17:初めての依頼達成報告!

 薬草の採取、コボルドとの初戦闘を終えた私は街へと戻り、今は冒険者ギルドで依頼の達成報告を行う為に受付に並んでいた。


「あの、アルスさん少し聞きたいんですけど」

「リナ、どうかしたか?」

「薬草ってどれくらいで売れるんですか?」

「んー、俺には分からないな」

「えっ、そうなんですか?」

「俺には薬草と言うか採取系の知識は殆ど無いんだよ。

 そう言うのはエリナに丸投げしていたしな」

「かと言って私も詳しく無いわよ?

 薬草に似たような葉っぱがあれば根元だけ残して採取して受付に渡してって感じだったもの」

「確か、鑑定料がかかるから割が良くないんだよな」

「そうなのよね、鑑定スキル取得しようとすると他の戦闘スキルを上げられないから、皆有能なスキルと分かっていても取得に踏み切れないもの。

 だから皆それっぽいのを見つけたらお小遣い稼ぎになるかもって感覚で採取していたわね」


 二人が言うには薬草を鑑定してもらうとそれなりにお金がかかるのもあってそんなに利益が出ないのだとか。


 だから駆け出しの冒険者が依頼のついでに薬草に似たものがあれば採取して出す事が多いらしい。


 ただ、毒草なんかも稀に混じる事があるようで、その辺りが混じれば少し良い利益になる事もあるんだとか。


 毒草も錬金術師が利用するらしく、病気の治療薬を錬金する際に必要になると言われているみたい。


 でも基本的に雑草が多いようで銀貨になれば良い方とエリナさんが教えてくれた。


 でも逆に薬草を完璧に採取して持って行くことが出来ればかなり良い稼ぎになるんだとか。


 王都なんかでは薬草の知識を持つ者を錬金術師や薬師が抱えている事もあるんだって。

 私もそんなレベルになってみたいなぁ。


「それでは次の方どうぞ」


 アルスさん達と話をしていたら、私の順番が回ってきた。


「はい! 薬草の買取と、コボルドを倒してきたので査定をお願いします!」

「薬草ですね、こちらに買取したい物を載せてください。

 コボルドは討伐証明部位をこちらの上にお願いします」


 受付嬢のお姉さんの言う通りにしてコボルド三匹分の証明部位と今日私が採取した薬草を少しだけ自分用に残しておき、残りの全部を渡した。


「け、結構多いですね⋯⋯雑草が混じっていると買取価格が低くなりますし、鑑定料も高くなりますが大丈夫でしょうか?」

「はい! 大丈夫です!」


 そしてお姉さんは薬草を一度他の人に渡し、お金を用意し始めた。


「まずこちらがコボルドの討伐報酬になります」


 そして渡されたのは銀貨が三枚だった。


「銀貨、三枚⋯⋯」


 私が本当の意味で稼いだ初めてのお金。


 命を対価にした結果ではあるけれど、今までの事を考えると二人に出会えなければ絶対に稼げなかったであろう金額。


「アルスさん、エリナさん、本当にありがとうございます!」

「い、いいのよ。

 私達冒険者は助け合いよ。

 だからリナもあなたみたいに困った人がいたら手を差し伸べてあげて頂戴」

「お礼なんて必要無いさ。

 俺からもエリナと同じだ。

 余程失礼な奴なら良いが、本当に困っている奴がいたら助けてあげてくれ」


 二人はそう言いつつも少し嬉しそうな顔をしていた。


「あ、但し、リナと同じくらいの年のやつ限定だからな、そこは勘違いしちゃいけないぞ」

「それもそうね、私達の年齢で困るような人は計画性のない人が多いから、自業自得だもの。

 それでもリナちゃんが助けても良いと思える人なら良いと思うけれどね」

「わ、わかりました!」


 そんな話をしていると、何やら受付のお姉さんが薬草を鑑定した人と話し込んでいる。


 そして、話が終わるとお姉さんは私にとある事を提案して来た。


「すいません、少しお話したい事が出来ましたので別室にて対応させて頂いても大丈夫でしょうか?」

「だ、大丈夫ですけど⋯⋯何かありましたか?」

「いえ、大した事⋯⋯ではありませんので」

「リナ、ここは一緒に行ってやるから安心しろ」

「そうよ? 私達がいればそうそう問題は無いわ」

「ありがとうございます!」

「では、ご案内致しますね」

「お願いします!」


 そして私はお姉さんに案内され、最初にアルスさん達と入った会議室のような場所の隣にある小さめの部屋へと移動した。



「突然申し訳ありません」

「い、いえ、大丈夫ですよ!」


 部屋に入るなりお姉さんは私に謝罪をし始めた。

 何故謝られるのかよく分からないけれど、薬草が何らかの問題を起こしたのはなんとなく理解出来た。


「とりあえず単刀直入に言いますと、本日納品して頂いた薬草ですが、全てが薬草でした。

 あの量を正確に納品して頂いたのは初めてで、金額が相当なものになりそうでしたのでこちらへご案内させて頂きました」

「相当な金額⋯⋯?」


 薬草ってそんなに高い物だったっけ?


