第18話 私は君が好きだから(編集)

ゴッホの向日葵の絵が好きだと思う。

それは昔から全然変わってない。

その為に俺はゴッホじゃなくても向日葵の描かれた絵がかなり好きなのだが。

そんな俺に向日葵の絵を贈ってくれた少女の凛花。


しかし実際は向日葵の絵を贈った人物は2人居たという。

つまり俺の記憶には誤差があるという事だ。

どうなっている、と思いながら俺は顎に手を添えながら考える。

食事をした後に、だ。

それから片付けをしている凛花に聞いた。


「凛花。俺はどうしたら良いのかな」


(どうしたいっていうのは?)


「このままで良いのかな。俺は」


(そうですね。東さんはこのままで良いです。だって東さんがどうにかしてどうにかなる問題じゃ無いですから)


「まあ確かにそうだけどな」


俺は考えながら凛花を見る。

凛花はニコッと笑みを浮かべて俺を見ていた。

そんな姿に俺は顎に手を添える。

そして、ふむ、と納得する。

それから立ち上がって伸びをした。


「凛花。有難うな」


(何がですか?東さん)


「お前が居た事によって真実に近づきつつある」


(そんな事は無いですよ。私は何もして無いです。過去を話しただけですから)


「.....それでもな」


俺は頭を下げる。

凛花に、だ。

そして顔を上げてから笑みを浮かべた。

凛花は驚きの表情を浮かべる。

お前のお陰だ、と言いながら俺は凛花の手を握る。


「これからも宜しくな。凛花」


(そうですね。宜しくです。東さん)


それから俺達は、じゃあどうしましょう、と会話した。

そして、午後3時だしな、という事と。

凛花が疲れただろうと思ってそのまま解散する事にした。

その中で凛花が俺の手をまた握ってくる。

赤くなりながら見上げる。


(東さん。今日は有難う御座いました)


「そうだな。今日は本当に有難う。来て良かった」


(私もそう思いました。東さんとこうして柔和に会話出来て嬉しいです)


「そうなんだな」


(はい。当たり前ですけど好きな人ですから)


俺は頬を掻く。

それから苦笑した。

凛花は俺の手をギュッと握ってから摩る様にしてくる。


大きな手ですね、と書きながら。

俺は、そうかな?、と首を傾げる。

大体男の手ってこんなもんじゃないか。


(そして苦労した手ですね)


「.....そうだな。互いにな」


(ですね。私はそんなに苦労して無いですけど)


「そんな馬鹿な。冗談はよせ」


(東さんよりかはマシですよ。喋れなくなっただけですから)


それは痛恨の一撃と言うんじゃないか?

俺は考えながら凛花を真剣な顔で見つめる。

凛花は、じゃあ別れましょうか、と言ってくる。


そして俺達は公園を出てからそのまま別れた。

俺はほうっと息を吐いて空を見上げる。

今日は良い日だったな、と思いながら、だ。



「それでデートどうだった?」


「そこそこだった。みんな居たしな今回は」


「みんな居た?何それ」


「とにかくみんなが居た。デートじゃない感じだったけど」


「アハハ。そうなんだね」


リビングにてそんな会話を俺達はする。

そして苦笑し合う。

祐子は勉強しながらソファに居てから俺を見てきた。


俺はその姿を見ながらうがいと手洗いをしてくる。

すると祐子が、そういえばお兄。私ってさお兄の大切な絵を昔破いちゃったよね、と言ってきた。

いきなり何だ?


「お兄の気持ちも知らないでごめんね」


「いきなりどうしたんだ?」


「いや。ゴッホの向日葵の絵をテレビで観てね。だから謝っておこうと思って」


「改めてか?気持ち悪いな。仕方が無いだろしかも」


「でも破っちゃったものは破ったんだからね」


まあ確かにな。

でも今更の事だ。

しかもその事に関しては今日、進展があったしな。

と話すと祐子は驚きの目をして見てくる。

え?嘘でしょ、と言いながら。


「いや。割とマジに。.....もしかしたら後輩がその人物かもしれないと思ったんだがな」


「じゃあアタックすれば.....」


「ところがそうはいかないんだ。俺の事が好きだったらしいけどその人物は2人居てなどっちがどっちか記憶が定かじゃなくて分からないんだ」


「おおう。そうなんだね」


「そういうこった。だから俺がその後輩を想い出の人と決め付けるには早いんだ」


「じゃあもう少し様子見だね」


そういう事だ、と言いながら俺は祐子を見る。

祐子はジュースを飲みながら、うん、と返事をしてきた。

しかし向日葵の栞.....後は誰が持ってんだろうな。


考えて此処でハッとした。

そういえばアイツ。

杉山が確か裏垢に写す様にして、だ。

俺は直ぐに杉山に電話した。


『はいはい。もしもし。どうしたの?』


「おい杉山。俺は今までずっと忘れていたけどお前.....向日葵の栞をあの例のアカウントで持っていたよな?あれは.....」


『ふむ。その件?』


「そうだよ!お前やっぱり態と色々な事をしてないか!?今日.....後輩から話を聞いたり話したりしたが.....」


『そうなんだね。あーあ。バレちゃうかな?』


何がバレちゃうんだ。

俺は?を浮かべながら返事を待っていると。

実はね。まあ私は君を遠い昔から知っているんだ、と答える。

え、と思いながら俺は話を聞いた。


『私は君が好きだよ』


「え」


『バレそうだし言うね。それに何だか気持ちも揺らいだし』


「お前.....嘘だろ」


『好きだよ?幼稚園の頃から』


「.....え、え?」


俺は愕然としながら話を聞く。

すると杉山は居心地悪そうな感じの声で、私は君が好き。昔からずっとね、と答えながら俺に話してきた。

そんな馬鹿な!?


『そもそも私が何の為に裏垢を創ったか知ってる?』


「分からない」


『私は君を探す為に創ったんだよ。あれは』


「.....そんな馬鹿な.....ってかじゃあ何で裏垢!?」


『それはまあ不器用だったしね』


コイツというアホは。

俺は額に手を添えながらリビングから出る。

そして床に座り込んだ。

それから杉山はこう話してくる。

私は君が好きでずっと探していた。だから私はアカウント運営は事実上もうしなくても良いんだけどね、と。


「お前な」


『でもまあ此処までやっちゃったし。アカウント閉鎖は出来ないかなって思って♪』


「いや。良いけどやり過ぎるなよ?」


『そうだね。今度からは自重してやるよ。ところで.....私、今度は外で露出をしようと思っているだけど.....』


「死んで下さい」


『そんな事言わずに。どんな感じが良い?』


アホなのかコイツは。

考えながらも。

何だか笑みが止まらなかった。


コイツが2人目の記憶の女の子、だという点で、だ。

全くな.....。

どいつもコイツも不器用だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る