第25話 ご褒美を所望します

 楽しかったGWはあっという間に終わり、登校日。


「おっ、千冬ぅ~!」


 教室にやって来ると、俺は愛しの彼女を見つけて、テンション高めに声を出した。


 すると、彼女はニコッとせず、ギロッと俺を睨んで来る。


「……来たわね、浮気男」


「えっ? おいおい、俺がいつ浮気したよ?」


「あかりと遊んで、楽しかったかしら?」


「まあ、それは楽しかったけど……」


「ふん、浮気者」


 千冬はツンとそっぽを向く。


「GWは確かに楽しかったけどさ。でもやっぱり、千冬がそばにいないと、寂しかったよ」


 俺が言うと、千冬がちらっとこちらを見て来る。


「ふ、ふぅ~ん? 依存性の高い男なのね。気持ち悪いわ」


「うん、ごめん。俺、お前のデカいおっぱいに依存してるんだわ」


「は、はぁ?」


「でも、お前がエロい谷間の写真を送ってくれたから、おかげでスッキリしたよ」


「こ、この変態!」


「いや~、やっぱり怒った千冬は可愛いなぁ~!」


「ムカつく!」


 すると、


「おっはよ~♪」


 明るい声が響いて来た。


「よっ、ラブラブカップルさん♪」


「おっ、あかり」


「やっ、ゆうたん。ちーちゃんも、おはよう」


「え、ええ……おはよう」


 千冬は少し気まずそうに、顔をうつむける。


「どうしたの、ちーちゃん?」


「いえ、その……」


「千冬のやつ、さっきまで俺とあかりが浮気したって、怒っていたからさ。ご本人さま登場で、気まずいんだろ」


「あー、なるほど」


「こら、勇太。またあなたは、そんな風にあっさりと……」


「大丈夫だよ、ちーちゃん。ぶっちゃけ、GWに遊んだ時、ゆうたんと浮気しようとしたけど、きっぱり断られたし」


「な、何ですって?」


「あはは、あかりも随分とあっさり言うなぁ」


「だって、隠し事はきらいだし。あたし、ちーちゃんのこと好きだから、ちゃんと本音で話し合えるお友達でいたいから……まあ、これで嫌われちゃうかもしれないけど」


 あかりは苦笑しながら言う。


「……別に嫌いになったりはしないけど」


 千冬はかぼそい声で言う。


「その、あかりは私にない魅力を持った子だから……あまり、勇太を誘惑しないで?」


「ちーちゃん……やばい、可愛すぎて、そっち方面に目覚めそう」


「そ、そっち方面って?」


「百合の世界」


「百合って……ハッ!?」


「おいおい、あかり。俺だって、千冬が浮気したら悲しいぞ。それが女相手だとしても。しかも、共通の友人とか、ドロ沼じゃん」


「でも、ちょっと興奮するでしょ?」


「まあな。よし、創作の世界でなら、オーケーとしよう。オタクの明彦と協力して、同人誌でも作るか?」


「良いね~、夏の同人即売会だっけ? それでボロ儲けしよう~♪」


「そこの明るいおバカ2人! いい加減にしなさい!」


「っべ、やっぱり、千冬のツッコミたまらんわ~」


「あたしも~、何気に初めて強くツッコまれたかも~♪」


「はぁ~……ていうか、あなた達、随分と浮かれ気分だけど、テストは大丈夫なの?」


「「ほえっ?」」


「中間テスト、すぐ目の前に迫っているでしょ?」


「あっ、やべ。まあ、そこそこの点数は取れるだろうから、別に良いや。赤点さえ、取らなければ」


「志の低い男ね。そんなことじゃ……一緒の大学に行けないじゃない」


「えっ、千冬。お前、そんな先のことまで、考えてくれているの?」


「べ、別に、私は……」


「よし、決めた。千冬がそこまで言ってくれるのなら、俺は今回マジで勉強するよ」


 俺はグッと拳を握る。


「その代わり、良い点数が取れたら、ご褒美をくれ」


「ご褒美って……何が欲しいのよ?」


「う~ん、そうだなぁ……」


 俺は腕組みをして、少し考える。


 それから、こそっと千冬に耳打ちをした。


「……キスとエッチしようぜ」


「はっ?」


「俺が良い点数を取ったら、記念すべき初キス&初エッチってことで、決定な」


「ちょ、ちょっと、勝手にそんなこと……決めないでよ」


「あれ、ダメだった? でも、それくらいじゃないと、俺はやる気が出ないし……」


「この変態……」


 そう言いつつも、千冬の声は何だか弱々しい。


「……設定基準、上げるからね」


「おっ、ていうことは、それを超えたら千冬とセッ……」


「黙りなさい!」


 手で口を押えられる。


「どったの、2人とも?」


 あかりが小首をかしげる。


「な、何でもないのよ」


「むぐぐ……」


「ふぅ~ん? まあ、何かあったら報告してよ。あたしら、友達だしね?」


 あかりがニコッと笑って言う。


「べ、別に報告することなんて……無いんだから」


「ちーちゃん、顔が赤いよ?」


「う、うるさいわね」


「むぐぐ……」


 こうして、俺は今までよりも難易度が高めな中間テストに臨むことになった。


 ただし、極上のご褒美付きのね♪




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