第27話 テストの結果は……

「千冬先生」


「何かしら?」


「πr2乗って単語を見ていると、ムラムラが止まりません!」


「この変態! その程度の集中力で、良い点数が取れると思っているの?」


「すみません! じゃあ、先生のおっぱいを見せて下さい!」


「意味が分からないわよ!」


 こんな風に俺は、厳しくも優しい、千冬先生の指導を受け続けた。


「ちょっと、ここの問題、間違っているわよ」


「すみません! 罰として、ビンタして下さい!」


「だから、それはあなたにとってご褒美でしょうが!」


 全教科85点以上。


 その目標を達成すれば、俺は晴れて千冬と、初キス&初エッチが出来る。


 正直、想像するだけで、股間がムズムズして、勉強に集中しがたい時もあった。


 けど、俺は今までにない気合でもって、テスト勉強を重ねた。


 そして、来たる中間テスト、本番――


「ゆうたん、何か目のクマがすごいけど、大丈夫?」


「おう、あかり。ちょっと、千冬にシゴかれまくったんだ」


「えっ、もしかして、エッチなお話?」


「ふふふ、内緒だ」


「おい、このリア充。調子こいてんじゃねえぞ」


「まさか、森崎さんの美人のお母さんとも丼してないだろうな?」


「ファッ◯ファッ◯ファッ◯ファアアアアアアアアアアアアッ◯!」


 周りが騒がしくなるけど、


「悪い、みんな。俺ちょっと集中したいから、静かにしてくれ」


 そう言うと、あかりとバカ3人は顔を合わせて、それからまた目を丸くしたまま俺を見た。


「ゆうたん、とりあえず、ファイト」


「おう、ありがとう」


 ふと、千冬と目が合った。


 俺がグッと親指を立てると、あいつは少し複雑そうな顔をしながらも、頷いてくれる。


 やるべきことは、全てやり切った。


 あとは、結果を残すのみ。


「おーい、席に着け~」


 先生がやって来る。


「じゃあ、中間テスト始めるぞ~」


 そして、俺にとって大事な、戦いの火ぶたが切って落とされた。




      ◇




 数日後。


 テーブルの上に、答案用紙が並べられている。


「全教科90点超え……さすがだな、千冬」


「ええ、ありがとう」


 しかし、千冬の表情は優れない。


 なぜなら……


「……惜しかったわね」


 俺は今回のテストにおいて、過去最高の点数をマークした。


 けど、それでも、千冬との約束には及ばなかった。


「やっぱり、理数系は難しいな」


「仕方ないわよ、今回の問題は、みんな難しかったって言っていたし」


「でも……男として、情けないよ」


 俺はシュンと肩を落とす。


 思えば、今までの人生で、こんな風に落ち込むことなんて、無かった気がする。


 千冬とキス&エッチできない、その悔しさはもちろんあるけど……


 それ以上に、好きな女との約束を守れなかったことが、情けなかった。


「ごめん、千冬」


「勇太……」


 千冬は、いつになく神妙な面持ちで、俺のことを見ている。


「……そういえば、罰ゲームを決めないとだったわね」


「ああ、そうだな」


 いっそのこと、思い切りビンタしてくれないかな。


 そうすれば、この無念さもスッキリするはず……


「勇太」


「はい」


「あなたに対する罰は……」


 千冬は少しだけ、間を置いた。


「……私と別れないこと」


「……えっ? 別れる、じゃなくて?」


 驚いて聞き返す俺に対して、千冬はこくりと頷く。


「それにあなたが望むなら、今この場で……シても良いわよ」


「えっ、それって……」


 戸惑う俺の前で、千冬はスッと目を閉じた。


 きれいな顔立ちで、きれいな唇を突き出して……


 俺はドキッとしてしまう。


 これは、据え膳食わぬは何とやらという状況だ。


 しかも、相手は千冬ほどの巨乳美女。


 みすみす、逃す手はない。


「千冬……」


 そっと肩に触れると、彼女はピクッと揺れた。


 そして――ちゅっ、とキスをする。


「……えっ?」


 俺が離れると、かき上げた千冬の前髪がさらりと下りる。


「……まだ、期末テストがあるよな」


「そ、そうだけど……」


「その時に、リベンジしても良い?」


「勇太……あなたって、ただのエロ助じゃないのね」


「まあな。本当は、今すぐにでも千冬とベロチューして、パンパンしまくりたいけど」


「だから、言い方!」


「でも、何ていうか……男の意地ってやつ? お前とは、最高のキス&エッチをしたいからさ……ダメかな?」


「何よ、バカみたい……まあ、嫌いじゃないけど」


「ていうか、さっきあんなこと言ったけど、良いの? 俺と別れないだなんて……それって、まさかプロポーズ?」


「ち、ちがっ、そんなつもりじゃ……とりあえず、高校生の間はってことで……」


「じゃあ、その先も千冬とちゅっちゅっパンパン出来るかは、俺の男としての実力にかかっている訳だな」


「ま、まだしていないくせに……このサル男」


「千冬みたいなエロ可愛い女の前じゃ、みんなサルになっちゃうよ」


「サイテーね。珍しく落ち込んだから、慰めてあげたのに……損しちゃった」


「千冬、好きだよ」


「……変態」


「いや、今のは純粋だろ?」


「変態は変態なの。あなたが発することば、全部ね」


「じゃあ、飛び切りの下ネタ言っても良い?」


「やめなさい」


「【ピーーーーーーーーーー!】」


「だから、やめなさいってばぁ!」


 こうして、目標は不達成だったが、俺と千冬の絆は深まった。




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