第13話 気乗りしない饗宴

「この度は我が国を助けていただきありがとうございます、食べ盛りの皆さんの為に料理もたくさん用意いたしましたのでこの饗宴をお楽しみください!」


 ラングレー枢機卿の挨拶で饗宴が始まり皆がわいわいがやがやしてる中知り合い皆無な上に騒ぐ気にもなれず会場の隅でジュースを飲んで一人思案していた。

(エリシアの墓が存在しないなんてことはないはずだ。魔王討伐の偉業を考えれば墓が存在しないわけがない・・・暁の杖があるならこの国にもあの後帰ったのだろうし、なら何故墓がないのか?普通に考えたら他の国や辺境の地で余生を過ごしたというのが妥当なところか・・・?)


「せっかくのご馳走なのに食べないのはもったいないですよ?」


 白銀さんが皿に料理を盛り付けて持ってきてくれた。


「ん、ありがとな」

「色々教えてくれたお礼ですよ、この程度では到底釣り合いませんが」

「別に気にしなくていいぞ、あの位のことで借りにはならんよ。お、この料理美味いな」

「食べ終わったらまた取ってきますからね」

「いや、いいよ自分で取りに行く」


 壁から離れて会場の真ん中に歩いていくと白銀さんもついてきた。


「ついてこなくていいぞ?白銀さんは他の人たちとも楽しみなよ」

「ほかにも何人か仲がいい人が居るんですけど神代君以外の人だと損得勘定まみれの人が絶対近寄ってくるので・・・」

「あぁ~確かに俺は交流関係完全に放棄してるからわざわざ近寄ってくる人が居ないな」

「そういう訳です、それで浮かない顔でジュース飲みながら何を考えてたんですか?」

「ん~ここは人多いから後で話すよ」

「分かりました」

「ところで白銀さんは今後この世界ではどうしていく?」

「あの王女様の言った通り魔王を倒すための修練ですかね?神代君は前に倒したことがあるんですよね?」


 その問いに俺は苦笑しながら答える。


「そうだが、あの時は仲間がいたからな。今は従魔たちが生き残ってるけど人間の仲間は皆いないし、正直勝てるかどうかは分からない」

「そこまでの相手ですか」

「まぁ心配するな、もっと強くなるから負けんよ」

「参考までにあのフローズヴィトニルにはどのぐらいの力加減で?」

「ん~1割ぐらい?」

「何言ってるんですか?」


 信じられない目で白銀さんに見られる。


「いや力出しすぎたらあの山消えるし、特殊な結界あればもっと力出せるから話は別なんだがな」

「えぇ・・・山が消える???色々とおかしくないですか」

「大丈夫、白銀さんもそのうちできるようになるから」

「全くもって大丈夫じゃないのですが・・・」


 白銀さんと軽く喋っていると後ろから声をかけられた。


「お~レイ!しっかり食べてるか~?」

「食べてますよ、そしてカリュアス団長酔ってますよね??」

真っ赤な顔をしながら肩を組んでくる団長、正直酒臭い。


「ずっと護衛や任務こなしてる俺達にはこれしかねぇんだよ、これぐらいいいだろぉ??そうだよなぁ?」

「もっと他の甲斐性見つけてくださいよお酒は体に悪いですよ?」

「そうですよ、団長という立場なんですから健康に気を付けないといけません!」

「嬢ちゃんもそっち側かよ、コルトと久しぶりに飲めるかと思ったのに遺跡の調査があるからってそりゃねぇよ今から行ったって向こうに着くのは真夜中だろうに、しかも時期教皇候補だろ?現場行く必要ないじゃねぇか・・・」

急に情報量の多い愚痴がでたな。

「コルト枢機卿と知り合いなんですか?カリュアス団長」

「おぉ!昔は一緒によく遊んでいたからな!」

「あまり想像できない組み合わせですね」

「それは同感、全く逆のタイプの人間だろ」


 豪快で脳筋なカリュアス団長とクールで知的そうなコルト枢機卿逆のタイプだからこそ逆に気が合ったのかな。


「それで遺跡ってなんですか?」

「あのウルフたちがいた森に教国の重要な遺跡があるからその調査に行くってよ、今言っても夜中だろうに」

「だからこそウルフたちの討伐を依頼してきたんでしょうね」


 ウルフがあそこに居座っていたのはその遺跡を守るためと考えるのが妥当かとなるとあの中での長であるフローズヴィトニル関連の問題となるのか。


「そういえばなんで教国は私たちに依頼したんですか?こちらにも騎士団はありそうですし?」

「嬢ちゃんいい目してるなぁ!それはな教国の聖教騎士団はアンデッドや悪魔などに特化してる騎士団で通常の魔物だと十二分に戦えないんだよ」

「それだと簡単に他国に攻められそうな気もするが?」

「それはないぞ、レイこの国のテレス教は大陸全体で支持されてる宗教だから攻めるような国があればその国は終わりだ、その上魔王復活もあるからな戦争なんて起きるわけがない」

「そうですか」

(お~い怜、フローズヴィトニルが目を覚ましたぞ~)

「え、早くない?」

「神代君?」


 つい急に言われたので声に出てしまった。


「あ、いや何でもない、俺はもう部屋に戻って寝るよまたな」

「え?分かりました、おやすみなさい」

「よく寝ろよ~寝る子は育つ」

「はいはい」


 苦笑しながら宴会場を早めに後にする。

(ルー何故半日早い?お前の見立てがズレるなんて珍しいな)

 廊下に出て部屋に戻りながらルーに問う。

(原因は分かっているが理由が分からん)

(どういうことだ?)

(傷は治ってないが別の要因で覚醒した、ただその理由が分からん)

(そうか・・・了解すぐ戻る)

 俺は足早に自室に戻った。




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