高嶺の花に告白してスッキリしていたら何か粘着された ～あっさり系でグイグイいく彼は、完璧な彼女を崩壊させる～

第１６話 ぷりぷりデートは続行中♡

　ランチを終えて店を出た。

「千冬ぅ～、まだ怒ってんのかよ？」

「怒っていません？」

「いや、怒っているじゃん。まあ、どちらにせよ可愛いでしかないから、俺得なんだけど」

　褒めたつもりだったけど、むしろ千冬は余計に怒った顔になる。

「何でそんな風に、俺を睨むんだ？」

「どうやったら、あなたに吠え面をかかせられるか、考えているのよ」

「んっ？　ああ、そうだな……」

　俺は少し考えてから、

「たぶん、俺が吠え面っていうか、泣きっ面になるのは……千冬が死んだ時だな」

「へっ？」

「もし俺と別れたとしても、どこかで元気にしてくれていれば良いし。むしろ、他の男にＮＴＲされたと思うと、興奮するかも」

「へ、変態！」

「だから、俺に吠え面をかかせるのはあきらめてくれ。代わりに、俺をもっとキュンキュンさせてくれ。千冬の可愛さで」

「あなたからは、キュンキュンって爽やかさが伝わって来ないのよ」

「まあ、実際はギンギンだから、千冬を見ていると」

　千冬は無言で俺を睨んだ後、ぺち俺の頬を叩いた。

「うわ……」

「あ、ごめんなさい、手加減したとはいえ、暴力を……」

「千冬の手、スベスベで気持ちえ～」

「あなたは一体、どうやったらへこたれるのよ！？　いっそのこと、本気でビンタしましょうか！？」

「イエス、バッチコイ！」

「もう嫌だ、この男……」

「じゃあ、別れるか？」

「……ここまで来たら、意地でも別れないわ。あなたに、吠え面をかかせるまで」

「千冬って、本当に負けず嫌いだよね。そんなに美人で巨乳なのに、どうして劣等感を覚える必要があるんだよ？　俺なんて、何の取り柄もない、平凡な男だぜ？」

「いいえ、とんでもないあっさりマン、サイコパス、変態よ」

「まあ、あっさり系なのは認めるけど、サイコパスなのはキモ濃い親友たちの影響だし、変態属性が追加されたのは、千冬がエロ可愛いからだぞ？」

「エ、エロ可愛いって……いつ、私があなたの前で、エロいことをしたって言うのよ？」

「いや、単純におっぱいデカくて、エロい体しているなって」

「最低ね。所詮、体目当てなの？」

「いや、その大きなお乳の奥にある、可愛いお心に惚れました」

　俺が言うと、千冬は言葉に詰まった。

「バ、バカじゃないの？　変態、近寄らないで、半径５ｍ以内に」

「なるほど、今は照れて顔が真っ赤で恥ずかしいから、近寄らないで欲しいと」

「何で人の心を覗くのよ！　エスパーでもあるの！？」

「そんな属性過多じゃないよ」

　あはは、と俺は笑う。

「けど、あれだな。こうして付き合う前は、千冬って完璧で隙がない女だと思っていたけど……意外と色んな表情を見せてくれるから、本当に可愛いと思うよ」

「……あなたのせいよ」

「んっ？」

「あなたに、メチャクチャにされたの……だから、責任を取りなさいよ……」

　千冬は頬を赤く染めながら、照れたように言う。

「うん、良いよ」

　千冬はガクリとした。

「だ・か・ら～……どうして、そんな風にあっさり系なのよ！？」

「ははは、まあ良いじゃん。千冬がネチネチ粘着質な分、俺と相性が良いだろ？　バランスが良いって言うかさ」

「誰がネチネチ粘着質よ！……あなたに対してだけなんだから」

「えっ、マジで？　嬉しいな～」

　俺が言うと、千冬がジロっと睨む。

　ぺち、とまた頬を叩かれた。

「ああ、また千冬の可愛い手にビンタされた」

「いちいち、可愛いって言わないでくれる？」

「じゃあ、きれいだよ、千冬」

「勇太、しばらく、お喋り禁止ね」

「良いよ。その代わり、千冬といると楽しくてつい喋っちゃうからさ。お前のその可愛くてきれいな手で、俺の口を押えてくれよ」

「……やっぱり、さっきのファミレスで、熱々のドリアをありったけ口の中に突っ込んで、ヤケドさせておけば良かったわ。そうすれば、少しは大人しくなったでしょうに」

「千冬、本当はドＭなのに、無理してドＳにならなくても良いんだぞ？」

「だから、黙りなさい！」

「むぐぐぐぐっ」

　千冬に思い切り口を掴まれた。

「って、何で嬉しそうな顔をしているのよ！　あなたの方がドＭじゃない！」

「むぎゅぎゅぎゅっ」

　その時だった。

「――あれ、ちーちゃん？」

　聞き覚えのある声がして、俺たちは振り向く。

「……あ、あかり？」

「あれ、勇太くんも一緒なの？」

「もご、もごご（よう、あかり）」

　俺は千冬に口を塞がれたまま、軽く手を上げてあいさつした。

「えっ、ていうか……どうして、２人きりなの？」

　あかりは小首をかしげて言う。

「そ、それは……」

　千冬は、なぜだか気まずそうな顔をしていた。