第34話 マーキングタイム

 体育祭が終わった後は、打ち上げとかあったりするみたいだけど。


 そんな賑わいからは距離を置いて、2人きりになりたかった。


「千冬、何か飲むか?」


 俺の部屋にて、静かに佇む彼女に問いかける。


 いや、静かというよりも、落ち込んでいるみたいだ。


「……ごめんね、勇太」


「えっ?」


「全校生徒の前で、あんな風に恥をさらして……こんな私が彼女だなんて、最低でしょ?」


 千冬は自嘲気味に言う。


「……バカだなぁ」


 俺は苦笑しながら、彼女のとなりに座る。


「今日のお前、最高にカッコ良かったよ」


 ポン、と頭に手を置いて言う。


「ほ、本当に? だって、みんなの前で、あんな……」


「……正直に言っても良い?」


「う、うん……」


「……ちょっとだけ、ムカついた」


「えっ?」


「あまり独占欲でお前を縛りたくないけど……でも、やっぱり、千冬は俺のモノだって、気持ちが強くてさ……」


「勇太……」


「だから……今からお前にマーキングしても良いか?」


「マ、マーキング? そ、それって……」


「分かるだろ?」


 俺が真剣な眼差しを向けて言うと、千冬は口元に手を添えて、サッと視線を逸らす。


「……ゆ、勇太がどうしてもって望むなら……で、でも、まだ心の準備が……それに、その……道具というか、アレが無くて……」


「ああ、違うよ、千冬。別にこれから、本番のエッチをする訳じゃないから」


「へっ? でも、マーキングするって……」


「うん、お前のおっぱいに」


 俺は千冬の豊かなバストを指差して言う。


 ちなみに、スポブラを失った彼女の胸はいま、ただでさえ無防備な夏服の下で、大変なことになっている。


 具体的には言わないけど……


「……変態」


「ごめん。もちろん、千冬が嫌がるなら、しないよ。あんな思いして、下手すればトラウマになっているだろうし……」


「……勇太」


「でもそうなると、下手すれば一生、俺は千冬のおっぱいを揉めないのか……クソ、悩ましいぜ」


 俺がそんな風に悶えていると、


「……良いよ」


「へっ?」


「その代わり、今は色々と防御が薄いから……優しくして?」


 頬を赤く染めて千冬は言う。


「……うん、分かったよ」


 俺が頷くと、千冬はスッと胸を前に突き出す。


「前からと後ろから、どっちが良い?」


「……じゃあ、前からで」


「へぇ、意外だな。照れ屋の千冬ちゃんは、絶対に後ろからって言うと思ったのに」


「だって、後ろからだと、何をされるか分からないから」


「俺って信頼ねーな」


 つい笑ってしまう。


「良いから、するなら、早く……マーキングしなさいよ」


「千冬、そのセリフ、めっちゃエロいよ」


「うるさい、バカ!」


 キーッ、と三角になった目で睨まれてしまう。


 そんな表情もまた、可愛いでしかないんだけど。


「じゃあ、行くよ?」


 千冬は緊張した面持ちで、こくりと頷く。


 対する俺も、さすがに緊張していた。


 前にシャーペンで、この大きなバストをいじめ……イジったことはあるけど。


 この手で直に揉むのは初めてだから。


 まあ、ちゃんと制服の上から、触るけど。


「……あっ」


「うわっ、おもっ」


 下から持ち上げると、予想以上の重量感だ。


 この前、シャーペンで触れた時もその重みは感じたけど……


「やべ、泣きそう。我々、人類は、ついに到達しました」


「何をバカなこと言っているのよ。泣きそうなのは、こっちなんだから」


「嬉しくて?」


「恥ずかしくて、よ。バカ……」


 千冬は怒ってそっぽを向きつつも、俺に胸を指し出す格好のままだ。


「優しく、優しく……」


 俺は自分に言い聞かせながら、慎重な手つきで、千冬の巨乳を揉んで行く。


「んっ、ふっ……」


「どう? 気持ち良い?」


「……分からないわよ、バカぁ」


 千冬は涙目になって来た。


 けど、やっぱり可愛いでしかない。


 そして、俺のSモードにスイッチを入れてしまう。


「なあ、千冬」


「何よ?」


「優しくしてって言ったけど……やっぱり、それじゃマーキングにならないと思うんだ」


「へっ?」


「だから……」


 ぎゅうううううぅ、とした。


「ひぎっ!?」


「大丈夫か?」


「バ、バカぁ、いきなり……」


「ごめん、痛いなら、やめるけど?」


 俺が囁くように言うと、


「……優しくされると、ダラダラと長く続きそうだから」


「おっ?」


「強くする代わりに、さっさと終わらせなさいよ?」


 千冬は涙目で俺を睨んで……いや、見つめて言う。


 ヤバい、こいつ……本格的に、可愛すぎる。


「じゃあ、行くぞ?」


 俺が言うと、千冬はゴクリと息を呑む。


 そして、再び、ぎゅうううううぅっと……


「――ふわああああぁ!」


 千冬はのけぞって、ビクンと震えた。


「ゆ、勇太ぁ……苦しい……」


「ごめん、あと少しだから……」


 俺は悔いが残らないように、精一杯の愛を込めて、千冬の巨乳を掴み続けた。


 この指の形が、クッキリと残るくらいに……


「……ぷはっ」


 やがて解放されると、千冬は息を弾ませる


「はぁ、はぁ……」


「痛かったか?」


「……ええ、とっても。本当に、最低な男よ」


「ごめん」


 俺は謝る。


「……でも、痛いけど……気持ちが……」


「んっ?」


 俺が聞き返すと、千冬はハッとした顔になる。


「な、何でもないわよ、この変態!」


 ベシッ、と叩かれてしまう。


「あ、千冬。ちゃんとマーキング出来ているか、確かめさせてくんない?」


「嫌よ、近寄らないでちょうだい、ケダモノが!」


「くぅ~、ゾクゾクするぅ~!」


「もうやだ、この男……」


 いつも通りにため息を漏らす千冬を見て、俺は笑顔が止まらなかった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る