第22話 調教されてた

 ガヤガヤと、賑わう空気が漂う。


 その中に交じって……


「……う~ん、良い匂いがするね~♪」


 あかりが笑顔で言う。


「あの、あかりちゃん。でも、ちょっと臭くないかな? ほら、背脂トンコツ系だし……」


「ああ、確かに。でも、臭くて良い匂いだよ♪」


「……ありがとうございます」


 隆志は真顔で一礼した。


「おい、だからクソオヤジ。爽やかなラブコメヒロインを汚すんじゃねーよ。お前はおばさんのケツでも追っかけていろ」


「黙れクソオタク。俺は今日、新たな領域を開発できそうなんだ」


「オー、チンチンチン、ア、チンチンチン!」


「おい、三郎。ラーメンの器を箸で叩くな。だいたい、お前はギタリストだろうが」


 俺は苦笑しながらツッコむ。


 ちなみに、席順は俺とあかりが隣り合って、向かい側にバカ3人が並んでいる。


 さっきから、ギラつく眼差しであかりを見ているが、あかりは嫌がる素振りを見せずにニコニコしている。


「じゃあ、冷めない内に食べようぜ」


 俺が言うと、


「「「「「いただきまーす!」」」」」


 みんなして、ラーメンを食い始める。


 美味そうなラーメンを前にすると、さっきまで騒がしかった連中も、一心不乱にすすり始める。


 ずぞぞ、ずぞぞ、ずぞぞ、と。


 そして、俺のとなりの明りも、男子顔負けの吸引力を見せる。


 ずぞぞぞぞぞぞ、と。


「あかり、ラーメン好きは本当なんだな。良い食いっぷりだぜ」


「ありがと、ゆうたん」


「千冬なんて、ちょろちょろって、一口ずつだもんな。まあ、そこがまた、可愛いんだけど」


 俺が笑いながら言うと、あかりがぷくっと頬を膨らませる。


「もう、またちーちゃんの話ぃ? どんだけ好きなの?」


「いや、ごめん。うっかり、ノロけちゃったぜ」


 そんな風にあかりと話していると、


「これは良いラブコメ対抗ヒロイン」


「本格的にロリも開拓したくなって来た」


「あのあざとく膨らませたほっぺをファッ◯して、たこ焼きにして食べたい」


 発情しているバカ3人は、とりあえずスルーの方向で。


「で、ゆうたんは、ちーちゃんとどこまで進んでいるの?」


「ん? とりあえず、デートはしているぞ。この前は、千冬の家で美人のお母さんに会ったし。千冬よりも巨乳だった」


「うわ、そのラブコメイベントも美味過ぎるわぁ」


「おい、勇太。そう言えば、その素晴らしきお母さまの写真をまだもらっていないぞ」


「ファッ◯、ファッ◯、ファッ◯、リア充、ファアアアアアアアァッ◯!」


「お前ら、とりあえず黙ってラーメンすすっておけよ」


「ちなみに、あっち方面はどうなの?」


「あっち方面?」


「エッチ方面♪」


「ああ、そういえば、まだキスもセッ◯スもしてないわ」


「え~、そうなの? キスくらい、もうしていると思ったんだけど……これはチャンスかな?」


「出た、あざとい小悪魔モード!」


「くっ、ロリも捨てがたくなっている自分がいる……!」


「ファッ◯ファッ◯ファッ◯ファッ◯ファッ◯……羨ましい」


「てか、そう言うあかりは、経験あんの? キスとかセッ◯スとか」


「うん、あるよ」


「「「えっ」」」


 バカ3人が、ピシリと固まる。


「最初に付き合ったのは、オタクくんだったなぁ。あたしが好みのロリキャラに似ているからって。可愛いコスをさせられて、下手くそなエッチをされて……でも、可愛かったなぁ」


