第6話 デート当日

 週末。


 俺は待ち合わせの駅前にやって来た。


 休日とあって、やはり人が多くて活気がある。


「えーと……あっ」


 人だかりの中でも、ひと際目立つ彼女がいた。


「森崎さん」


 俺が声をかけると、清楚な黒髪の美少女が、こちらに振り向く。


「あっ……川村くん」


 彼女が俺の方に振り向くと、周りにいた男たちが、軽く舌打ちをして去って行った。


 恐らく、ナンパ狙いだろう。危ない所だった。


「やっぱり、森崎さんって、すごいなぁ」


「えっ、何が?」


「いや、すごい美人だから。その私服、似合っているね」


「あ、ありがとう……」


 森崎さんは、照れたように顔をうつむけてしまう。


「ていうか、待たせちゃった?」


「平気よ。私も、いま来たところだから」


「そっか」


「あの、川村くん」


「んっ?」


「えっと、その……」


 森崎さんが、何か言おうとした時。


「やっほ~、お待たせ~!」


 元気な声が割って入った。


「あ、須藤さん」


 こちらも、人混みの中でも埋もれないくらい、元気で輝かしい可愛い女の子。


 背は小柄だけど、ピョンピョン跳ねているから、すぐに見つけやすい。


 タタタ、と俺たちの方に駆け寄って来た。


「ごめんね、待った?……なんて、言ってみたかったの」


「大丈夫、いま来た所だから。ねえ、森崎さん?」


「え、ええ」


「わあ、ちーちゃん、その服かわいいね~。ていうか、きれい」


「あ、あかりこそ、可愛いじゃない」


 森崎さんが清楚でゆったりなワンピースに対して、須藤さんはTシャツにズボンと、活発に動きやすい服装だ。


「ていうか、森崎さん、大丈夫?」


「えっ?」


「ほら、そんな素敵な洋服、ラーメンを食べて汚しちゃうかもよ?」


「あっ……」


「平気だよ。ちーちゃん、見た目だけじゃなくて、食べ方もきれいだから。一緒にお弁当とか食べているから、分かるし。ねぇ?」


 須藤さんが、明るく笑いながら、森崎さんに言う。


「そ、そんなことは……」


「まあ、俺としては、その服装の方が森崎さんらしくて、良いと思うけど。本当によく似合っているし」


「えっ……そ、そうかしら?」


「あー、ちーちゃんばかり褒めて、ズルい! あたしも褒めて?」


「うん、須藤さんも可愛いよ」


「えへへ~」


 須藤さんはにへらっと笑う。


 一方で、森崎さんは頬を赤く染めた状態で、視線を逸らしていた。


「じゃあ、早速だけど行こうか。この時間なら、まだ混んでいないと思うから」


「オッケー、レッツゴー!」


 元気よく俺と並んで歩く須藤さん。


 対する森崎さんは、少し離れた距離を歩いて行く。


「森崎さん、もっとこっちに来なよ」


 俺は言う。


「えっ?」


「ぶっちゃけ、さっき俺が来た時、ナンパされそうになっていたよ? だから、変な奴が寄って来ないように、俺のそばにいなよ」


「か、川村くん……」


「さすが、ちーちゃん。やっぱりモテるんだね~。ちなみに、あたしもこの前、ナンパされたよ?」


「へぇ~、須藤さんも、モテるんだね~。明るくノリが良いから、ナンパされやすいんじゃない?」


「あー、川村くんがサイテーなこと言ってる! 今日のラーメン、おごりだからね!」


「え~、今月ちょっと厳しいのに……」


「冗談だよ、冗談。みんなで楽しく食べようよ」


「そうだね。森崎さんも、ラーメン楽しみ?」


「え、ええ」


 森崎さんは、ぎこちなく微笑みながら、頷いた。




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