第28話 夏服で存在感がヤバい巨乳

 梅雨と言えば、憂鬱ゆううつな季節。


 けど、思春期男子にとっては、歓喜の季節でもある。


「おい、見ろよ、森崎さん……やっぱ、すげえな」


「ああ、腰はキュッとくびれているのに……出るトコがすげえ」


「でも、あの乳を好きにしている男がいるんだろ?」


「え、何それ?」


「だって、森崎さん、彼氏がいるらしいし」


「マジかよ……」


 そんな囁き声を聞いて、俺はニヤリとしてしまう。


「……ふふふ、安心しろ、ボウヤたち。俺はまだ、千冬の巨乳を揉みしだいていないさ」


「ちょっと、そばで気持ち悪い囁きをしないでくれる?」


「何だよ、千冬ぅ。彼氏に対して気持ち悪いとか……まあ、最高だな」


「意味が分からないわよ、このドM男は……」


「てか、夏服のお前、ヤバくね? おっぱい丸見えじゃん」


「丸見えじゃありません!」


「やばいな~。俺だけの千冬のお乳が、周りのみんなに視線で犯されていると思うと……うん、興奮するな」


「やっぱり、この男は別れてやろうかしら」


「まあ、お前が望むなら、それでも良いけど」


「うっ……わ、別れないっていう、罰を与えたんだから」


「全く、千冬はツンデレで可愛いな~。そうだ、そのおっぱい、ツンツンしても良い?」


「ふん、許しません。せいぜい、指をくわえて眺めてみれば?」


「おぉ~……付き合っているのに、彼氏なのに、触らせてもらえない、このもどかしさ……千冬ぅ、お前だいぶ、俺の扱い方が分かって来たな?」


「全くもって嬉しくない、むしろ不名誉なんだけど?」


 とかいつものノリで会話していると、あっという間にクラスにやって来た。


「あっ、ゆうたん、ちーちゃん、おはよう!」


 梅雨の憂鬱さを物ともしない、明るい女の声が響く。


「よう、あかり」


 軽くあいさつをしてから、同じく夏服姿となっている、あかりを見つめた。


「えっ? ちょっと、どうしたの? ゆうたん、そんなにあたしを見つめて……」


「……まあ、そんなもんだよな」


「ちょっと、どういう意味よ? アレか? あたしには、ちーちゃんみたいな、でっかいお山が無いって言いたいの?」


「安心しろ、千冬。この世で1番多い性癖は、ロリコンらしいぞ」


「笑顔の肩ポンやめてくれる? 捻り上げるよ?」


「あいててて!?」


「バッカみたい……」




      ◇




 放課後。


 今日は、千冬を俺の部屋に招いていた。


「なあ、千冬。俺の部屋、どうだ?」


「えっ? まあ、意外ときれいにしているなって」


「ありがとう。でも、それは俺の欲しいリアクションじゃない」


「はぁ? じゃあ、何て言えば良いのよ?」


「とりあえず、『ちょっと、臭くない?』って言って欲しいなって」


「このドMが」


「あ~、雑巾みたいな臭いがするわ~って」


「梅雨のせいでしょ、それは」


「あと、イカ臭くない?」


「……し、知らないわよ、そんなの」


「ふぅ~ん? 一応、意味は理解しているんだ。千冬って、やっぱりムッツリちゃんだな♪」


「もう、帰っても良いかしら?」


「んっ? まあ、嫌なら別に良いけど」


「あなたは、本当に……」


 立ち去ろうとした千冬は、また俺のとなりにチョコンと座り直す。


「ていうか、やっぱりお前の胸、すげえな」


 俺は改めて、夏服で強調されている、千冬の巨乳を見つめて言う。


「ちょっと、あまりジロジロ見ないでよ」


 千冬は睨みながら、両手で巨乳を隠す。


「良いじゃん、触らない代わりに、じっくり拝ませてくれたって」


「嫌よ。それだったら、ひと揉み、ふた揉みされた方がマシよ」


「えっ、マジで?」


「あっ、その……今の取り消し」


「いや、しかとこの耳で聞いたぞ。千冬ちゃんは、欲しがりさんだなぁ~♪」


「こ、殺したい……」


 千冬は赤面しながら、悔しそうに歯噛みをする。


「さてと、それじゃあ……」


「ほ、本当に、揉むの?」


「んっ?」


「だ、だったら、その……優しくね? 初めてだから」


「……ヤバい、萌える」


「う、うるさい」


「安心しろよ、千冬。まだ、直接は触らないよ」


「えっ? じゃあ、どうするのよ?」


「むふふ、それはだな……」


 俺はテーブルの上に置いていた筆箱を開けて、シャーペンを取り出す。


「こいつで、お前のデカ乳を、もてあそぶ」


「……最低なんだけど」


「まあまあ、物は試しでさ。ちょっとした、遊び心ってやつ?」


「遊んで楽しいのは、あなただけでしょ? 遊ばれている方は、すっごく恥ずかしいんだから」


「じゃあ、やめておくか?」


 俺はシャーペンを遊ばせながら、千冬に問いかける。


「……ちょっとくらいなら、良いわよ」


「全く、素直じゃないなぁ。『私、勇太さまに、いじめられたいです!』って言ってくれよぉ」


「この鬼畜男が! ドMかドSか、どっちかにしなさい!」


「悪い、俺って情緒不安定なんだ」


「もう、するなら早く、しなさいよ……」


「この欲しがりさんめ」


「黙りなさい……」


 とうとう観念した千冬を見て、俺はニヤリとほくそ笑んだ。




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