第19話 裏垢の理由(編集)

裏垢の少女、杉山美穂は俺を探す為に裏垢をやっていた。

もし見つからなかったらどうするつもりだったのか。

俺は考えながら額に手を添える。

そして翌日を迎える。

午前7時。


「応援に来てくれない?」


「応援って何を?いきなりだなお前。朝早くから」


「良いから。私のバスケの試合の応援」


「.....ああ。成程な。それなら行こうか?」


朝日はジャージ姿で俺の元に来た。

その姿を新鮮に感じながら眠気まなこを擦る。

全くコイツは.....朝早くから何しに来たかと思えば。

そういう事か、と思いながら見ていると。


「杉山さんと凛花ちゃんも誘って良いから」


「.....え?マジ?何で?」


「私は恋は負けたく無いけど.....でも恋と試合は別だから」


「成程な。分かった。じゃあ応援に行くよみんなで」


「うん。そうしてくれると嬉しいかも」


すると朝日は俺に頭を差し出してきた。

ん?、と思いながら見ていると。

朝日は、撫でて、と言ってき.....は?

俺は赤面する。


「何でだよ!」


「活力注入」


「いやいや。勘弁してくれ」


「ふーん。撫でてくれないんだね。別の女の子とデートした癖に」


「いや。それは止めて。もっと心に来る」


じゃあ撫でて、と言う朝日。

俺はそのまま朝日の頭を撫でる羽目になる。

相変わらず身長が高いもんだな。


そして撫でると.....女の子の香りがした。

シャンプーの香りだヤバい。

考えながら撫で続けると朝日はニコッとした。


「うん。有難うね」


「お前な。恥ずかしいんだが」


「恥ずかしいの?それはそれで嬉しいかもね」


「そ、そうですか」


俺は汗を流しながら赤くなる。

全く、と思いながら、だ。

それから朝日を見ると。

朝日は、祐子ちゃんは元気?、と聞いてきた。

笑みを浮かべて、である。


「まだ寝ているけど元気だよ。有難うな」


「そうなんだね。分かった。祐子ちゃんも歓迎だから」


「そうだな。予定が合えば祐子も連れて行くよ」


「うん。じゃあ行って来る」


「そうか。気を付けてな」


それから俺達は別れてから。

そのまま杉山とか凛花とか七色さんとかにメッセージを送る。

祐子にも話した。

みんな観戦はOKの様であり。

取り敢えず全員で応援に向かう事にした。



俺達は凛花と杉山と祐子と一緒に試合会場の総合体育館。

つまり市民体育館にやって来た。

それから人が大勢居るのを確認してみる。

応援の為であろうが人が沢山であった。


「人がいっぱいですね」


「だな。確かにそうだな」


「人がいっぱいだねぇ。こんなに人が居ると鬱陶しいかもね」


「でもまあ。みんな応援の為に来ているんだからしゃーない」


「そうですね」


そんな会話をしていると。

すいませんー!、と遅れた感じで七色さんが来た。

俺は、ゼエゼエ、と言うその姿を見ながら、大丈夫か?、と聞くと。

はい。大丈夫です、と笑みを浮かべて七色さんは答えた。

その背後に人影がある。

ん?


「すいません。何だか此方をジッと見ていた人を連れて来たんです」


「こっちを見ていた人?」


「はい。朝日先輩のご友人だそうですが.....」


「え?ああ。マジか」


俺は確認する。

そこには確かに深々と白いフードを被った少女が居た。

その白いフードの奥の目はかなり大きい。

それから顔立ちがかなり整っている。

かなりの美少女であった。


俺はビックリしながらその少女を見る。

身長はそんなに高くない少女だ。

顔を見られたく無い様な感じで一礼をした。


「何だか魅力的な女性ですよね。この娘」


「そうだな。.....えっと。君の名前は?」


「私は上代奈々(かみしろなな)といい.....ます。17.....歳。朝日ちゃんの.....その。友人です.....が」


上代という女の子は。

それを言ってから目線を彷徨わす。

ふむ、と思いながら見ていると。

いち早く凛花が反応する。

それから上代の手をゆっくり握った。

スマホに文字を打ち込む。


(私。九条凛花って言います。何だか貴方の目と私の目が似ているので。ついつい手を握りました)


