第30話 もうすぐ体育祭だね♪ 燃えろ、いや……もげろ!?

「えー、もうすぐ体育祭なんですけど、まだ学年のクラス対抗リレーのメンバーを煮詰め切れていないので。今回、決定したいと思います」


 体育祭の実行委員が教壇に立って言う。


「とりあえず、自薦、他薦を問わないので、誰か良い人はいませんかね?」


「それは、もう聞くまでもないんじゃないかな?」


 なぜだか、男子たちがちょっとニヤつきながら、視線を交わし合う。


「運動神経の良さで言ったら……森崎さんでしょ」


「ああ、そうだな、森崎さんしかいないよ」


「たぶん、男子よりも速いんじゃないかな?」


 奴らはなおもニヤつきながら言う。


 すると、


「ちょっと、男子たち」


 立ち上がったのは、千冬ではなく、あかりだった。


「あんた達……ちーちゃんの乳揺れを拝むのが目的でしょ!」


「ちょ、ちょっと、あかり……」


「「「「「「うっ……そ、そんなことねーし」」」」」」


 男子たちは気まずそうにそっぽを向いて言う。


「男子はやっぱり、キモいなぁ……でも、実際問題、森崎さんって勉強も運動も出来るスーパー女子だからなぁ。体育の成績も良いし……どうかな?」


 実行委員が言う。


「えっと、私は……」


 千冬はひどく戸惑っている。


 そんな彼女のことを、男子たちはまだニヤニヤと、期待するような目で見ている。


「ちょっと、ゆうたん、どう思う?」


 ふいに俺へと振られる。


 クラスメイトたちの視線が一気に集まった。


「んっ?」


「もうみんな知っていると思うけど、ちーちゃんはゆうたんの彼女だからさ」


 その事実をあかりが言うと、男子たちにシコタマ怖い顔で睨まれる。


 ついでに、親友の3バカにも。


 お前ら、もう知っているだろうが。


「だから、ゆうたん。ちーちゃんが学年別クラス対抗リレーに出て、その大きなお乳をバルンバルンと、このクラス……いや、全校男子たちのエロ目線にさらすかどうか、君が決めなさい」


 あかりは至極マジメな顔で言う。


「ふむ……」


 俺が悩む素振りを見せる間、千冬はちょっと潤んだ瞳で見つめて来た。


 いや、睨んでいた。俺、別に悪くないのに。


 あかりに怒れよ。


「……千冬は俺のモノだ」


「へっ?」


 彼女の瞳がパッと弾ける。


「「「「「「グギギ……」」」」」」


 男子たちが歯噛みをした。


「……けど、みんなのクラスの仲間でもある。事実、千冬が走った方が、勝利にはグッと近付くだろう」


 そう言って、俺は千冬を見た。


「あとは、お前の気持ち次第だよ、千冬」


「勇太……」


 千冬は俺のことを見て、それから周りのみんなを見て、顔をうつむけた。


「……わ、分かったわ」


 彼女が頷くと、


「「「「「「っしょええええええええええええええぃ!」」」」」」


「こら、エロバカ男子ども、騒がないの!」


 あかりがピピーッ!とホイッスルを鳴らす。


 どっから出した?


「ちーちゃん、本当に良いの?」


「うん、良いの」


「ゆうたんも、本当に良いの?」


「ああ、男に二言はない。チームの勝利には、千冬の力が必要だからさ」


「勇太……恥ずかしいじゃない」


 千冬は頬を赤く染めて、視線を逸らす。


「それに俺ってNTRもイケる口だからさ。むしろ、興奮するよ」


 最後に笑顔でそう言った。


 クラス内の空気にピシッと音が走った。


「ギャハハ! やっぱり、こいつサイコパスだわ~」


「まあ、NTRはここ数年、熟女と共にブームだからな」


「チキショウ、そのイカれ具合が羨ましいぜ、ファッ◯!」


 3バカが茶々を入れる。


「もう、やっぱりゆうたんって、変態くんだね♪」


「おう、サンキュー♪」


 俺はあかりとサムズアップをし合う。


 しかし……


「……ギロリ」


 案の定、千冬がメッチャ刺すような目を向けて来た。


「ん? どした、千冬? そんな目で見つめられると、ゾクるじゃん?」


「……何で、こんな男のことを好きになったの……意味分からない」


 頭を抱えてしまう。


 そして、


「「「「「「勇太、もげろ」」」」」」


 それがみんなの総意らしい。




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