第26話 マジメな先生とバカ生徒

 正座する俺の目の前で、千冬が偉そうに腕組みをして、見下ろして来ている。


 けど、一向に構わない。千冬の巨乳が強調されるし、俺のドM心がくすぐられるから。


「何でそんな風に、ヘラヘラしているの?」


「俺の愛する彼女が、可愛すぎるなって」


「ふざけないでちょうだい、ひっぱたくわよ」


 とか言いつつ、千冬は口元がニヤけそうになるのを堪えている。


 全く、どこまでも可愛いツンデレちゃんめ♪


「勇太、最初にあなたは、中間テストでそこそこの点数が取れれば良いって、そう言ったわね?」


「ああ、今までも赤点は取ったことないし、それで良いかなって」


「あなたはそれで良いかもしれないけど、私はそれじゃ困るのよ。この私のとなりに立つ男なんだから、もっとシャンとしてもらわないと。だから、テストでも高得点を目指しなさい。そして……」


「一緒にレベルの高い大学に進学するけど、お互いにエッチにはまって、酒にもハマって、ひたすらに堕ちて行く大学ライフを送るってんだろ?」


「本気でビンタしても良い?」


「ごめんなさい」


「こほん……とにかく、将来のためにも、あなたには妥協せず、良い点数を目指してもらいます」


「ただし?」


「……ただし、それに見合うご褒美を、提供してあげます」


「え、何をしてくれるんだっけ?」


「は、はぁ? あなた、自分から提案したことでしょ?」


「いや、ちょっと最近、忘れっぽくて」


「うぅ~……だ、だから、その……も、もし、良い点数を取れたら……わ、私と、その……キ、キキ、キスと……エ、エッ……チなことを、させてあげる……きゃああああああああああああああああぁ!」


「分かりやすく動揺してんなぁ~。ていうか、由里子さんがいなくて良かったな」


「本当に。いたら絶対、ニコニコ笑顔でイジられまくるから」


「千冬はドMだからな」


「うるさい! あなたこそ、ドMじゃない!」


「俺は両刀だから」


「ふん、ちっともカッコよくなんてないんだからね!」


「で、具体的には、どれくらい点数を取れば、ヤラせてくれんの?」


「言い方……」


 千冬ははぁ~、とため息を漏らしてから、


「……全教科90点と思ったんだけど……85点にしてあげる」


「えっ、マジで? 90点はだいぶキツいけど、85点ならがんばれば行けそうだわ。千冬ってば、何だかんだ優しいな~。ていうか、そんなに俺とヤリたいの?」


「だから、言い方! べ、別に私は、あなたとエ、エエ、エッチなんて出来なくても、全然構わないんだからね」


「あ~、今から妄想が捗るわ~。どういうプランで、千冬を『あんあん♡』言わせようかな~」


「ぜ、絶対に言わないから。勇太ごときに、そんな……」


「舐めるなよ? いつもエロい動画とかマンガを見て、研究しているんだよ」


「最低な男ね。ていうか、ちゃんと勉強しなさい! それで結果を残さなくちゃ、まるで意味がないでしょうが!」


「何だよ、やっぱり俺とセッ◯スしたいのか?」


「うるさい! ほら、教科書を開く!」


「うひょ~! 千冬先生のスパルタ指導だ~!」


「何でそんな風にテンションが上がっているのよ!」


「つーか、どうせなら、女教師風のコスして欲しいんだけど!」


「しません!」


 はぁ、はぁ、と千冬は肩で息をしている。


「もう、勉強する前から、ヘトヘトにさせないで」


「ああ、悪い。お前をヘトヘトにさせるのは、ベッドの上……」


 ベシッ!


「あいてッ!?」


 とうとう、千冬にひっぱたかれた。


「勉強に全集中!」


「はい、千冬先生!」


「先生って呼ばないで!」


「先生! 胸のサイズはいくつですか?」


「教えないわよ、バカ!」


「でもこのデカさ、絶対にFは下らないんだよな~」


「ああ、もう! いつになったら、勉強が出来るのよ!」


「千冬、あまり大きな声を出すな」


「誰のせいよ」


「そんなに声を出しまくって枯れちゃったら、肝心のエッチの時にお前のエロ可愛い喘ぎ声を聞けないだろうが」


「知りません!」


 千冬は両手を腰に置いて、ふすーッ、と鼻息を鳴らす。


「分かったよ、千冬。もうおふざけの時間はおしまいだ」


「本当にムカつく男ね」


「そうだ、千冬。もし、俺が目標の点数を達成できなかったら、どうする?」


「えっ?」


「ご褒美だけじゃなくて、罰ゲームも用意しておかないと不公平だろ?」


「あなた、変なところで真面目よね」


「じゃあ、目標の点数に届かなかったら、千冬にお尻を引っぱたかれるの刑で」


「何でそんな風にニヤニヤしながら言うのかしら?」


「いやいや、俺は今から怯えているよ」


「絶対にそれもご褒美でしょうが!」


「じゃあ、目標の点数に行かなかったら、別れるってことで」


「えっ……そ、それは、ちょっと……」


 千冬が焦ったように、オロオロとする。


「……いや、それはやめておこう」


「ホッ……」


「んっ?」


「な、何よ?」


「とりあえず、罰ゲームは……その時、千冬のテンションで決めてくれ」


「丸投げ……まあ、良いけど。どの道、この私が指導するんだから、ちゃんと目標の点数に行くだろうしね」


「おぉ~、すげえ自信だな。お前、やっぱりそんなに、俺と……」


「ほっぺたにシャーペン刺すわよ?」


「うわ、ゾクゾクするぅ~!」


「もうやだ、このおバカ……」


 こうして、俺の運命を賭けた戦いが始まる。




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