第38話 天使か、それとも……?

 親友とは良いものだ。


 毎日、放課後に一緒にダベッているだけでも、すごく楽しい。


 けど、今は……


「……良いよなぁ、勇太のやつ」


 ツンツン頭のオタク、中野明彦なかのあきひこが言う。


「昼休み、あいつに聞かなきゃ良かったな……森崎さんとの、初エッチ話」


 明彦がため息まじりに言うと、


「……俺の専門は熟女だ」


 老け顔でエロマニアの小林隆志こばやしたかしが言う。


「だから、同級生の黒髪美人で巨乳の女とか……微塵みじんも興味は……ない」


 隆志が絞り出すような声で言うと、


「……ああ、その通りだ」


 ロンゲメガネのメタラーな竹本三郎たけもとさぶろうは言う。


「あんなお澄ましした、上品ぶった女……ファッ◯しがいがねえからな。興味ないゼ!」


 三郎はロンゲをなびかせた。


 しかし……


「「「………………はぁ」」」


 最後には、虚しくため息をこぼす。


「美人でFカップの彼女って、どうやって出来るんだろうな? しかもJK」


「いや、あれはもうFより大きいだろう。G、いや、H……さすがにIだったら、もうグラドルやれって話だ」


「ファッ◯、ファッ◯、ファッ◯……」


 また3人して、ため息をこぼし、肩を落とす。


「――ねえ、君たち」


「「「んッ?」」」


 背後から聞こえた声に、3人して振り向く。


「あっ……須藤すどうさん」


 小柄でショートヘアが愛らしい彼女は、ニコッと微笑む。


「もう、そんなよそよそしい。一緒にラーメンを食べた仲なんだから、あかりで良いよ~」


「あ、あかりちゃん……どうしたの?」


 明彦が、照れながら言う。


「3人とも、聞いた? ゆうたんとちーちゃんのこと」


「あっ……うん、まあ……」


「そっかぁ~……良いよね~、青春って感じで」


 あかりは若干、口を尖らせて言う。


「ちなみにだけど、3人って彼女はいる?」


「えっ? いや、いないよ……」


「右に同じく……」


「ファッ……きゅぅ」


「じゃあ、みんなして、童貞?」


「「「うっ……はい」」」


 コクリと頷く。


「そっか……じゃあさ……あたしと経験しちゃう?」


 ………………


「「「……はい?」」」


 ポカンとする3人に対して、あかりはまたニコッと笑う。


「ちーちゃんみたいに、美人で巨乳でもない、ロリ体型のあたしだけど……やっぱり、魅力ないかな?」


 潤んだその瞳に、3人の心臓が撃ち抜かれる。


「た、隆志は熟女好きだし、三郎は外人好きだけど、俺はアニオタでロリ好きだからさ……」


「本当に?」


「おい、明彦、勝手に決めつけるな」


「何だよ、隆志?」


「俺だってたまには……若いエキスを吸いたくなる」


「黙れ、おっさん」


「確かにスタイル抜群でドエロな外人女はたまらなくファッ◯したいが……」


「えへっ」


 ニコッ。


「……ふにゃっ」


「おい、三郎。ロックでメタルな生き様はどうした? お前そんなんじゃ、見た目通りのキモオタになっちまうぞ?」


「明彦、お前の方が活発でイケてる風だから、俺のメタラーなキャラを譲るよ」


「キャラとか言っちゃってるし! お前、あかりちゃんと仲良くなりたいだけだろうが!」


「仕方ないだろ、こんなに可愛いんだから!」


「それは分かっているよ!」


「お前ら、静かにしろ! 今、じっくりと観察中なんだ」


「おい、おっさん。制服を着ているから、ギリセーフだけど……いや、むしろアウトだな。犯罪風景だから、やめろ。おっさんとJKだなんて。ちゃんと同年代の男に譲っておけや」


「バカ野郎、俺だってまだ高校生だ」


「知ってるよ、バカ」


「ふっ、バカはバカ同士、バカバカ言っていろ」


「「ああぁん!?」」


 3人はとうとう、取っ組み合いのケンカを始めてしまう。


「待って、みんな!」


 けど、あかりの声でピタリと止まる。


「あたし、3人ともに言ったんだけど……意味わかる?」


「「「………………」」」


 またポカンと固まる3人を見て、あかりは口元でくすっと笑う。


「みんなで仲良くしよ?」


 あかりが小首をかしげて言うと、3人は一瞬にして溶けた。


「「「……はい」」」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る