芦川ヒカリの憂鬱Ⅱ 2


 俺のよりかかる柵に、男がやって来て同じポーズでよりかかる。金網がきし、と揺れて横を見た。

 それなりに利発そうな青年である。髪質はふわふわで茶色がかった黒。とても外に出る服装とは思えないヨレヨレのシャツ。首元が伸び切ったスウェットに、便所サンダル。ちょっとコンビニに出て来て、ついつい散歩になってしまったような装いだ。

 眼鏡の奥の瞳がなにか疲れているような、困っているような色をしている。どうにも声を掛けて欲しそうだ。どこかで見たことがある気がするが、設定資料集かアニメのモブかなにかだろうか。まさか、機関の構成員とかじゃないよな?


「……なにかあったの?」

「声をかけてくれるのだな」

「かけてほしそうだっただろ」

「ああ、そうだな。そうするといい。会話というものはそうやって始まる。会話はリリンが生み出したまあそれなりの文化だ」


 実はな、と眼鏡の男は独特の口調で話し始める。

 彼は部活動に無理やり参加させられて休日にこんなところにいるらしい。同じ身の上ってだけでもうますぎる偶然で、それも俺が一人の時に現れるんだからよく出来た話である。風貌と言動の濃さのせいで、警察に捜査協力をしている服役中の異常犯罪者キャラみたいに見えるが、まあ悪い奴には感じない。

 ミステリー研究部の部員らしい彼は、オカルト研究会の友人に命じられて心霊スポットを検証しているそうだ。嘘の噂を流してその伝搬率を調べたりもしているらしい。

 なるほど、この異常な量の噂はこいつらのせいか。そんなのを同じ日にやられたんじゃハルヒも成果なしだろう。逆に言えば、なんだかんだこんな知らないやつを巻き込んでまで、ハルヒは起こりえない現象を正しく修正しているのかもしれない。まったく真面目な神様である。


「俺は家で小説でも読んでいたいのだが、なぜだか妙に付き合わねばならん気がしてな。そこにお前がいた。これは偶然とは思えん。もはや必然。奇跡というよりは運命と呼ぶべきだろう」

「新手のキショいナンパか?」

「いいや。お前はそんな軟弱な誘いに乗る、程度の低い女ではあるまい。お前はそんな人間ではないはずだ。どうなんだ? え、そうなのか? 嘘だといってよ、バーニィ」

「パニクってるところ悪いがあんたは俺のなんなんだよ」

「なんなんだ。そうか、なるほどそう来るか。まあ、バーチャル美青年受肉お兄さんとでも名乗ろうか」


 もしかするとこいつ、電波系の人なのかもしれない。いや、SOS団なぞに所属している時点で他人のことをとやかく言える身分ではないのだが。


「あんたも色々大変そうだな」

「ともあれ慰めてくれるのだな。ボーテ、100点。全体的に素晴らしい。お前の親はさぞかし大喜びであろう。人徳の塊。かぐや姫もかくや。かぐや姫をかくやって踏めるな」

「かぐや姫って人徳あるか?」

「さておき俺は酷い目にあった。なぜ休日にこんなことをさせられねばならん。労働はクソ。はっきりわかんだね」

「災難だったなあ。奇遇なことに、こっちもそんな感じだよ。まさか北高じゃないよね?」


 北高のオカ研やミス研はハルヒ曰く、終わっててくだらないらしいが。


「光陽園だ。そっちは北高か。北高……ふむ。なぜだか妙にときめきと萌え、そして耳馴染みのある言葉だ」

「そりゃそうでしょ。そんなに遠くの学校ってわけでもないし」


 その単語に俺はぴくりと反応する。光陽園と言えば、涼宮ハルヒの消失では重要な役割を担う学校である。それを名乗る存在が向こうから接触してきたのは本当に偶然か? それとも俺が疑り深くなってるだけなのだろうか。

