第20話 死者行進 (2)
「民のためにも何としてもやつらを食い止めるのだ!」
東門の防衛を任された聖教騎士団副団長は先ほどとは比にならない量のアンデッド達を前に己の勇気と部下を奮い立たせ必死に東門を守り抜いていた。
「ぐぁぁぁつ」
また一人仲間がアンデッド達に吞み込まれていく。しかしそれに気を取られていると自分の命もすぐに同じ道を辿る。必死に一対一の立ち位置になるように立ち回るが複数体のアンデッドハイ・オークに囲まれ自分も先ほどの仲間と同じ運命をたどるその時に彼は消え入りそうな声でつぶやいた。
「テレス様どうか我々をお助けください・・・」
「テレス様じゃないが助けてやるよ」
自分より若い少年の言葉が耳に届くと同時に周りのハイ・オークの上半身が斜めにずれ落ちる。次の瞬間目の前に白いロングコートを羽織った人間が現れる。
「き、君は?」
「それは今はどうでもいい、そんなことより見ての通り防衛部隊は半壊している。俺がここのやつらは片づけるからお前は現在の残存騎士数で戦闘に支障の無い者を再編して他の門の防衛に回せ」
的確な指示が飛んでくるのを副団長は内容を受け止めながら疑問を呈する。
「流石にこの量を一人でなんて無茶です。どこの誰かしりませんが死んでしまいます」
「いいから、俺のことは気にするな。指示出したからな」
そう言うと目の前のロングコートの少年の姿がブレ、目の前のアンデッド達が仕留められ始めた。
「彼は一体・・・?」
湧き上がる疑問の答えを探そうとする頭を切り替えて、副団長は指示を飛ばす。
「全員集まれ」
「さてと、数がなかなかに多いな」
空中をありえない高機動でアンデッドの隙間を縫うように飛び、アンデッドを切り飛ばしながら神代は次の手を考えていた。
(魔法陣を潰すとなると同じ量の魔力をぶつけるぐらいしかないから魔力はこいつらを討伐するのにあまり使いたくないんだよなぁ)
今回は四方全ての門から来ているから、最低4つのを潰さないといけないのでエコに行かないと魔力切れを起こしてしまう。それゆえアンデッドをエリシアほどでは無いもの自分の使える聖属性の中でもこのような場合に適する広範囲浄化魔法で殲滅することはできない。
(殲滅速度上げるなら聖剣使うことなんだが、使うと聖教騎士団辺りに感づかれそうだしこのまま出力上げるかなぁ)
神代の魔法の特筆すべき点は他に類を見ないほどの圧倒的な精度である。先のフローズヴィトニル戦でも使っていた簡単な魔法操作は体全体の動きを風魔法で補助するものだ。思った通りに体が動くように風で体を押すと同時にその加速で体に負荷がかからないように進行方向にも風を起こして体への抵抗を相殺している。これにより空中での高機動性を獲得知ることができた。賢者であり、魔法に長けたレノアでも全身を魔法の媒体として自在に扱うことははできなかった。それは神代がこの世界の魔法の常識に染まらずに独自の観点にたどり着くことのできたレノアが師であったからこそ成し遂げられたことでもある。
「グルァッ」
「おっと危ない」
上空からアンデッド化したワイバーンがブレスを吐いてきたので少し加速して避け、上空へ戻ろうとするワイバーンに接近し羽を切り落として落下するところを剣で核を貫く。仲間がやられたことに気づいたのか上空のアンデッドワイバーンたちが俺めがけて突撃してくる。
「お前らと剣で多対一の空中戦はしたくないな」
上空へ上がるとワイバーン達も俺の後ろを追いかけてくる。周りに被害が出ない位置まで上昇するとワイバーンをギリギリまで引き付ける。
『天雷』
足元まで迫っていたアンデッドワイバーン達が一瞬炭化する。この世界はアンデッドへの対抗策は浄化以外に凍らして粉砕するか、雷や炎属性の魔法で炭にする等聖属性魔法が使えない冒険者でも対抗できる手段が大いにある。神代の際はどの手段も使えるが、今回は魔法陣潰し×4セットがあるので大技を乱発したくない。
『エアリーアクセル』
更に加速し市街地内のアンデッドを殲滅し門を出てアンデッドを討伐していくと半径20m程の魔法陣が地面に描かれていて今もそこからはアンデッド達が次々と生み出されている。
「この規模の魔法陣見落とすのは警備ザルすぎるだろ」
思わず口から愚痴がこぼれてしまうが起きてしまったことは仕方ない。
『魔封じ』
地面に手を付け『
数秒ほど魔法陣に触れていると魔法陣が消えた。
「先ずは一つ」
そうつぶやくと南門へ向かう。
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