第35話 しっかりマーキング済み

 ちゃぷ、と音がした。


「……ふぅ」


 今日は、本当に色々とあった。


 体育祭、その最中のアクシデント。


 スポーツブラがちぎれて、隠していた胸の揺れが露わになって……


 そして、彼にマーキングをされた。


 あれは、本当に……


「……変態」


 そう呟きつつ、千冬は自分の豊かなバストに目を落とす。


 白くきれいなその乳は、しかし赤みを帯びている部分があった。


 そう、彼に……勇太にマーキングをされた箇所だ。


 ぎゅっと、思い切り、掴まれた。


「最低よ、あの男は……」


 そう言いつつ、千冬は勇太の手形がついたその胸を、ジッと見つめる。


 大きいから、ぷかと湯船に浮かんでいる。


 ゴクリ、と息を呑むと、そっと触れた。


「……あっ」


 彼はどうしようもない変態だけど、何だかんだ千冬がピンチの時は、サッとそばに寄って、フォローをしてくれた。


 マーキングをする時も、変態的な所業だったけど……その真剣な眼差しと、にじみ出る優しさを思い出して……キュンとしてしまう。


「マーキング……」


 何だか変態的な響き。


 そして、変態の彼は、もっとひどいことをするかと思った。


 例えば、思い切り、口とかで……いえ、やめましょう。


 でも、手で思い切り握り締めるのだって、十分にひどい行為だ。


「あの男、絶対に許さないんだから……」


 植えこまれた快楽に、自分が溺れそうになっていることを、自覚していた。


 だからこそ、怒りが湧いて来る。


 千冬は優秀だけど、それを鼻にかけたりはしない、性格が良い子。


 でも、何だかんだ、プライドは高いから……それを打ち崩した、彼にどうしても執着、粘着してしまうのだ。


 それがきっかけで、付き合うことになったけど……


「……悔しい」


 今では彼のことが、大好きになっていた。


 この胸だけじゃなくて、全身をマーキングして欲しいとさえ思ってしまう。


 彼はどうしようもない変態のくせに、変に律儀なところがあるから。


 思春期男子の性欲を思い切り発揮して、ぶつけて。


 さっさと、千冬のことを抱いてしまえば良いのに。


 キスさえも、まだシてこない。


 今度の期末テストで、リベンジを果たさない限りは。


「……明日から、厳しく指導しないと」


 決して、彼にキスとエッチをしてもらいたいからではない。


 自分のとなりに立つにふさわしい男にはって欲しいから。


 だから、きちんと手綱を握って、教育をしてやるのだと。


 千冬は胸の内で、必死にそう言い聞かせていた。




      ◇




 ベッドに寝転びながら、天井に向かって手を伸ばして、虚空を掴んでいた。


 いや、既に俺は明確なイメージ、感触を得ていた。


「……すごかったな、千冬のおっぱい」


 前に夏服になった時、シャーペンでいじめたりはしたけど。


 直にこの手で触ったのは、初めてだったから。


 直とは言っても、あくまでも制服の上からだけど。


 それでも、十分にすごかった。


 さすが、全校男子に注目を集めるだけある。


 あのリレーの時、疾走する千冬のスポブラがちぎれて、抑止力を失った巨乳が大いに揺れまくって。


 俺はみんなに、NTR好きだから、大丈夫みたいなことを言ったけど……


 何だかんだ、彼氏として、嫉妬心を抱いてしまった。


 千冬は俺の彼女で、そのおっぱいは、俺だけのモノなのにって……


 だから、あんな変態的なマーキング行為をした。


 まあ、あくまでも手で握っただけだから、そこまで変態的ではないかもしれないけど。


 でも、もしかしたら、もっとあの先に行っていたかもしれない。


 例えば、千冬の巨乳を直に、本当に直にボロンと出して、その頂点を俺の口で……


『……勇太ッ、すごいッ』


 ……想像しただけで、ちょっとヤバくなりそうだったから、やめた。


「はぁ~、千冬とセッ◯スしてぇ~……」


 ベッドに四肢を投げ出して、俺は天井を見つめる。


「……っしゃ、勉強するか」


 すぐさま起き上がった俺は、勉強机に向かった。




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