 いやでも、ここまで濃い話し方のモブがアニメとかにいたら注目してしまうのは普通だろ。実際、俺の知る限りハルヒシリーズにこんなイカレたやつはいないと思うんだけど。じゃ、なにか“逸脱”とかいう問題が起きてるってことだろうか。


「どうにもならない時は、訪ねてくるが良い。相談に乗ってくれた礼はしよう。お前にとっての俺は、安心と実績の男だ」


 なぜ、こんなにもこの男が気にかかるのだろう。誰かに似ているような気がする。こういう、妙な話し方をする、眼鏡の、オタクみたいなやつが記憶の中にいなかっただろうか。いたとしたら忘れないと思う存在感なんだが。


「ついでと言ってはなんだが、とっておきのネタをくれてやろうではないか。いいな、この先に神社がある。そこに行くのだ。必ず、お前のクラブの部長を連れて」


 騙そうとする素振りなどは感じない。むしろ、信じていいような気すらする。しかし、妙に怪しい。マジでどこかの組織なのか?


「……誰なんだ? なんの目的があって俺にそんなことを話す?」

「姿や名に意味などない。いや、ある種お前にとってはこの姿であることにこそ意味があるのだろう。俺は謂わば現象であり、装置に過ぎないのだ。お前が不審に思い疑うからこそ存在する。こう言い換えてもいい。“俺はここにいる”だ」

「……どういう意味だ? なぜお前がそれを言う?」


 私はここにいる。それは、ハルヒが発した最も大きな意味を持つメッセージだ。なぜお前がそれを知っている? いや、なぜ俺はそれを疑う? こいつなら知っていて当然じゃないか。


「見落としはないか? 言動に気を配りすぎて、状況を見誤っては本末転倒だ。その時がくればもう待ってはくれない。俺に聞かなければならないことを、今のうちから考えておくといい。そうしていつかのように予言して見せるがいい。お前は昔からそそっかしいからな。これはマウントです」


 頭が、痛い。

 男が金網から手を離す。


「おい、待て。証拠をおいてけ」

「まだそんなことを言っているのか。俺の顔を忘れるようでは、このせんせいキノコれるかわからんぞ。鈍妹よ」


 一陣の風が吹く。


「すべてはシュタインズ・ゲートの選択のままに。エル・プサイ・コングルゥ」


 男は、踏みつぶされて汚れた桜の花びらに溶け込むように、唐突に消え失せた。風に攫われるのが世界一似合わねえ見た目だろ、というツッコミは置いておいて。

 今、なんていった? ドンマイ? 俺をそう呼ぶやつはこの世に一人しかいない。そして、電話では必ずする、お気に入りのその挨拶。だが、声も顔も朧気で、どこか違う気がする。その姿を探しても、もうどこにもない。その見た目の情報を、俺は何も思い出せない。


 ぞっとした。

 こんなことがありえるのか? そんな弊害があるのか? ここに来て何年も経ったわけではない。それなのに血の繋がった人間の顔がよくわからない、なんてことが。

 あの人はまだしも、親やバイト先の人間なんてもっと思い出せない。その顔を、声を、思い出そうとも思わなかった。付き合いの濃い人間すら、すぐ隣にいてもわからなかったくらいなんだ。当然と言えば当然なのかもしれない。

 人間の顔の認識なんてその程度だ。毎日会っている相手の顔でも、本当はなんとなくでしか覚えていない。見ているものや覚えていることなんていうのは、曖昧模糊として捉えどころがない。モンタージュだってぴったり同じ顔は描かない。それらしいことに意味がある。

