ギャルの愛妻弁当

 授業中は会社アークの事ばかり考えていた。

 何から始め、どんな目標を設定していくか……恋する乙女のように色々考えるだけで時間はあっと言う間に過ぎた。おかげで授業は何も頭に入らなかった。



 気づけば昼休みになり、空腹に襲われた。璃香と一緒に……と、思ったが女友達と会話しているな。だが、俺の視線に気づくなり、手を振ってくれた。目立つので止めて欲しいが、なんだろう、この言葉では言い表せない気持ち



 最近の俺は何か変だ。

 それが何なのか――分からないけど、心臓がドキドキする。この気持ちはいったい……? 不思議に思っていると、璃香が「おまたー!」と元気よくやってきた。今更だけど、スカート短いな。



「昼飯はどうする? 璃香」

「あー、実はお弁当を作ってきたの。一緒に食べよう」

「え、璃香って料理できるんだ」

「小さい頃からやってたし、大得意よ~。趣味みたいなものかな」


 これは意外すぎる。

 でも、料理ができるというのは女子としての魅力が増す。しかも、それがギャルともなると鬼に金棒かもしれない。



 ともかく屋上へ向かった。



 教室を出て階段を上がっていく。この春になったばかりの時期は、少し寒々しいので入ってくる生徒も少ない。今日は貸し切りのようだな。



「ラッキー、誰もいないや」

「良かった。これならイチャイチャ出来るね」

「なっ! 璃香、それ冗談だよな?」


 聞き返すが、璃香は無視して俺の腕を取る。


「ちょっと寒いね」

「……璃香、近いぞ」

「この方がドキドキして温まるじゃん」


 優しい声で璃香は、俺の腕を引っ張る。柵の方へ向かい、背を向けて座った。璃香が隣に座り、弁当を広げた。


 白米とだし巻き卵、ウィンナー、ミートボールに唐揚げにコロッケという豪華な弁当だった。これが手作り……すげぇ。


「美味そうだな」

「はい、あ~~ん♪」


「ガチィ!?」


「うん、ガチ。はい、食べて~」



 いきなり、だし巻き卵を向けられた。まさかの“あ~ん”とはハイレベルすぎる。こんな経験は今までない。璃香が初めてだった。


 相手が璃香で良かったかも。

 俺は勇気を振り絞り、ぱくっと戴く……すると、口内にふわっとした絶妙な風味が広がった。



「う、うまぁぁぁっ」

「でしょー!」

「……驚いたよ。これは俺好みの良い味付けだ」

「ほんとー! 明日から、賢の分も作ってあげるね。愛妻弁当ねっ」



 感想に歓喜する璃香は、そう宣言した。マジか! ていうか、愛妻弁当なのかよ。いつの間に結婚したんだ、俺。


 そうして手作り弁当を堪能。お腹を満たしたところで、俺は今後のプランを話した。



「璃香、アークなんだが」

「まって、その前に聞いて欲しい事があるの」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る