第15話 遺跡へ

「それで小僧、エリシアを知っているとはどういうことだ?」

ルーの背に乗りながら遺跡への道を最大速度で駆け抜けてもらいながら一緒に背中に乗ってる子狼ほどのサイズになったニルに問われる。

「1000年前お前が子供だった頃の仲間だよ、まぁそう言われても分からんだろうが」

「うむ、分からんお主あれか?人の形をした化け物か?なら合点がいく」

「うん違うね」


 どう説明したものか別の世界とか理解してくれるかな。


「お前が子供のころこの世界の人たちは魔王っていう敵と戦ってたが、この世界の人たちでは戦ったが歯がたたず、別の世界から魔王を倒すための勇者として俺を召喚した」

「別の世界とな?」

「分かるか?」

「エリシアがたまに話してくれていたこの世とは違う世だと、何となくしか分からないが」

「俺も説明に窮するから、その認識があれば取り敢えずいいかな」


 エリシアが多少なりと話してるなら問題なさそうだ。


「それで召喚された後10年かけて魔王を倒した俺は元居た世界に戻された。そしてまたこっちに再復活した魔王を倒すのに巻き込まれて召喚されて、そしたらこの世界ではあれから1000年以上経過してたって感じだ」

「つまり小僧のいた世界とこの世界では時の流れが違い、1000年の月日が過ぎているがそっちではそこまでの月日が流れておらず生きていたということか?」

「言いたいこと全部言ってくれたありがと、そういうこと」


 そう言うとニルは困ったような感じで笑った。


「エリシアが自分の何倍も強い人が居るって言ってたのが小僧のことだったとはな」

「う~ん、それは聖女と勇者でノールールで模擬戦闘したら近接攻撃が得意な俺が勝っただけで、魔法面はエリシアが数段上だと思うんだがな。魔法の師でもあるし聖魔法なんて足元にも及ばないぞ」

「それはそうであろう、本職に勇者が勝ったら聖女の聖魔法の支援の意味がなくなるであろう」


 俺とニルはルーの上でエリシア談義に花を咲かせた。



「あの~主たち?一応そろそろ目的地に着くのだがいつまで喋っている?我は遺跡の詳細な地点は知らんぞ」

「って言われているがニル、遺跡はどこにあるんだ?」

「妾についてこい、ここからは案内しよう」


 ニルはそう言い狼ほどのサイズになってルーから降りて歩き始めた。

そうだ、フェンリル様その大きさだと遺跡には入れません、妾と同じぐらいのサイズでないといけませんよ」

「分かった」


 ルーもニルと同じ狼ほどのサイズになって歩き始めた。


「枢機卿たちはどの辺まで来てるか分かるか?ルーの速さ的に数時間は余裕があると思ってるがどうだ?」

「1~2時間ほど前に追い抜いたからそのぐらいで合ってるぞ主」


 今回行く場所はダンジョンというわけではないだろうからそれだけ時間があれば十分かな、急いでいくに越したことはないか・・・


「んじゃ鉢合わせしたくないから早めに済ませるか」


 十数分ほど歩くと森の窪地に出た。周りは草で随分おおわれているが明らかに人工的に造られた地形だな。あまりにも輪郭が綺麗すぎる。


「ここの真ん中に遺跡がある、そこがエリシアが連れていかれた遺跡だ」

「あぁ分かった」


 遺跡に向かって歩き始めたらルーが念話で話しかけてきた。

(主、あの遺跡にエリシアが連れていかれたのは間違いないとして。彼女が生きてる可能性は殆ど存在しないぞ。そこだけは胸に止めておいてほしい)

(それは俺も十分理解している。ニルの話を聞く限り眠るだけと言ってるそうだし、あいつのことだから意味なくそんなことは言わないと思ってる)

(そうだな、まぁ過度な期待はしすぎるなよ後で反動が増幅されるかもしれんし)



 少し歩くと遺跡の前に着いた。

「大理石でできてるな、こんな山の中にここまでのものを造るとは何が目的なのやら」

「では行こう、途中までは案内できるがそこの門が妾には分からない仕掛けになっておるのだ」


 ニルを先頭に俺ルーの順番で遺跡に入っていく。




 数分歩くと目の前に周りの大理石とは別の素材で作られた門が現れた。


「これだ、妾にはこれの仕組みが分からん」


 門に触れながら軽く魔力を流して調べてみる。

「初めて見るな、何かをカギとした門だが・・・なんか聖属性の魔力の吸収効率のいい器の石だな」


 門の周りを細かく見ると大理石の壁の一部だけ色が違う部分があった。


「これが制御装置か、とは言っても手の形が薄っすらと掘られてるだけだし・・・」

「なぁ主、この門は単純に聖属性の魔力を一定量流し込めば空くのではないか?」

「そんな簡単な仕組みにするかな?」


 ルーの言った通りに聖属性の魔力を流し込んだら数秒で大きな音を立てて門が動いた。


「マジかセキュリティ弱すぎだろ」


 余りの簡単さに呆れているとニルに急かされた。


「止まっている場合ではないこの先は妾も知らない場所なのだ、早くエリシアを見つけ出すぞ」

「分かったよ」


 そして遺跡の未知の部分に足を踏み入れた。

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