 それらしいからこそ、あいつは俺の兄の姿をしていた。寒気にしゃがみこんでいると、どたどたと足音が聞こえてくる。


「おい、今のやつどこに行った?」

「芦川さん、あの……芦川さん……大丈夫ですか?」


 キョンと朝比奈さんだ。俺は身体と心を奮い立たせて、懸命に返事をする。あいつはなんと言った? 反芻する。


「あ、ああ……行っちゃったみたいだね……」

「お前、今朝も絡まれてたんだろ? だから一人になるなって……顔色悪いぞ。マジで大丈夫か?」

「あーうん、全然平気……」


 あいつは、姿形や名前に意味はないと言った。つまり、別に本物ってわけじゃないんだ。ただ、その見た目を借りて出て来た何者かに過ぎない。そりゃそうだ、あいつが兄貴自身でもあいつの残留思念でもなんでも、あのドン引きオタクは絶対に長門と接触したがるはずだ。長門──、長門か。光陽園学院。長門と繋がらないこともない。彼女に後であれについて聞いてみようか。

 そして、あいつがあの姿をとっている以上、俺を脅かしにきたわけでも、動揺させにきたわけでもない。間違いなくヒントを寄こしにきた。回りくどいだけで電波な説明に意味はない。元々そういう人なのだ。

 ヒントは「どうにもならない時に光陽園学院のミス研を訪ねろ」「ハルヒと神社に行け」「聞きたいことを考えろ」の三つだろうか。

 いつ、どうやって使うのかは別として、俺はそれらをメモする。オカ研なんて単語が出るわけだ、オカルトにもほどがある。いるはずのない人間が現れる? ハルヒが知ったら大喜びだ。それでも、ハルヒじゃなく俺の前に出て来たなら、まだ世界は理性を保っている。


「芦川?」

「ああ、ごめんねキョン。全然大丈夫。考え事してただけ。面白い噂を聞いてさ」

「そいつを涼宮に教えてやるのか」

「そりゃそうだよ。そういう会だからな」

「それって……大丈夫なんですか?」

「大丈夫だと思いますよ。ミスリードもばら撒かれてるらしいですし」


 あいつが実体のないナニカだというのならば。案外、嘘の噂を広げたのは古泉辺りなんかじゃないか、と思う。変なものを見つけられては困る。だから、ネットに噂をばら撒いた。こういうの、長門もやりそうだからな。

 長門と古泉が結託して、俺の兄の姿をしたなんらかに助言をさせたって線はあるか? できないことじゃないとは思うが、パズルのピースとして嵌め込むには欠けている。神社に関しては行かなきゃいけないんだろう。噂ではオーパーツがあるとかなんとか。あまり信用してはいなかったが、こうなると気になってしまう。

 朝比奈さんは不安な顔をしていた。まあ、あれの言葉を俺が信じるにしても、その信憑性を朝比奈さんたちに説明することはできない。親族の姿をしていました、なんて詐欺師が一番に使う手だ。ホームシックで見た幻だと言われるよりは、詐欺師の方がまだマシだけど。


 考えたいことがあるから、と俺は変わらず二人の後ろをキープする。朝比奈さんとキョンがデートのように雑貨屋などを冷かしている間、俺は声を掛けてくる人間を捕まえては付近の噂を虱潰しに調べて行った。驚くほどにそれらしいものは見つからない。

 同じ目的っぽい人たちに声をかけても答えは変わらない。それでも確信をもって、俺はハルヒを神社に誘うことに決めていた。もし今日断られたとしても、明日、古泉を説き伏せてでも直接誘う気だ。

 なぜって、不気味なくらいに誰も神社には検証に行っていなかったからだ。ただの噂にこれだけの求心力があって町がにぎわっているのに、誰もそこは調べないなんてことがあるのか。そんなの、偶然じゃ片付けられない。