「それ明彦みたいだな」


「2人目に付き合ったのが、年上のおじさんで。エッチなビデオをたくさん見せられた後、嫌らしいおじさんのネチネチしたテクで、色々と勉強させてもらったなぁ」


「それ隆志みたいだな」


「3人目に付き合ったのが、パンクな彼で。いつもあたしのことを口汚い言葉で罵るんだけど……本当は、すごく優しくて」


「それ三郎みたいだな」


 そう言って、俺は改めて3人の顔を見た。


「え、お前らって実は、既にあかりに吸われた奴ら?」


「「「いや、何をだよ」」」


 3人同時にツッコんで来る。


「ちなみに、冗談だけど」


 あかりはぺろっと舌を出して言う。


「なーんだ。あまりにも、この3人と特徴が似ているから、ビビったよ。こいつら、俺と出会う前から、すでに◯兄弟だったんだなって」


「おい勇太、冗談じゃねえよ。誰が好き好んで、こんなイカれた奴らと◯兄弟になるってんだよ」


「黙れ、クソオタク。お前はせいぜい、2次元相手にハァハァしてろ」


「うっせんだよ、おっさん。ていうか、お前の好きな女優だって、2次元みたいなもんだろ?」


「いや、ちゃんと存在しているから。サイン会だって行ったことあるし」


「テメエら、そろそろお口ファッ◯しても良いか?」


 バカ3人が、物々しい空気になりかけた時、


「こら、君たち」


 あかりの声に、3人は振り向く。


「せっかくの楽しいGWタイムなんだから、ケンカしちゃメッ!」


 人差し指を立てて、可愛らしく注意をした。


 すると……


「「「ごめんなさい」」」


 あっさり骨抜きにされてしまう。


「ほら~、もう麺が伸びちゃっているじゃない。せっかくの美味しいラーメンなんだから、ちゃんと食べないとダメだよ?」


「「「はい」」」


 すっかり手懐けられた3人は、黙ってラーメンをすすり始める。


「あかりって、可愛い顔して、怖いのな」


「ゆうたんって、ドMにもなれるんでしょ? 調教してあげよっか?」


「ああ、ごめん。俺、千冬の調教で忙しいから」


「おい、勇太。お前、森崎さんにどんな調教を……」


「まさか、美人のお母さんともども、調教するつもりじゃ……」


「ファッ◯! 俺にも調教させろ……」


「3バカちゃん、ラーメン!」


 あかりがビシッと注意すると、3人はハッとした顔になり、また大人しくラーメンをすする。


「マジで調教成功してるじゃん。あかり、将来はサーカス団の猛獣使いとかになれば? もしくは、動物園で働くとか」


「う~ん、それも悪くないけど……あたし、可愛いお嫁さんになりたい」


「あかりなら、きっとなれるよ。ちょっと怖い腹黒な面はあるけど」


「ゆうたん、ニンニクありったけお口にぶちこんで、公衆の面前で後ろめたい気持ちにしてあげても良い?」


「うわ、ゾクゾクする~。何ていうか、千冬はドSっぽい見た目なのにドMで、あかりはドMっぽいのにドSだよな~」


「ゆうたん、人を見かけで判断しちゃダメだよ? あたしだって、おっぱい小さいように見えて、本当は巨乳かもしれないし」


「えっ、まさかのさらしパターン? それはちょっと、ヤバいかもな……」


 俺が唸っていると、


「おい、それは確かに、ヤバいラブコメ展開だな」


「う~ん、ロリ巨乳は……まあ、アリか」


「それをちぎれば、特大のたこ焼きに……」


「ラーメン!」


「「「はいッ」」」


「調教、乙。てか、あかりって、本当に実は巨乳なの?」


「確かめてみる?」


「う~ん……いや、ちゃんと貧乳だな」


「へっ? 何で分かるの? 触ってもないのに……」


「いや、千冬が本物の巨乳だからさ。ずっと観察していると、何だか分かるんだよ」


「ふん、またちーちゃんか。ゆうたん、後で絶対にぶっ飛ばす」


「何で怒るんだよ。千冬は俺の彼女なんだか、ちょっとくらいノロケたって良いだろ?」


「それ以上、余計なこと言うと、本気でニンニクぶちこむよ? しばらくの間、ちーちゃんとキス出来ないよ?」


「いや、千冬はドMというか、優しいから、俺の口がニンニク臭くても、きっとキスしてくれるよ」


「ねえ、この男の首絞めても良いかな?」


「「「はい」」」


「頷くな、お前ら」


 結局、トークが弾み過ぎて、ラーメンが伸びてしまった。




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