第24話 やっぱり、小悪魔ちゃんなの?

 ラーメン屋を出た俺たちは、街中をブラブラとしていた。


「おい、勇太。お前、さっきからずっとスマホ見て、危ないぞ?」


 明彦が注意してくれる。


「ああ、ごめん。ちょっとエロ画像を見ていたわ」


「何だ、どの女優の画像だ?」


 隆志が言う。


「ん? 千冬の」


「って、森崎さんかよ! エロ画像って、何だ!?」


 明彦がギョッと目を剥いて叫ぶ。


「あっ、ちーちゃん、本当に送って来たんだ。ゆうたんの浮気防止のための、サービスショット♡」


 あかりがニコッとして言う。


「おい、勇太。俺たちにも見せろよ」


「良いよ、100万円で」


「たっか!?」


「バカ、これでも安くしている方だぞ? 俺の彼女は最高に可愛いから、最低でもそれくらいの価値はあるんだよ」


「悔しいが、あながち否定できないな……」


「おい、勇太。そこに森崎さんの美人で巨乳のお母さんは写っているのか?」


「いや、由里子さんは写ってないな」


「ちっ」


「ゲスな舌打ちだね~」


「ハッ、たかだか、同級生のエロショットで発情するなんて、ファッ◯な連中だぜ」


「とか言って、三郎。お前、さっきからずっと股間をサワサワしているぞ。すげえ、ダセェ」


「う、うるせー!」


 そんな風に、ワイワイ騒いでいると、


「ねえねえ、ゆうたん」


「どした?」


「ラーメン巡りって話だったけど、ちょっと休憩しない?」


「んっ? まあ、そうだな。休憩って言っても、どこでするんだ?」


「ホテル♪」


「「「ホテルぅ!?」」」


「いや、俺たちは未成年だから、ダメだろ」


「あ、そっかぁ……」


「ちっ、サイコパスのくせに、まともなこと言ってんじゃねーよ」


「そこは上手いことやれや」


「ファッ◯」


「お前らひどいな」


「じゃあ、カラオケに行こうよ♪」


「カラオケかぁ~、ちょうど良い腹ごなしになるかもな。お前らもそれで良いか?」


「「「良いよ~」」」




      ◇




 GWで混んでいたけど、何とか部屋を取ることが出来た。


「じゃあ、最初は言い出しっぺのあたしから行くね~♪」


「「「イエーイ!」」」


「お前ら、めっちゃノリノリじゃん」


「ゆうたんも、テンション上げてよ~」


「それはお前の歌次第だな」


「うわ、出たよ、ドSのゆうたん」


「でもまあ、あかりもドSっぽいから、ここはドMになるべきか。あ、でも、目の前にあかりに都合よくなりそうな豚が3匹いるけど」


「「「誰が豚だ、コラ」」」


「豚さん、可愛い~♡」


「「「ブヒッ」」」


「お前ら、あかりに骨抜きにされ過ぎだろ」


「てなわけで、スタート♪」


 あかりが選曲したのは、いま流行のアイドルソングだ。


「イエイエイ♪ ゴーゴー♪」


「「「エル・オー・ブイ・イー、あ・か・り!」」」


「合いの手、上手すぎだろ」


「みんな、ありがと~!」


「「「ふうううぅ~!」」」


「うわ、何か俺だけテンション合わないから、さっきもらった新着の千冬のエロ画像でシコっても良い?」


「ゆうたん、防犯カメラあるから、追い出されるよ?」


「じゃあ、トイレでして来るよ」


「おい、勇太。お前はサイコパスだけど、ちゃんと仲間想いのサイコパスだろうが。せっかくのカラオケなんだから、みんなの曲をちゃんと聞けよ」


「そうだよ、明るいサイコパス」


「ファッ◯ン、サイコパス野郎ぉ!」


「お前ら、サイコパス、サイコパスって、うるせーよ」


 俺は苦笑する。


「じゃあ、次はゆうたんが歌いなよ」


「えー、どうしようかなぁ、最近の曲とかあまり知らないし……じゃあ、これで」


 俺は適当に聞いたことがある曲を選ぶ。


「えっ、まさかのバラード? ゆうたん、マジぃ?」


「わり、もっと明るい曲がの方が良かった?」


「ううん、聞かせて」


 あかりがワクワクするような顔で言う。


 ジッと見つめられていると、ちょっと歌いづらいけど、俺はメロディーに合わせて声を響かせた。