「なあ、どうしてそこまで涼宮に付き合ってやるんだ? てきとうに流しておけばいいじゃないか」


 アクセサリーの露店を眺めたキョンがそんなことを言う。


「こういうの好きなんだよ。ゲームみたいで」

「ならあいつと脱出ゲームとか、謎解きイベントに行けばいい」

「俺と二人じゃ来ないだろうな。古泉も呼べば来るかもしれないが、それでも確定じゃない。1クリでも出れば別だけど」

「そうか? お前が呼べば、涼宮はまんざらじゃない顔で着いて行くと俺は思うが」


 キョンがそれを言うかって感じだ。どう見えてるかは知らないが、真実っていうのは近い人にこそ姿を隠すのかもしれない。


「朝比奈さんが誘えば、あるいは行くかもね。それか、キョンなら」

「それこそ俺ならどこに呼んでもうるさいの一言で終わりだろ。例え無人島で遭難してやっとつながった電話でも、あいつは躊躇いなく切るだろうさ」

「キョンは女心がわかってないなあ」

「なんだそりゃ。例えば?」

「横で朝比奈さんがアクセサリーを眺めてるのに、俺に話しかけちゃうとこ」


 キョンが振り向くと、朝比奈さんはちょうど髪留めを自分の頭にくっつけたり離したりして鏡を見ているところだった。俺はキョンと一緒に彼女の横にしゃがみ込む。このレジンのやつとか可愛いな。青くてきらきらしてて。


「朝比奈さん、どれが気に入ったんですか?」

「あ、芦川さん。うーん、これとこれで迷ってます。でも、ちょっと冒険してこれもいいかな……?」

「白とピンクか。どっちも似合いますね。でもこれから夏だし、そっちのも爽やかでいいなあ」


 朝比奈さん、めちゃくちゃ普通に「芦川さん」って呼んじゃってるんだよな。まあ、みんな気にしてないみたいだしいいけど。俺はお金を払って、露天商から輪切りの檸檬がモチーフになった飾りと、同じタイプのイチゴとキウイを購入した。

 朝比奈さんに檸檬を渡す。


「はい、朝比奈さん」

「ふぇ!? だ、だめです。わたし、先輩なので、払います!」

「だめです。今日朝比奈さんは勇気を出したので。これは頑張ったで賞の景品ですから」


 朝比奈さんはぼのぼのみたいな汗を出しながら、宝物みたいに両手でピン留めを受け取る。へにゃっとした笑顔で嬉しそうに髪に宛がっているのが愛らしい。キョンが悔しそうな顔で俺を見た。


「じゃあなにか? 今のが女心だと言いたいのか」

「今のは友達ごころ」

「全然わからん」

「ハルヒ心がわかる方法ならあるよ」

「知りたくないが言ってみろ」

「これを一緒に調べること」


 メモ帳のチェックリストを見せる。キョンは溜息を吐いた。朝比奈さんの髪に檸檬のピン留めを差し込むと、俺たちは連れ立って噂を調べ始める。キョンはしばらく抵抗していたようだが、結局ぶつくさ言いながら着いてきた。

 時計を見てさりげなく駅に戻るように誘導しつつ、探索を進める。これなら、サボっていたと因縁つけられてキョンが奢ることもないだろう。なかなか鮮やかな手際だったんじゃないだろうか。




 十五時。

 電話をかけようとしたハルヒ一行の前に俺たちが現れる。目敏く朝比奈さんの髪留めに気づいたハルヒに、イチゴのピン留めを奉納。女子がみんなでおんなじのを着けてるってかわいくていいよね。こういうのを見ているのが好きなんだ。


「あんた、遊んでたの?」

「違うよ。噂を聞くのに何も買わないんじゃ、教えてくれない人もいるんだ」

「ふーん。収穫については喫茶店で聞くわ。和菓子のおいしそうなところ見つけたの。そこでおやつでも食べて、それから午後の部ね」

「わーい、和菓子だ」

「これ、あんたのはないの?」

「ないよ。女の子だけにプレゼント」

「これだからヒカリは」

「そんな怒り方ある!?」


 言いながら、長門の髪にもピン留めをつけてやる。なんの感情もない瞳で見上げているが、まあいつかお揃いが楽しくなることもあるかもしれない。その時がくるのを楽しみに待っていよう。

 和風喫茶店につくなり、イチゴのピン留めで前髪をまとめたハルヒが俺たちの調査報告を聞き始める。向こうも同じ感じだったらしく、古泉は頭をかいていた。お前の仕込みのくせに。それに、それでいいんだよ。マジでな。

