいた。


「俺さ、この1週間、オ◯禁していたんだ」


「……どうして?」


「千冬とのエッチ解禁で燃えるために決まってんだろ」


「変態」


「でも、ちゃんと合理的な理由もあるぞ。1週間のオ◯禁は、テストステロンの値を高めるから、効果的なんだって」


「効果的って……」


「やっぱ、男としては、たくましくありたいって言うか。千冬のでっかいのから飛び出すくらい、俺もでっかく……」


 ポカッ。


「……ド変態」


「とか言って、本当は嬉しいくせに」


「……あまり育ちすぎないでよ。痛いのは嫌だし」


「千冬はエロいな~」


 とからかうと、グーパンチが飛んできそうだったので、ここら辺にしておく。


「てかさ~、せっかくの夏休みだし、どこかに出掛けない?」


「ええ、そうね。宿題も終わっていることだし」


「海に行こうぜ、海に」


「海……じゃあ、水着を買わないと」


「あれ、持ってないの?」


「もう、しばらく行っていないし……昔のはちょっとキツいから」


「いや、ちょっとどころじゃないだろ」


「もう、あなたの首を絞めてやりたいわ」


「えっ、マジで? カモン、カモン!」


「興奮しないでちょうだい、変態!」


「シッ、千冬。いくら、家に誰もいないからって、近所に聞えちまうかも」


「うっ」


「でもまあ、もう手遅れだろうけど。エッチの最中、千冬は本当に元気が良くて……」


「……ねえ、鉛筆とコンパス、どっちが良い?」


「ハハハ、ヤンデレ、乙」


「……もうやだ、この男」


 千冬が可愛くメソメソしているそばで、


「う~ん、どうすっかなぁ。千冬と2人きりも良いけど……せっかくだし、大勢で行くのもアリだな」


「私、そんな大勢は……」


「ああ、大勢って言っても、俺のダチの3バカとそれからあかりくらいだよ、誘うのは」


「ま、まあ、そのメンバーなら……」


「ちょっと、連絡してみるわ」


 俺は手早くメッセを送信する。


「って言っても、あいつらそれぞれの趣味に没頭しちゃうからなぁ。きっと、ロクにまだ宿題も終わってなくて、断られるかも……いや、それはないか。千冬のドスケベ水着が拝める訳だし」


「あなた、自分の彼女を何だと思っているの?」


「えっ? 最高に可愛いやつ」


「…………ふん」


 千冬はぷくっと頬を膨らましてそっぽを向く。


 俺がニヤニヤしていると、


 ピロン♪


「おっ、はやっ」


 3バカから返信が来た。


『良いな、海。行く、行く~』


『たまには若人の遊びの興じるのも悪くないな』


『オーシャン、ビュッ!』


 何だか3人とも、ノリノリだ。


『てか、お前ら宿題はどんな感じだ?』


『もう終わったぞ~』


『同じく』


『ミートゥ!』


『えっ、マジで? お前ら、どうしたんだ?』


『いや、まあな。ムフフ……』


『あ、そうか。夏は色々とイベントがあるし、そのために前倒したのか?』


『まあ、そんなところだよ』


『そか。で、メンツは俺と千冬、お前らとあかりを誘ってんだけど、オーケー?』


『おけ』


『うむ』


『イエス』


『まあ、まだあかりから返事は来てないけど』


『大丈夫だよ』


『そうそう』


『ノープロブレム』


『何でお前らが分かるんだ?』


『あっ……わりっ、ちょっと』


 そこで、やつらとのやり取りは終了した。


「とりあえず、3バカは確保したな。あとは、あかりがオーケーしてくれると良いんだけど」


「ええ、そうね。さすがに、女子1人だけだと」


「安心しろ、千冬。海は危険がいっぱいだからな。俺たちが、ナイトになってやるよ」


「飢えた狼さんが何か言っているわね」


「いや、飢えてないよ。いっぱい出したのに、むしろ満足しているって言うか」


「この変態」




      ◇




 汗染みだらけのベッドに佇む。


「はぁ~、早く大人になりたいなぁ。そうすれば、ホテルで思い切りやれるのに」


「ごめんね、あかりちゃん。俺の部屋が狭くて」


「ううん、平気だよ。明彦くんの部屋、可愛いフィギュアがいっぱいだね~」


「う、うん。でも、あかりちゃんの方が、可愛いと言うか……」


「本当に? 嬉しい♪」


 素肌のまま、ぴとっと抱き付く。


「ひゃッ」


「どうしたの? 女の子みたいな声を出しちゃって」


「や、やわらかい……」


「ごめんね、小さくて。誰かさんみたいに、ドスケベボディなら良かったのに」


「そ、そんなことないよ。あかりちゃんは、今のままで最高だし」


「明彦くん、やさし~い」


 デレッとする。


「おい、俺たちもいるんだぞ」


「ファッ◯」


「ちっ、うるせーな」


「まあまあ、ケンカしないで」


 あかりはニコッと笑う。


「あたし、こう見えて強い子だから……3人とも満足するまで、頑張っちゃうよ」


「「「ずきゅん……」」」


 3バカはうっとりする。


「あ、でも待って。ゆうたんにお返事しないと」


 あかりはスマホを持つ。


「でも、ビックリしちゃうかな? あたしとみんなが、こんな関係になっているって、知ったら」


「どうだろうね? あいつ、サイコだから」


「ふふふ、そうだね」


 ポチポチッ。


「んっ、返信完了」


 あかりは微笑むと、口元をスマホで隠す。


「じゃあ、次はどんなふうにあそぼっか?」


 その愛らしさに、3バカはうっとりしたまま、うっかりトロけてしまう。


 あかりは変わらぬ笑顔のままだった。




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