「まず最初にこちらの薬草、鎮痛効果のあるディペイリーフ、こちらが十束ありました。

 こちらが本来一束で銀貨五枚なのですが、こちらの処理が完璧である事、それも加味した上で一束銀貨六枚で買取をさせて頂きたいと思います」

「ひ、ひとたばでぎんかろくまい!?」

「それと、こちらは傷を治す作用のあるメディ草で、こちらは一束で銀貨七枚ですが、こちらも処理が完璧だった為、銀貨八枚での買取をさせて頂きたいと思います。 ちなみにこちらは五束ありました」

「えっ? えっ?」


 私は自分の想像の数倍も高い買取金額に目を回していた。


「薬草って正確に採取出来るとここまで高いのね⋯⋯」

「正直、驚いた」

「一番驚いてるのは私ですよ!?」

「えーと、まだあるのですが、大丈夫でしょうか⋯⋯?」

「「「まだあるの!?」」」


「え、次が最後ですが⋯⋯滋養強壮、状態が良ければスタミナポーションの素材にもなるパワフルリーフですね、こちらが一束ありました。

 こちらが一束で金貨一枚での買取になるのですが⋯⋯」

「まさかこれも銀貨一枚上乗せかしら?」

「いえ、これはそれ以上です」

「どう言う事ですか?」

「スタミナリーフの場合は、処理に失敗し、保存状態が悪いと食用以外での使い道が無くなってしまう貴重な薬草なんです」

「つまり処理が最適だったから、食べる以外の、つまりはスタミナポーションの素材として使える品質だった⋯⋯って事ね?」

「スタミナポーションはとても貴重な物で、ポーション一個で金貨十枚ほどで取引されますからね」

「それで、その一束でいくらほどなのかしら?」

「金貨、五枚です」

「「「金貨五枚!?!?」」」


「それで合計ですが、ディペイリーフ十束で金貨六枚、メディ草で金貨四枚、スタミナリーフで金貨五枚、合計金貨十五枚で買取をさせて頂きたいと思います」

「す、凄い金額すぎて全く想像もつかないです⋯⋯」

「良かったなリナ、これで安泰じゃないか」

「でもそんなお金持ち歩くの怖いですよ⋯⋯」

「それで私から提案がありまして、こちらから商業ギルドへ連絡致しますので、商業ギルドで口座を作りませんか?」

「口座、ですか?」

「そちらへお金を預けておけば商業ギルドのある場所でならどこからでもお金を引き出す事が出来ます」

「それは便利そうですね⋯⋯」

「勿論冒険者ギルドでも引き出しは可能ですよ」

「口座作るのにはお金は⋯⋯?」

「銀貨一枚必要ですが、如何ですか?」

「うーん⋯⋯どうしましょう⋯⋯」

「商業ギルドで口座を作ると言っても全て冒険者ギルドで手続きは代行出来る様になっていますので、お手数はおかけしませんよ?

 それに商業ギルドのカードを持っていれば対応したお店でギルドカードからのお支払いも出来るので持っていて損は無いと思います」


 お姉さんにそう言われた私は、お金を持ったままで過ごすデメリットの方が大きいと思ったから、商業ギルドで口座を作ることにした。


「じゃあお願いします!」

「かしこまりました、では基本的な情報などは冒険者ギルドの登録情報から利用させて頂きますね」

「はい!」

「では、こちらの仮カードをお渡ししておきますので、明日以降に商業ギルドへ受け取りに行ってくださいね。

 そうすればちゃんとしたカードを渡して貰えますので」

「分かりました!」


 そしてお姉さんから仮カードを受け取った私はアルスさん達と一緒に孤児院へと帰る事にした。


 本来ならここでお別れの予定だったんだけど、私のスキルの詳細を知りたかったのと、私もアドバイスが欲しかったから、孤児院でスキルの確認をする事にした。

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