 俺は羊羹のセットと抹茶を頼むと、挙手する。ぶっちゃけ本筋の流れに逆らう行動だけど、ダメそうなら長門が止めるだろうと思っているところがあった。


「まあ、それなりに調べてたみたいね。大方ヒカリがやったんでしょうけど」


 バレてる。


「そのヒカリくんから提案。効率考えたら三組にしないか?」

「いいこと言うじゃない。あたしもそう言おうと思ってたの」


 今やSOS団の団員は6人だ。二人づつに分かれるのが最も好ましい。さきほどと同じくじで無印を二つ、赤を二つ、青を二つ用意する。俺は出来ればハルヒと二人になりたい。さっきの偽兄貴の言葉は「部長を誘って行け」というものだったので、本当は何人でもいいのかもしれない。ただ、俺としてはハルヒと二人になりたい。この世界に来て、ハルヒとは全然二人きりになれていないし、できれば神社には二人きりで探索に行きたかった。俺は、部長と行くという言葉を二人で行くと解釈したから、それに従いたい。

 俺の持てる予知じみた知識は涼宮ハルヒシリーズの小説やアニメを元にしており、それはキョン視点で描かれている。それらの記憶を元に起きた事件に対処するのでは、どうしても一手足りない。キョン視点ではハルヒの考えていることがわからなさすぎるのだ。

 そも、俺はキョンが見ていない場面のことは知りえない。それらは推理や想像によってしか補えない。無論、俺はキョンの家に住み込んでいるわけでも一心同体でもないので、まったく同じ出来事に遭遇し続けることもできない。どこが規定の出来事かどうか見極めるには俺の行動範囲から見る情景ではあまりに少なすぎる。

 それでも物語が大筋から逸れないでいるのは、朝比奈さんの言う「俺がいる以上しょうがない枝分かれ」というやつなのだろう。だから、通常の読者としては得られない視点の出来事について、俺は積極的に情報収集すべきなのだ。その相手としてハルヒ以上に相応しい人間もいるまい。

 もちろん、一番仲良くなりたいのが涼宮ハルヒだというのも大きな理由だ。


「ちなみに、ここ奢るからってハルヒを指名したりは」


 ハルヒは少しだけ驚いた顔をする。そして、腕を組んでドヤ顔で俺の提案を跳ねのけた。


「できないわ。やる気は買うけどね。どうしてもあたしと一緒に探索したかったら、神にでも祈ることね。くじ引きは運よ、運」


 それ、あんまり自信ないなあ。なにせ、ハルヒはキョンと休日を過ごしたいけれどうまくいかないで腹が立つ、というのがセオリーなのだ。そこに俺が割り込むには、それなりの錘を天秤に乗せる必要があるだろう。

 俺は、彼女の言う通りに目の前にいる神様に祈った。ひたすらにハルヒの目を見つめ、くじを引いた。


「赤だ」

「へえ、神はあんたに味方したみたいね。じゃあ、宣言通りここはヒカリの奢り」


 俺はキョンと共に青いくじを見つめる長門に視線をやる。これをお前がやったなら、やっぱりさっきの助言もお前なのか。長門は何も映していないような瞳で立ち上がり、キョンが追いかける形で外に出ていく。

 古泉は朝比奈さんと、マジでカップルみたいなやり取りをしながら立ち上がる。なに肩を竦めてるんだか。

 俺は会計を済ませると、ハルヒにどう切り出したものかと思案する。神社のオーパーツが、なんて言っても鼻で笑われるだろうか。幽霊に導かれてという話をすれば気にはなるだろうが、そもそも幽霊がいたのに呼ばなかったことを怒られそうだ。


「いきましょ、ヒカリ。あんた、なにかアテがありそうな顔だわ」

「そう期待されると、不思議な事件のほうも委縮しそうだけどな」


 意外にも季節先取りの向日葵みたいな満開の笑顔で、ハルヒはまだ何も言っていない俺の手を引いて走り出した。

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