第16話 遺跡にて
あれから数十分歩いているが特にトラップもなくただただ複雑な地下迷路を歩いている。魔力を飛ばしてレーダー代わりにしてるので迷うことはない。
「にしても罠も何もないなんてな、そしてこの距離歩かせるのは意味が分からない」
「そうだな正直無駄でしかない、楽ではあるがな」
ルーたちと話しながらさらに歩くこと十数分…
「この先、広い空間があるなその奥は無さそうだから最深部だろうな、それとよく分からない魔力の反応が一つ」
「やっとか」
広い空間に出た、この地下によくもまぁ掘れたものだと思う。今まで来た通路と不自然なほど気温差がある。正直少し寒い。空間の奥にはまた見たことのないサイズの魔道具いや・・・もはや一種の装置と言っても差し支えないものが見える。近づいて装置から出ている沢山のチューブなどが繋がっている縦長のケースを覗くと…
「エリシア・・・」
「「なぬっ⁉」
俺の呟きに反応してルーとニルが横に来る、それを横目に考え始める。
この状態とこの部屋の一段と冷えた感じからするとコールドスリープの魔道具かな。昔、ドワーフのとこの城の書庫で見たのに近そう。ただこれを維持するための魔力はどこから引っ張ってきてるのやら。どでかい装置はあるがバッテリー的なものがないし、魔力で触ってみたが、なんだこれ?魔力伝導に使われてる素材は全部純度100%のオリハルコンかよ・・・この量だけでちょっとした国の国家予算数年分になるんだが・・・で、さらに地面にぶっ刺さってると・・・。となるとあれか地中の魔力というかこの窪地の森の魔力がバッテリー代わりか。とんでもねぇ半永久機関だよ。さらにこれトラップだよなぁ普通に解除しようとすると爆発?いやケースがそれに耐えれるか?耐えれるなぁ・・・なんなんだよ!この無茶苦茶な装置は解除するの地道にすると時間がかかるな。となるとあれか。
「ルー、ニル今から魔法使うからその後俺が良いというまで魔法使うなよ?」
「うむ、あれか承知した」
「あれとはなんだ?」
「それは見てのお楽しみ」
『禁忌・
そう唱えると体から力が一気に抜けていく。
「主、大丈夫か?」
地面に片膝をつき息を整えながらニルに答える。
「大丈夫だよ、ただやっぱ負荷がでかいなこれ」
「小僧今のは何だ?初めて体験した魔法だが?」
「使用者をも命の危険にさらすことから世界で忌避されている魔法の一つだよ、今の時代に知ってる人がどれほどいるか知らないけどね」
「効果は?」
「使用者の全魔力と周囲の魔力を相殺させる、完全に使用者依存、加減できないし相手の魔力が自分より多かったら詰み、狂ってるだろ?まぁ今お前も魔力無しだから回復するまで魔法使おうとするなよ?気絶するぞ」
ニルはなにか信じられないものを見るような目でこっちを見て、固まってる。
ニル?」
「いや、お主やっぱり人間ではないであろう?」
「生粋の人間だよ」
そう言いながらケースを腰につけてるダガーで蓋の部分だけ切り取り、中からエリ
シアを抱き起こしてルーの手を借りながらエリシアを背負う。
「コールドスリープ自体は外に出せば数日で意識戻るから後はここから出るだけだ、途中で追い抜いたやつが来る前に抜け出すぞ」
また延々と続く道を歩き続けているとニルが何かに気づいた。
「主この先の最初の扉の所に人が居るぞ」
「あちゃー、間に合わなかったか、まぁ強行突破すればいいよね」
今はさっきの禁忌魔法のせいで魔法が何も使えないので暗闇をルーのしっぽを頼りに進んでいる。当然前も見えない。数分歩いた時に足に何かがぶつかった。
「ん?」
「主、今足で蹴とばしたの人間であるぞ?」
「えぇ?なんでこんなとこでぶっ倒れてるん・・・あぁ禁忌魔法の圏内に入っていたのか。それでここの扉が魔力流すタイプのだから魔力切れ起こして気絶したと」
時間的にもギリギリすれ違うかどうかだと思っていたのでこいつらが気絶しているのは僥倖だ。顔も見られないですんだし。
「気絶してるならほっといてここを出よう」
遺跡の外へ出ると東の空がほのかに明るくなっていた。
「さぁ帰り道も頼んだよルー、ニル!」
ルーとニルが本来のサイズに戻るとエリシアをルーの背中に乗せその後ろに座って支える。
「これでよし!それじゃ日が昇るまでに帰ろ~!
~!」
返事代わりにルーとニルが来た時よりもさらに速く駆け出す。
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