第14話 フローズヴィトニルの話&急げ

 急いで部屋に戻るとルーたちがいる異空間を開けた。


「ルー?」

「主、こっちへ来い」


 俺は異空間に入ると入り口を開いたままの状態にして中のフローズヴィトニルの状態を見る。


「お前ダメだろ、外見の傷は消えてるけど内部の傷治ってないところはまだたくさんあるじゃないか」

「妾をこんな風にしたのはそなたじゃろうに・・・」

「うぐっ・・・」


 いや仕方なかったんだよ久しぶりにしたら思ったよりも精密に操作できなくて思った以上に火力が出たんだよ。


「取り敢えず、その傷治すからじっとしてて。後俺の聖属性の魔法は荒っぽいから完全に痛みとかを消しながら治すことはできないぞ」

「その程度我慢できるからの、ほれ早くしてくれ」


 フローズヴィトニルの背中に手を当ててできる限り優しく魔力を流していく。


「もうよいぞ、ここまでしてくれれば十分だ」


 数十秒ほど治療をしていたらフローズヴィトニルからもう十分だと言われた。まだ完治ではないけど取り敢えずある程度の運動にも支障はないかな。


「さて話の本題といきましょうか」


 地面に腰を下ろしフローズヴィトニルに向き合う。


「それが条件だからな、仕方あるまい」


 フローズヴィトニルが話し始めた。




 もう何年前になるか1000余年前私は北の地で生まれた。当時はまだ赤子だったがある程度は動ける妾は危険等考えずにいつも親の目を盗んでは野山を駆け回っては親に捕まりこっぴどく叱られた。当時は人の言葉などは全然分からなかったな。だからよく集落の近くまで行って人がよく分からない言葉を喋っているのを覗き聞いたりした。そんなあるときうっかり大人に見つかってしまって捕まってしまったんだ。赤子でまだ普通の狼ほどのサイズでしかなかった妾はあの人間たちから逃げるほどの力がなくてな。檻に入れられいつ殺されるかも分からない状態だったが母親が半日もせぬうちに助けに来てくれてな。二度と集落に近づくなと今思い出しただけでも震えるほどに怒られての。それ以来、母の言いつけを守っていたのだが・・・ある日その母を失ってしまった。妾が言いつけを守って住処の洞穴で待っているときにな外で血のにおいがして・・・母が人間の群れに襲われてるのを見た。母は自分がもたないことを知り妾に念話で逃げるように伝え妾が逃げるまでの間の時間を稼いでくれた。

 妾はそれから走りに走って逃げた。あちこち彷徨って数か月後にあの山の辺りに来た時に疲れて注意が散漫になってて猟師の罠にかかってしまってて食事もできず弱ってこのまま死ぬのかとなっていた時にある人に助けられたのだ。妾は人間がとても嫌いだった。母の仇である人の手にかかるぐらいなら自ら死のうと思った。しかし彼女はそんな妾の警戒心すら解くほど非常に優しいオーラを纏っていた。彼女はその後、妾を連れて家まで連れてきて「今日からここがあなたの家よ」と言って妾の面倒を見てくれた。妾にニルという名前をくれた。妾もそこが居心地が住みよくて居ついた。人の言葉も必死になって覚えて念話も習得して初めて彼女に話しかけた時には彼女はとても褒めてくれた。そんな風に彼女と過ごしていた生活もまた人によって壊された。ある日彼女が帰ってこずおかしいと思い、探したらあの遺跡の前でたくさんの人間に囲まれて連れていかれるのを見てな。妾は念話を使って話しかけた。彼女はただ眠るだけだといつか帰ってくるからそれまでさようならだと言った。妾はその言葉を信じあの山に1000余年待ち続けたが今のところ目覚めるということはない。そんな中最近よく何人もの人間があの遺跡に近づこうとしているから追い払っていたらお主らが来たというわけだ。


「そうか・・・律儀なもんだなお前は」

「そうだが?何か悪いか?」

「いやいや悪くないよ!後さその君が待ち続けてる人の名前を教えてくれないか?」


 年代とネーミングセンスそして聞いた限りの性格を補完すると脳内である一人が浮かんでくる。

「んぅ・・・どうせ知らんだろうからいいぞ。なんせ1000年も前だからな」


 俺とルーは次のフローズヴィトニルの発言に意識を集中させる」


「彼女の名前はエリシアだ」

「それは本当なんだな?」


 一応もう一度確認する。


「あぁ妾は嘘はつかん」

「あいつがいる・・・マジか、よかった」


 一安心しているが脳内でカリュアス団長の言葉がよみがえる。

(コルトと久しぶりに飲めるかと思ったのに遺跡の調査があるからってそりゃねぇよ)


「小僧、お主エリシアを知っているのか?」

「知ってるも何も昔の戦友であり俺の師であり、大切な仲間だ」

「ちょっと待て、となるとそなたはなぜここにいる?人の寿命の限界は越えているぞ」

「あぁ・・それは」

(まずいぞ、真夜中には着くとカリュアス団長は言っていた、となると今からルーの全速力でギリギリ先に行けるか)

「すまん行きで答える」

「「行き?」」

「事情は後だルー今からそこへ行くぞ。エリシアが不味いかもしれん」

「取り敢えず承知した?」

「なら直ぐに出るぞ外でゲート開くから」

俺は急いで空間を出て閉じると部屋から出て窓から飛び降りる。



「神代君・・・?」


 それを白銀さんに見られていることに気づかず。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る