「.....!」


オドオドしながら上代は凛花を見たりして慌てる。

凛花はその顔を見ながら、ふふ。先輩だけど先輩に感じられないです、とニコニコしながらスマホに文字を書き込んだ。

そんな事言ったら失礼ですが、とも書く。


俺は少しだけ顎に手を添えた。

凛花も.....そうだな。

1人ぼっちだったしな。

そう一瞬だけ頭を過ぎった。


「貴方は.....私と同じ?」


(はい。私も貴方と同じ目をしていました。今もまだ喋れないですしね)


「.....そ、そうなんだ」


上代は控えめに恥ずかしいのかフードを深く被る。

それから凛花は握ったその手を離さずに居ると.....横に立っていた杉山が笑みを浮かべて上代に声を掛ける。

上代さん、と話しながら、だ。

すると上代はビクッとしながら、は。はい、と反応する。


「そんなにビクビクしなくても大丈夫だよ。アハハ。私達は上代さんと仲良くしたいだけだから。この場に居る全員がね」


「えっと。仲良く?」


「そう。仲良くね」


「そう、ですか.....?」


上代は何だか嬉しそうな反応を見せる。

俺はそんな姿に笑みを浮かべながら考える。

何故こんなに彼女は.....ビクビクなどしているのか、と。


そして見ていると、おーい、と声がする。

よく見ると朝日がやって来ていた。

先程と変わらないジャージ姿である。

そして上代を見てビックリする。


「!.....奈々ちゃん来てくれたんだね」


「朝日。その。彼女は.....」


「ああ。えっとね。彼女はちょっと家から出ないの。それは引き篭もりとかじゃ無いんだけど.....色々あってね」


「そうなんだな」


「うん。彼女ね。喘息持ちなの。それも酷い喘息。身体も弱いからね」


そうだったんだな。

思いながら俺は上代を見つめる。

上代は少しだけ俺の視線にビクッとしながら身体を萎縮させた。

するとその手を朝日が優しく握る。

そして抱き締めた。


「でも本当に有難う。身体弱いのに来てくれて」


「ゆ、友人の為だから.....当たり前だから」


「そうだね。.....今日終わったらみんなで是非とも遊ぼうか」


「それ良いね!!!!!」


何言ってんだこの杉山。

突然、大声を上げたせいで上代がビックリして朝日の後ろに隠れちゃったじゃないか.....まるでハムスターの様に。

俺達は杉山をジト目で見る。


杉山は、すんましぇん、とシュンとしながら顔を俯かせて謝る。

だけどそれは良いアイデアだね、と杉山は顔を上げて笑みを浮かべる。

それから、アニメのコスプレしない?、と杉山が上代に提案した。

俺は目を丸くしながら、お前.....、とジト目になる。


「そういう意味じゃないよ。ジト目しないで!?」


「いや。お前の事だからあっち方面かと」


「いやいや!無いから!」


本当だな?、と思いながら杉山を見る。

杉山は、本当です。.....多分、と答える.....。

コイツというヤツは。

多分って。


そして思ったけどみんなを巻き添えにしようとしてないか?

考えながら見ていたが。

こうずっと疑ってもキリが無いので止めてから朝日を見る。

それから聞いた。


「朝日。試合開始までの時間は大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ。まだ時間はいっぱいあるしね。早めに来たし。でも調整とかしないといけないから1時間前には集合かな」


「そうか。俺達も張り切って来すぎたからな。何処で時間潰そうかな.....」


「あ。それだったらこの辺りにカフェあるよ。行かない?」


「それいいかもですね」


祐子がニコッとしながら答える。

俺達は納得しながら頷き合ってから。

そのまま上代を見る。

上代は?を浮かべて俺達を見ていた。

俺は聞いてみる。


「上代。そこで時間を潰すけど歩いたりしての空気とかは大丈夫かな」


「や、優しいですね。.....大丈夫です」


「分かった。じゃあ行こうか」


「そうですね、はい」


七色さんが笑みを浮かべて返事をしてくれた。

そして俺達は上代に配慮しながら歩き出す。

あまり排ガスが無い場所を歩いたりして、だ。

上代はその間ずっと俺を見上げていた。

そしてこう呟いた気がする。


「やっぱり昔から変わってない.....」


と、であるが。

ん?、と思い背後の上代を見たが。

上代は朝日達と会話していた。

俺は?を浮かべて、気のせいか、と思いそのまま視線を前に向ける。

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