第17話 向日葵の栞と過去の記憶(編集)

凛花が喋らなくなったのはイジメが原因だと俺は言った。

だけどそれだけが原因じゃない。

イジメを救えなかった俺にも責任があるのだ。

だから俺にも十分責任がある。

俺は考えながら目の前を鼻歌を歌いながら歩く凛花を見る。


「凛花。楽しいか」


(はい。とてもとても楽しいです。幸せです)


「.....そうか」


(私は幸せ者です。先輩にヘアも選んで頂けてそれ以上の幸せはありません)


「そうか。有難うな。そう言ってくれて嬉しい」


俺は言いながら凛花を見る。

凛花はニコニコしながら俺を見て来ていた。

今だが俺達は終着点の漫画コーナーに来ている。

この場所にはつまり漫画が沢山置かれている。

簡単に言えば誰でも読む事が出来る様に、であるが。


(先輩はどんなラブコメを読むんですか)


「ああ。ラブコメね。俺は本当に恋愛ものをよく読むよ。例えばすれ違いものとかな」


(そうなんですね。じゃあ私もラブコメを読もうかな)


「それは良いかもしれないな。新鮮味があるぞ」


(ですね。先輩有難う御座います)


俺はハッとして、ところで凛花。お前って今どんな漫画を描いているんだ?、と凛花に聞いてみる。

すると、私ですか?恋愛ものです、と書く。

その言葉に俺は目を丸くしながら凛花を見る。

凛花は赤くなりながら俺を見る。


(先輩との恋愛ものです)


「またそんな事を言うだろお前。恥ずかしいんだが」


(だって私は先輩が好きですからね。だから描いても良いですよね。ずっと好きでしたから)


ニコニコしながら俺を見てくる凛花。

俺は真っ赤に赤面しながら、そうですか、と返事をする。

すると、あ!先輩!あっちにも何かありますよ!、と書いて急に踵を返した瞬間。

そのままその場にバランスを崩して倒れた。

俺は驚愕しながら、危ねぇ!、と言いながら受け止める。


「.....」


「.....」


(せ、先輩。すいません。有難う御座います)


俺達は見つめ合いながら真っ赤になりつつ離れる。

周りでは大人達が、まあ可愛い、などと言っている。

恥ずかしかった。

思いながら足元を見ると。

そこに栞と本が落ちていた。


「凛花。何か落としているぞ」


(あ。すいません。有難う御座います)


拾い上げると。

それは.....俺が持っている栞。

つまりゴッホの向日葵の栞だった。

俺は見開きながら、凛花。限定品だけどこの栞持っていたんだな、と答える。

するとそんな栞を凛花は、はい、と言って答える。


(この栞は大切なものです。ゴッホの向日葵は私の思い出です)


「そうなんだな。どういう思い出だ?」


(そうですね。とある男の子に贈ったゴッホの向日葵の絵の思い出です)


「.....え?」


俺は?を浮かべて凛花を見る。

凛花は胸に栞を押し当てて、えへへ、と歯に噛む感じを見せる。

その反対に俺は顎に手を添えた。

それから考え込む。

すると凛花は、どうしたんですか?、と書いて見せてきた。


「凛花。その絵は詳しく誰に贈ったか覚えているか」


(詳しくは覚えていません。でも先程話した男の子に贈った事は覚えています。その後の事は覚えていません)


「.....」


俺は考え込む。

残念ながら貰った俺の絵と比較したいが。

それは幼い妹が破ってしまったのだ。


だから比較のしようがない。

だが、その。

なんでこんな曖昧でもピースが嵌まるのだ?

もしかして.....いや。

でも。


「凛花。もしかしてだけどお前の男の子って俺かもしれないぞ」


(ふぇ?)


「.....俺な。ゴッホの向日葵が好きなんだ。そしてレモネードの販売もしていた。だからお前の思い出が.....一致するんだ」


(え、え、え!?)


俺は顎に手を添える。

それから俺をこれまで見た事のない赤面で俺を見てくる。

そして顔を覆う。

俺はその姿を見ながら、凛花。もしかして.....その、と言葉を発したが。

その際に凛花はこう言ってきた。


「だとしても私.....だと、は。かぎらない、です」


「え?」


確か.....2人居ました。

その時の事ですが、と文章を書いて切り出す。

俺は見開く。

そして顎に手を添える。

曖昧だ.....そこら辺は、と思う。


「クソッ。肝心な所の記憶が.....」


(でも先輩。嬉しいです。その時の男の子が先輩だなんてこんな幸せって無いです)


「.....ああ。凛花。有難うな。記憶を持っていてくれて」


(いえ。私も幼い頃の記憶なので.....曖昧しか持ってないです)


「いや。十分だ」


俺は言いながら凛花を見つめる。

凛花は赤面しながら周りを見渡してから。

そのまま、じゃ。じゃあ漫画でも読みましょうか、と文章をスマホに書く。

俺は、そうだな、と返事をしながらそのまま椅子に腰掛ける。


有名なラブコメでも探そう。

そう考えながら。

しかし心臓が.....バクバクしている。

どうしたものか。



(先輩。公園に行きましょう)


「.....だな。公園に行ってから何か食べるか」


(そうですね。そこでアーンしてあげます)


「冗談でもキツイよそれは。恥ずかしい」


(アハハ。でもやりたいです)


俺は苦笑しながら凛花を見る。

丁度、ラブコメを1時間ぐらい掛けて何冊ぐらいか読み終えた俺たちは外に出てから取り敢えずご飯を食べてから解散という形になり。


俺達はご飯を食べる事にして移動をした。

お土産も買ったが.....本当に良い感じの物が沢山で良い思い出になったな。

考えていると凛花がスマホを見せてきた。


(先輩)


「何だ?」


(私、先輩じゃなくて東さんって呼びたいです)


「そ、それは.....うーん」


恥ずかしいんだが。

先輩じゃなくてか!?

俺は真っ赤になる。

だが凛花は俺を赤くなりながらジッと見てきていた。


「分かった。お前の呼びたい様にしてくれ」


(はい。じゃあ東さん。愛してます)


「それはやめい」


(アッハッハ)


俺は凛花と笑い合いながら公園にやって来た。

そして凛花は風を感じている。

俺に対してニコニコしながら、であるが。

可愛いもんだな、と思う。


「凛花。似合っているな。そのヘアピン」


(有難う御座います。東さんが選んでくれた。幸せです)


「.....」


彼女が俺の探し求めている女の子か。

それともそのもう1人が俺の探している女の子なのか。

考える日々が続きそうだが。


だけど。でも。

きっともう直ぐ全部明らかになる.....かな?

思いながら俺は凛花を見た。

そして笑みを浮かべた。

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