第7話 元気がない彼女

 俺たち3人は、ラーメン屋にやって来た。


「へい、らっしゃい!」


 店主の元気な声に迎えられて、俺たちはテーブル席に案内される。


「ご注文がお決まりになりましたら、ボタンを押して下さ~い!」


 愛想の良い女性の店員さんが言ってくれる。


「さて、どうしようかな~」


 好物のラーメンを前に、俺はルンルン気分になりながら、メニュー表を開く。


「こってり系とあっさり系があるけど。やっぱり、女子2人はあっさり系の方が良いかな?」


「いや、あたしはこってり系で行くよ」


 須藤さんが、なぜかドヤ顔で言う。


「へぇ~。本当にラーメンが好きなんだねぇ。女子なのに、そのがっつきっぷり」


「ちょっと、がっつくなんて言わないでよ~」


 須藤さんは、テーブル越しに手を伸ばして、俺の肩を軽く叩いた。


「あっ……」


 森崎さんが、声を漏らしたので、俺が目を向ける。


「森崎さん?」


「あっ……あっさり系にしようかしら、私は」


「うん、その方が良いよ。森崎さん、ラーメン初心者みたいだし」


「でも確かに、ちーちゃんとラーメンって似合わないよね。ちーちゃんは、もっとお上品なフレンチとか似合うよ」


「そ、そんな良い物ばかり食べている訳じゃないから」


「え、森崎さんの家って、お金持ちなの?」


「あ~、川村くんってば、何か目の色変わったし~。もしかして、逆タマ狙い?」


 須藤さんが、少し目を細め、ニヤついた口元で言う。


「いやいや、違うよ。そもそも、俺はもう森崎さんにフラれているし」


「えっ?」


 須藤さんが、目をパチクリとさせ、俺と森崎さんを見比べる。


「この前、告白してさ。俺、フラれちゃったんだけど。森崎さんとお互いに、これからもクラスメイトとして仲良くしようねって言ったんだ。ねぇ、森崎さん?」


 俺が声をかけるんだけど、森崎さんはすぐに返事をしてくれない。


「森崎さん?」


「ハッ……そ、そうね」


「え~、2人ってそういう関係だったんだ~。どおりで、仲良しな訳だよ~」


「あはは、良かった。ちゃんとクラスメイトとして、仲良く出来ているって証拠だね」


 俺は笑って言うけど、森崎さんの表情はどこか晴れない。


「ていうか、早く注文しようよ~。お腹減ったし~」


「ああ、ごめん。森崎さんも、お腹空いたよね?」


「……ええ、そうね」


 やはり元気がない森崎さんのことが気になりつつ、俺は再びメニュー表に目を走らせた。




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