第3話 まだ怒っているのかな?

 放課後、俺は2日連続のラーメンを味わっていた。


「で、勇太。お前、森崎さんに呼び出し食らっていたけど……結局、何だったんだ?」


 一緒にラーメンを食べていた友人が聞いて来る。


「まさか、やっぱりお付き合いしましょう……とか?」


「だったら、今ここでお前を殺さなければ……」


「いや、それは違うよ。これからも、クラスメイトとしてよろしくって。ほら、気まずいままだと、何か嫌でしょ?」


 俺が言うと、友人たちはどこか納得したように頷く。


「さすがだな、勇太。お前は本当にさっぱりした良いやつだよ」


「ていうか、あっさり系だろ」


「好きなラーメンもあっさり系だしな」


「いや、こってりも好きだけど。2日連続だから、ちょっと体のことを考えてね」


「「「おっさんかよ」」」


 同時にツッコまれてしまう。


 俺は苦笑した。


「ていうか、勇太って付き合っても、良い奴だけど淡泊そうだよな」


「え、何が?」


「エッチだよ」


「ああ、どうだろうな……でも、好きな相手なら、がんばりたいけど」


「じゃあ、もし森崎さんと付き合っていたら、がんばったか?」


「まあ、森崎さんほどの美少女が相手なら、何回でも……って、言わせるなよ」


「でも、森崎さんと付き合うなんて、夢みたいな話だよなぁ」


「黒髪美人で巨乳だもんな~」


「てか、処女なのかなぁ?」


 しばらく、男同士の下世話な会話が続いた。




      ◇




 翌日。


 朝、廊下を歩いて教室に向かっていた時。


「おはよう、川村くん」


 澄んだ声に視線を引き寄せられる。


「あ、森崎さん。おはよう」


 相変わらず、黒髪がきれいな彼女がそこにいた。


 けど、腕組みをしたまま、しばらく押し黙っている。


「どうしたの?」


「いえ、その……そういえば、昨日の放課後はどうしていたの?」


「んっ? 友達とラーメンを食べたよ」


「2日連続じゃない。太るわよ」


「うん、だからあっさり系にしたんだ。俺なりに考えているんだよ」


「でも、やっぱり体に悪いわよ」


「ありがとう、そんな風に気遣ってくれて」


 俺が礼を言うと、何だか少し慌てた様子で、


「べ、別にあなたのことなんて、気遣っていないから」


「そっか」


「だから、何で……」


 はぁ~、とため息を吐かれてしまう。


「元気ないね。何かあったの?」


「ええ、ほんの2日前にね」


「あっ……ごめんね。俺のせいかな?」


「……別に、もう気にしなくても良いけど。そもそも、きのう話して、和解した訳だし」


「うん、そうだね。俺、せっかく森崎さんみたいな美人と同じクラスになれたのに、気まずいまま終わったら残念だから。また、クラスメイトとして仲良くしてもらえるなんて、嬉しいよ」


 俺は笑って言う。


 サッと、視線を逸らされた。


 森崎さん、内心ではまだ怒っているのかな?


 けど、見た目通り、中身も大人だから、歩み寄ってくれたとか。


「じゃあ、行こうか」


「……ええ」


 俺は森崎さんと2人で教室に向かった。




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