 バラードって、意外とカロリー消費が激しいっぽいから、食後の腹ごなしに良いかなって思って選んだんだけど……


「……ふぅ」


「わぁ~! ゆうたん、歌すごく上手ぅ~!」


 あかりがパチパチとして言う。


「おう、サンキュー」


 一方で、3バカはなぜか俺のことを睨んでいた。


「何だよ、お前ら?」


「透かしときながら、しっかり女心を掴むとか……ラブコメ主人公め」


「お前、絶対に熟女にだけは手を出すなよ?」


「ファッ◯ファッ◯ファッ◯……」


「そう怒るなって。ほら、お前らも得意の曲を歌って、あかりにアピールしろよ」


「「「よっしゃぁ!」」」


「みんな、がんばって~♪」


 その後、明彦はアニソン、隆志は演歌、三郎はメタルを熱唱し……


「「「……ぐはぁ」」」


 何かバテていた。


 そんな体力のない連中じゃないんだけど、普段はいない可愛い女子を前に、無駄なエネルギーを使い過ぎたらしい。


「あ、飲み物がないな。俺、みんなの分も取って来るよ」


「じゃあ、あたしも手伝うね♪」


 グダっている奴らを置いて、俺はあかりと部屋を出た。


「いや~、やっぱり、カラオケって楽しいね」


「そうだな。何だかんだ、盛り上がっちゃうな」


 ドリンクバーにやって来ると、適当にジュースを注いでいく。


「ねえ、ゆうたん」


「ん?」


「まだ、ちーちゃんと、キスもエッチもしていないんだっけ?」


「うん、そうだよ」


「じゃあ、不安じゃない? 初めての時、上手く出来るかって」


「まあ、それはあるな」


「だったら、ちょうど良い練習台が、目の前にいるけど?」


 あかりが、自分を指差して言う。


「あかり……」


 俺はそんな彼女をジッと見つめてから、


「……いや、遠慮しておくよ」


「どうして?」


「だって、お前と千冬じゃ違うし」


「むっ、確かにあたしはチビで貧乳だけどさぁ~」


「まあ、それは否定しないけど」


「否定せんのかい!」


「でもまあ、初めては下手くそでしたってのも、良い思い出になるからさ」


「その結果、ちーちゃんに愛想を尽かされて、もっとヤバテクを持っているチャラ男にネトラレされても?」


「お前、嫌なこと言うなぁ~」


「あるいは……その逆もあったりして」


「えっ?」


「ううん、何でもない」


 あかりがニコッと笑う。


「ちーちゃんとキスとかエッチとかしたら、あたしにも教えてね♪」


「千冬の許可が下りたらな」


「えー、こっそりで良いから、教えてよ~」


 あかりは俺の腕に抱き付く。


「おい、あまりくっつくと、ドリンクがこぼれて……」


 パシャッ。


「……えっ?」


「友達の彼氏と、浮気ツーショット……なんつって」


 あかりは俺の方を見て、不敵に微笑む。


「これ、ちーちゃんに送ったら、どうなるかな~?」


「あかり……」


「あれ? さすがのゆうたんも、怒った?」


「いや、とりあえず、千冬には送らないでくれ」


「怒られるから? 下手すれば、別れを切り出されるから?」


「ていうか、千冬が悲しむから」


 俺は素直に思ったことを伝えた。


 すると、あかりは口をつぐむ。


 そして、無言のままスマホを操作した。


「……今の写真、消したから」


「そっか」


「ごめんね、ゆうたん。あたしのこと、嫌いになった?」


「いや、これくらいでならないよ。あかりは俺と千冬にとって、大切な友達だからな」


「そう言ってもらえて、とても光栄だよ。でも、あたしはいつでも虎視眈々こしたんたんと、狙っているからね~」


 ツンツン、と俺は胸をつつかれる。


「可愛い虎さんだ」


「にゃっ!?」


「あれ、猫だった?」


「ゆうたんって……隠れヤリ◯ン? 本当は、童貞じゃないでしょ?」


「いや、ピッカピカの童貞くんだけど?」


「何それ、可愛い♪」


 また楽しく談笑しながら、俺たちは部屋に戻った。




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